海外の一風堂のお店の雰囲気やラーメンは、日本とは何かが違います。その違いはお客さんにどのような影響を与えているのでしょうか?
今回は、一風堂の海外事例をマーケティング 4P を使って分析し、マーケティングの役割を紐解きます。
一風堂の海外店舗
ニューヨークの一風堂 (出典: JTB ルック アメリカツアー)
豚骨ラーメン店の一風堂を展開する 「力の源ホールディングス」 が、海外での出店を強化しています。2024年3月期には国内の店舗数を上回る見込みです。
注力する背景は、海外での高い営業利益率にあります。店内に高級感を持たせるなど、ラーメンを高級な食べ物として提供しています。
たとえば、ニューヨークの店舗は店内の照明は暗めで、バーカウンターが併設されています。
バーでお酒を飲みながら、枝豆など日本の居酒屋では馴染みのあるおつまみ品を食べた後にラーメンを食べて最後を締めるというスタイルです。これで客単価が円換算で4200円ほどで、日本の一風堂の4倍近い値段です。
学べること
では海外の一風堂の事例から、学べることを掘り下げていきましょう。
価値イメージを上げた成功例
アメリカの一風堂は、日本でのラーメンとは全く別のイメージ、すなわちお客さんからの一風堂やラーメンという食べ物への捉え方、価値認識を変えた事例です。
この後に詳しく見ていく独自のアプローチから、一風堂はラーメンという商品やお店でラーメンを食べることの体験価値を再定義しました。
マーケティング 4P の連動
注目したいのは、マーケティング 4P の要素が連動し、価値イメージを新しく書き換えていることです。
一風堂で提供されるラーメン、店内のデザインや雰囲気、食べるスタイル、お客さんへの見せ方やコミュニケーション、そして価値を高めての価格設定と、マーケティングの 4P がきれいにつながっています。
具体的にアメリカの一風堂がやっていることを 4P に沿って見ていきましょう。
- 商品 (ラーメン) の工夫 Product
アメリカの一風堂では、日本の豚骨ラーメンの味を忠実に再現している。海外では入手困難な豚骨も、現地の食肉処理業者との協力を得て日本と同等の材料を調達。
さらに、イスラム教徒やベジタリアン向けのメニューも開発したり、枝豆などの居酒屋での人気メニューも取り入れるなど、より多くのお客さんに受け入れられるように工夫している。 - お店での提供方法 Place
ニューヨークの店舗は、日本の一風堂とは異なるスタイルで展開しています。バーを併設し、お客さんがお酒を楽しんだ後にラーメンを注文するのは、現地の文化やライフスタイルに合わせた提供方法と言える。 - お客さんへの見せ方やコミュニケーション Promotion
店内の照明は暗めに設定され、高級感を持たせるデザイン。ラーメンはファストフードではなく、より価値のある食事としての見せ方や位置づけを強化している。 - 価値を高めての価格設定 Price
アメリカの一風堂の客単価は、日本の約4倍ほど。上記の Product, Place, Promotion から、お客さんがそれだけのお金を払ってでも一風堂のお店で一風堂のラーメンを食べたいと思う価値を高めたうえでの価格設定。
マーケティングの役割
では最後に、今回の海外での一風堂の事例からの学びを一般化して捉えてみましょう。
一風堂の話からはマーケティングの役割が見えてきます。
マーケティングとは 「お客さんからの商品やカテゴリーへの価値イメージをより良くし、"買いたい" という気持ちをつくること」 です。
お客さんがお店に行って食べたいと思ったり、商品を欲しいと思うのは、自分にとって何かしらの価値があるからです。高い価格設定であっても、それに見合う体験や保有する価値があれば、お客さんは買ってくれるわけです。
そのために、いかにお客さんの心の琴線に触れる価値提案と価値実現ができるかが大事です。
* * *
マーケティングレターのご紹介
マーケティングのニュースレターを配信しています。
気になる商品や新サービスを取り上げ、開発背景やヒット理由を掘り下げることでマーケティングや戦略を学べるレターです。
マーケティングのことがおもしろいと思えて、すぐに活かせる学びを毎週お届けします。
レターの文字数はこのブログの 3 ~ 4 倍くらいで、その分だけ深く掘り下げています。ブログの内容をいいなと思っていただいた方にはレターもきっとおもしろく読めると思います (過去のレターもこちらから見られます) 。
こちらから無料登録をしていただくとマーケティングレターが週1回で届きます。もし違うなと感じたらすぐ解約いただいて OK です。ぜひレターも登録して読んでみてください!