投稿日 2024/01/02

起転承転承結のストーリー術。"転" でサプライズを先に起こし、"承" で納得感を生むプレゼン方法

#マーケティング #ストーリー #プレゼン

プレゼンや商談で話している最中に聞き手が飽きてしまっていると感じたり、伝えたいポイントがうまく伝わらない… 。こんなふうにうまくいかないことはないでしょうか?

実は、聞き手からの興味をひき続け、伝わる話し方にするためには 「ストーリーの法則」 が存在します。

今回は 「起承転結」 を発展させたストーリー構造から、効果的なプレゼンにする方法を紐解きます。

ストーリーの構成


一般的に物語の展開は起承転結で作られます。

最初に話題を起こし、これを受けて転換し (承) 、一転して場面や視点などを変え (転) 、最後に全体をまとめて締めくくるという構成方法です。

一方、あえて 「転」 を先に持ってくる起 "転" 承結とするストーリー構成があります。

起 "転" 承結


起転承結という転の順番を先にもってくることで、読み手や受け手へは次のような効果があります。

  • サプライズ要素: 「転」 を早めに出すことで、読者やオーディションに対して予想外の展開を提示できます。受け手の注意を引くのに効果的です

  • 緊迫感: 一般的な 「起承転結」 では 「転」 が後になるため、緊迫感が後半に偏る可能性があります。一方の 「起転承結」 では前半から緊張感を生み出し、受け手が早々に離れてしまうことを防げます

  • ストーリーの世界観の共有: 「転」 の後の 「承」 でより深くストーリーや登場人物について掘り下げる機会が生まれます。各人物の心情や背景、状況の詳細など、より多くの情報を受け手と共有することができます

  • 多角的解釈: 「承」 が後にくることで、その前にあった 「転」 に対する多様な解釈が可能になります。物語はより深まり、受け手は考える余地が増える楽しみが生まれます

以上のように 「起転承結」 は物語のテンポや深みに影響を与えます。

 「転」 を2つにする起転承転承結


では起転承結を発展させ、”転承” を前半と後半の2回もってくる 「起 “転承” “転承” 結」 というストーリー展開もあります。

起転承転承結の特徴は次のとおりです。

  • 緊迫感の維持: 1回目の 「転」 が終わった後も、後から別の 「転」 が発生するために、物語全体の緊張感が維持されます。受け手の関心を最後まで保つことができます

  • ストーリー要素の増加: 前半と後半に2つの 「転」 を配置することで、物語は1回の 「転」 よりも山場が増え、より奥深いストーリーが描けます

  • キャラクターの成長や深化: 複数の 「転」 があることで、主人公などの登場キャラクターはそれぞれの 「転」 を通して成長や変化を遂げます。キャラクターに多面性や深みを与える効果が生まれます

  • より豊かなテーマ性: 複数の 「転」 があると、1つ1つの 「転」 に違うテーマやメッセージを込めることが可能になります。物語全体として多様なテーマ性を持たせることができるでしょう

このような要素から、物語の構造として 「起転承転承結」 とすることは、ストーリーの創造性が高まる可能性を秘めています。


プレゼンへの応用


ここまでのストーリーのつくり方は、ビジネスにも応用できます。

具体的な例として、問題解決のプレゼン構成に 「起 “転承” “転承” 結」 を当てはめると、次のようになります。

✓ 起転承転承結のプレゼンストーリー
  • 起: 背景や目的
  • 転: 現状把握からわかった問題提起 (今のままでは目的を達成できない可能性を示す) 
  • 承: 問題設定の根拠
  • 転: 解決策の提示
  • 承: 解決方法の補足 (例: アクションプラン, 実行体制, スケジュール, コスト, 懸念事項やリスクなど) 
  • 結: 解決策のまとめ、ネクストアクション

それぞれについて順番に、もう少し詳しく見ていきましょう。

  1. 起 (背景や目的) :
    プレゼンのはじめに背景と目的を明確に説明します。聞き手が関心を持ち、注意を傾けやすい状態をつくります。例えば 「このプロジェクトのゴールは、売上を 20% 向上させることです」 と宣言にします

  2. 転 (現状把握からわかった問題提起) :
    このままでは目的達成を難しくしている現状の問題を提起します。プレゼンの早いタイミングで 「転」 が出てくることで緊張感が生まれ、聞き手はさらに集中するでしょう。例: 「しかし今のままでは、売上はむしろ減少していく可能性があります」 

  3. 承 (問題設定の根拠) :
    問題提起の後に、その論拠を説明します。データや事例を用いて、具体的になぜ問題なのか、それがどれほど深刻なのかの認識を合わせます

  4. 転 (解決策の提示) :
    ここで再び 「転」 を入れます。2回目の転は問題への解決策です。
    聞き手への 「この問題は解決できるのか?」 という疑問への答えを提示します。例: 「新しいマーケティング戦略を採用することで、お客様の 「買いたい」 をこのようにつくり、その結果として目標の売上を 20% 向上させることが可能です」 

  5. 承 (解決方法の補足) :
    解決策を提案した後は、具体的なアクションプランと実行体制、コストを説明し、現時点での不明点などの懸念事項やリスクも併せて共有するといいでしょう。
    聞き手には解決策の実行可能性を理解され納得してもらうことで、今後の取り組みに参加する意欲を高めることを狙います

  6. 結 (解決策のまとめ, ネクストアクション) : 最後にプレゼン内容を簡潔にまとめ、次に何をすべきかのネクストアクションを示します。最後に具体的なアクションを見せて促すことで、聞き手は具体的な行動に移しやすくなります

以上のような 「起転承転承結」 のストーリー構造は、問題を明確にしながら解決策へと導く流れをつくり、プレゼンの聞き手が理解しやすいよう設計できます。


まとめ


今回は起承転結の 「転」 に注目し、起転承結という転を早めにもってくるストーリー構造にすることの効果、具体的なプレゼンでの応用方法を見てきました。

最後に学びのポイントをまとめておきます。

  • 一般的な起承転結から、"転" を先に持ってくる 「起転承結」 、さらに転を複数用意する 「起転承転承結」 とすることで、物語に早めのサプライズを起こし緊張感を生み出しつつ、ストーリーの柔軟性や深みを持たせられる

  • 「起 “転承” “転承” 結」 はビジネスのプレゼンに応用することで、聞き手の興味を引きながら効果的なストーリーテリングになる

  • 起で背景を説明し、"転" で問題を提起。承で論拠を示す。その後に2回目の "転" で解決策を示し、承で解決への補足情報を共有する。最後に結でネクストアクションを提示する。聞き手が理解しやすく、行動を起こしやすい構造になる


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。