投稿日 2024/01/03

スバルが描く顧客起点マーケティングの成功への軌跡

#マーケティング #顧客起点

今回は、自動車メーカーのスバルのマーケティング事例を取り上げます。

顧客起点で描かれた軌跡をたどり、隠された成功の秘訣を紐解きます。

スバルの顧客起点マーケティング


スバルの事例が、顧客起点マーケティングの成功例として興味深かったです。

お客さんの声や社内のトップセールスからの情報、定量データからセグメントをきっちりつくり、ターゲット顧客を明確化。お客さんが求めていることを理解し、顧客理解からそれまでの戦略転換を役員に迫り意思決定し、顧客戦略にもとづく施策の実行ときれいにつながっています。

具体的に順番に見ていきましょう。

購入意向のある人が持つイメージ


スバルは、スバルの車への購入意向のある人とない人の特徴を比較するために調査を実施しました (参考記事) 。

調査結果からわかったのは、購入意向のある人にはスバルへのイメージとして 「安全・安心」 というキーワードが特徴として強く見られることでした。この発見からターゲット像をより明確にし、訴求軸をブレさせないようにしました。

顧客起点からの一気通貫


それまでのスバルには少なかった女性の方に向けたコミュニケーションをとる方針に変わりました。

定性情報と定量調査の両方が土台になった顧客イメージ像が明確化されたことで、顧客起点で経営から現場まで一気通貫で戦略から実行までつながっていったのです。

広告制作への効果


顧客起点になり、ターゲット顧客と訴求イメージが明確になったことでの効果は、他にもあります。

外部の広告会社とのやりとりも、進めやすくなりました。

テレビ CM を作る際に 「このような方向性で考えているから、安全性、女性や子どもを出してほしい」 などと具体的に伝えられることで、広告会社のクリエイティブディレクターや監督が、スバルの意図を汲みとっての広告制作に入れました。

顕著な成果


成果として、過去のテレビ CM と比べて最大 14.5 倍の指名検索を獲得しました (参考記事) 。

また、いくつかの主要指標でも増加傾向が見られたとのことです。

具体的には、インプレッサは全業種を通じて指名検索数が増え、藤井隆さんのテレビ CM の CM 好感度ランキングが上位にランクインしました。そして、「次回はスバル車を購入したい」 という NPI (Next purchase intent: 次回購入意向) も上昇するという成果が得られました。


学びの一般化


顧客戦略の重要性


スバルの今回の話は、Who (誰に) と What (何の価値を) という 「顧客戦略」 があると、How (どのように) である施策が作りやすくなるという良い事例です。

顧客戦略は、パートナーや広告会社にとっても効果的な施策を作るための土台となり、自社でのマーケティング戦略、テレビ CM などのコミュニケーション、ディーラーでのデモンストレーションなどの販売方法に至るまで、一貫した顧客体験を提供する基盤となっているのです。

スバルの事例からの示唆


スバルの事例から学べるのは、自動車業界に限らず、他の業界にも示唆があります。

最後に学びを一般化して整理してみましょう。

  • 顧客の声の重視: スバルの成功は、お客さんの声を直接聞くことの重要性を示しています。他の業種でもお客さんのニーズや心理までを把握し、製品開発やサービス改善に反映させることが大事です

  • データドリブンの意思決定: スバルは定量データと定性情報を活用して意思決定を行いました。市場調査や顧客調査をもとにした意思決定が効果的な戦略策定に不可欠です

  • ターゲット顧客の精密化: スバルはターゲット顧客を明確にしました。製品やサービスを誰に向けているのかを定め、その顧客層に特化したマーケティングを行うことが成果を上げるカギを握ります

  • 顧客戦略からの施策展開: Who (誰に) と What (何の価値を) という 「顧客戦略」 があることで、How (どのように) である施策がつくりやすくなる

  • ブランドコンセプトの統一: スバルの事例はブランドコンセプトを統一し、それに沿ったコミュニケーション戦略をとることの重要性を提示しています

  • パートナーシップとの協業: スバルは外部の広告会社とのパートナーシップを有効活用しました。外部の専門家やパートナーと協力し、専門知識を活用することで、より効果的なマーケティングを展開できます

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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。