投稿日 2022/04/14

ジープの提案営業に学ぶ、お客さんの 「憧れの生活」 と 「ジープ愛」 を呼び起こすマーケティング

出典: MonoMax Web

今回のテーマは、販売や接客です。

✓ この記事でわかること
  • 優良店 「ジープ世田谷」 の販売方法
  • 商品を売るよりも、新しいライフスタイルの提案営業
  • お客さんがお金を払ってくれる理由
  • ジープに学べること

おもしろいと思ったジープ販売店の接客方法を取り上げ、マーケティングの観点も入れながら学べることを見ていきます。

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

ジープ世田谷の販売方法


今回ご紹介したいのは、ジープの販売方法です。

出典: Jeep

 「ジープのある生活」 


以下は、日経新聞の記事のリード文です。

米国の自動車ブランド 「ジープ」 は、軍用車が起源で SUV (多目的スポーツ車) の先駆けでもある。新型コロナウイルス下のアウトドア人気を追い風に2021年の国内販売台数は過去最高を更新した。

全国に83カ所ある販売店の中で 「ジープ世田谷」 (東京・世田谷) は年間400台程度を売る優良店だ。佐々木祐輔支店長の下、「ジープのある生活」 を提案する営業スタイルが好評だ。

引用の最後にあった 「ジープのある生活」 について、続けて記事から引用します。

 「憧れのラングラーに乗れるように新居の駐車場は幅を広く取りませんか」 ――。佐々木さんはジープ歴5年の40代の男性来店客から戸建ての新築計画の話を聞くとこう切り出した。

ラングラーはジープの上級モデル。一目でジープ車とわかる武骨で角張った見た目が特徴だ。憧れのラングラーが自宅にある風景を2人で想像しながら、車庫の設計や家屋の外壁に合う車のカラーなどの話で盛り上がった。程なくしてこの顧客は高級感のある黒のラングラーに買い替えた。

接客の意図


接客では、新築の車庫への設計案に踏み込んでいますが、その意図はどこにあるのでしょうか?

再び記事から引用すると、

ライバル車と差異化するため、佐々木さんは顧客の生活とジープの世界観をリンクさせて 「ジープのある生活」 をどれだけイメージしてもらえるかを重視している。

接客では 「暮らしのどのような場面で車を使いたいか」 を繰り返し尋ねる。例えばアウトドア好きの客ならば、キャンプ場でジープと他ブランドの SUV が並んだ場面を想像してもらい、存在感に違いがあるか問いかけてみる。

 「数ある車の選択肢の中でジープの店を訪れた時点で、お客の大半は他の人と違う車を持ちたいという気持ちを抱えている」 (佐々木さん) という。問いかけを通じて潜在意識下の 「ジープ愛」 をくすぐるのだ。

ジープ愛という、お客さんが心の中に抱いていて、もしかすると本人もはっきりとは自覚できていない心の琴線に触れるような接客です。

来店時の体験向上


ジープ世田谷への来店客には、ジープという自動車の装備や機能説明は最小限にとどめているそうです。それよりも来店時の体験をより良くしようとする狙いがあるとのことです。

顧客はインターネットであらかじめ基本情報を得ている。

そのため 「お客が興ざめしないように車の装備や機能といった細かい仕様については聞かれたときだけ答えるようにしている」 という。「多忙なスケジュールを縫ってせっかく来店するお客には、購入につながるまでの会話も含めて楽しんでもらいたい」 と佐々木さんは話す。

新しい生活スタイルの提案


ここまで見てきたジープ世田谷の販売スタイルを俯瞰してみましょう。一言で言えば本質は 「商品の先にある価値の提示」 です。

商品の先にある価値とは例えば、憧れのジープが手に入り、新築とジープのある新しいライフステージです。具体的な使い方や自宅にどうジープが映えるか、ジープの世界観も伝え、お客さんとイメージを共有しています。

単に商品を売るのではなく、こんな暮らしをしていませんかという生活スタイルの提案です。その中の1つのピースとして、ジープを位置づけているわけです。


お客さんがお金を払う理由


ジープ世田谷の話は、マーケティングの観点からも学びがあります。「お客さんは何にお金を払っているのか」 です。

表面的には、お客さんは商品やサービスにお金を出しています。しかし、お客さんが本当に欲しいのは、商品・サービスを使うことによって、保有することで得られる価値です。価値とは平たく言えば 「うれしいこと」 です。

ジープの例に当てはめれば、お客さんにとってのうれしいことは 「 (憧れの) ジープのある生活」 です。少し大げさな表現をすれば、ジープを買うことにより自分の人生が少し良くなることです。

ここに価値を感じるから、お客さんはお金を払ってジープを買っているのです。


学べること


では最後に、ジープから学べることを整理してみましょう。

お客さんに販売をしたりマーケティングをする時に、「相手の人生をより良くできないか」 も考えてみる重要性です。

商品を売るという発想にとどまらず、自分たちの商品やサービスで相手の人生にどんな貢献ができるかという、これぐらい高い視座で取り組んでみるのはいかがでしょうか?


まとめ


今回はジープの販売方法を取り上げ、営業やマーケティングに学べることを見てきました。

最後にまとめです。

お客さんがお金を払う理由
  • 表面的には、お客さんは商品やサービスにお金を出している
  • お客さんが本当に欲しいのは、商品・サービスを使う・保有することで得られる価値 (うれしさ) 。ここにお金を払う理由がある

ジープに学べること
  • 営業やマーケティングで、お客さんに商品を売るという発想で終わらないようにする
  • 自分たちの商品やサービスで 「相手の人生をより良くできないか」 を考えてみよう


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。