投稿日 2024/01/19

アロンアルフア 光。"新しい利用用途" と "価値提案" からのパーセプションチェンジ

#マーケティング #パーセプションチェンジ #価値提案

今回は 「アロンアルフア 光」 の事例を取り上げます。

利用用途を広げた価値提案によって、新しいお客さんの獲得につなげる秘訣をぜひ一緒に学んでいきましょう。

青色ライト照射ですぐに固まる 「アロンアルフア 光」 



家庭用瞬間接着剤のアロンアルフアが、接着液と小型ライトをセットにした 「アロンアルフア 光」 を新しく販売しました。

接着剤をつけた箇所に青色ライトで光を当てることで、接着剤が固まる時間が短くなります。従来品と比べて接着にかかる時間を10秒まで短くしつつ、接着力は同じ水準を維持しました。

接着時間が短くなることで、接着液が空気中に揮発する前に固まります。これにより接着した周りが白くなる 「白化現象」 も抑えられます。


パーセプションチェンジ


この事例から学べるのは 「パーセプションチェンジ」 です。

パーセプションチェンジとは


パーセプションをそのまま日本語に訳すと知覚や認識です。マーケティングの文脈では、パーセプションとは 「価値イメージ」 のことです。商品やサービス、あるいは企業そのものに 「 (自分にとって) どんな価値があるか」 です。

アロンアルフアに当てはめれば、「アロンアルフア 光」 は消費者からの商品イメージとして、「壊れた時に使う接着剤」 から 「模型工作やアクセサリーづくり用にも使える接着剤」 という変化を狙っています。

今までは壊れたものを直すという 「マイナスをゼロにする価値」 だけではなく、模型などの創作活動での 「ゼロをプラスにする価値」 にも広げようというパーセプションチェンジです。

新商品で新しい利用用途をつくる


とはいえ、何も変えずにパーセプションチェンジを起こすという消費者から認識や価値イメージ、ポジショニングを変えられるほどそう簡単ではありません。新しい利用用途にあったアップデートが必要になります。

従来のアロンアルフアは接着液を塗った後に、くっつけたい物同士が離れないようにしばらく押さえる必要がありました。その間に位置がずれてしまうと思い通りには接着されません。これは模型やアクセサリーをつくる場合には、出来映えに直結する問題です。

そこで、「アロンアルフア 光」 では青い光を放つ専用ライトを接着剤とセットにしました。光を接着剤にピンポイントで当てることで、接着までの時間を10秒に短縮したのです。

接着時間が短くなることで接着液が空気中に揮発する前に固まり、接着した周りが白くなる白化現象が起こりません。これが利用者にとってうれしいのは、仕上がりがよりきれいになることです。

ターゲット顧客の再定義


マーケティングの観点でもう1つ注目したいのは、パーセプションが変わることで 「ターゲット顧客も再定義される」 ということです。

アロンアルフアのユーザーに、新たに模型やアクセサリーをつくることを趣味にしていたり、本格的に制作に取り組んでいて制作物を個人で販売しているような人も加わることが期待できます。

つまり、商品の利用用途が増えたことで、既存顧客だけではなく新規顧客の獲得にもつながるわけです。

価値提案からの価値イメージ形成


売れるもマーケ 当たるもマーケ - マーケティング 22 の法則 という本に次のことが書かれています。


Marketing is not a battle of products, it's a battle of perceptions.
マーケティングは商品の戦いではなく、パーセプションをめぐる戦いである。

お客さんの頭や心の中でパーセプションがつくられるのは、価値提案をすることによってです。

単に商品の機能的な特徴を説明するだけではなく、その商品がお客さんにとってどんな意味合いや価値があるかをお客さん目線で伝えることが大事です。お客さんの文脈に寄り添い、価値があると思ってもらえることで、商品がようやく自分ごととして捉えてもらえるわけです。

マーケティングの役割は、お客さんからのカテゴリーや自社商品への価値イメージをより良いものに変え、お客さんから選ばれる理由をつくることです。


まとめ


今回は、青色ライトを照射すると早く固まる 「アロンアルフア 光」 を取り上げ、学べることを見てきました。

最後に学びのポイントをまとめておきます。

  • パーセプションとは、お客さんの商品やサービスに対する 「価値イメージ」 。「アロンアルフア 光」 は、従来の接着剤の 「壊れた箇所をくっつける」 というイメージを 「模型やアクセサリー制作用にも使える接着剤」 へと新しい価値認識をつくる

  • パーセプションチェンジは新しい利用用途や価値提案によって起こすもの。「アロンアルフア 光」 は、青色ライトで接着時間を短縮させ白化現象を起こさないことで、模型やアクセサリー制作により適した製品へと価値を拡げる

  • パーセプションチェンジにより、ターゲット顧客が再定義される。「アロンアルフア 光」 は新しい利用用途により、模型やアクセサリー制作を趣味や仕事にしている新規顧客がターゲットに加わることが期待できる


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。