投稿日 2024/01/28

ギフトフルのトレードオン戦略。「選び直し」 で深まる贈り手と受け手の絆

#マーケティング #トレードオン #提供価値

今回は、ユニークなギフトサービス 「ギフトフル」 を取り上げます。

贈り手の楽しさと受け手の喜びを両立させる 「トレードオン」 という視点から、ギフトフルはどのような体験価値をもたらしているのかを紐解きます。

ぜひ一緒に、顧客価値を高める秘訣に迫っていきましょう。

ギフトフル


ギフト商品を受け取った人が、別の好きな商品に交換できるというユニークな機能を持ったギフトサービスが 「ギフトフル」 です。

選び直し


贈り手はギフト商品を1つ選び、メッセージカードと共に贈りたい相手にリンクを送信します。受け取った人はリンクにアクセスし、そのままギフトを受け取れば通常のオンラインギフトサービスと同じですが、ギフトフルは自分で選び直して受け取ることができます。

ギフトフルのユニークさはここにあり、特徴は贈られたものを 「選び直し」 ができることです。

選び直しは、受け取り手続きが完了してから、贈り手に支払いが発生するという仕組みです。贈り手には 「受け取った人がどのような商品に選び直したか」 を確認できる機能もあります。

心を込めて贈られたギフトなのに、相手は他のものを選び直すことも自由にできるというのは、一見すると贈り手に失礼と取られかねません。また、どうせ選び直しをするのなら、もともと贈り手が商品を選ぶ必要がないのではないかという気もします。

潜在的に起こるミスマッチ


ギフトフルを運営する GiftX が20 ~ 40代の男女300人を対象にしたアンケートでは、「ギフト送付において、どのようなときに喜びを感じますか?」 の問いに対し、40% 近くが 「ギフトを選んでいるとき」 と回答しています (参考記事) 。

一方で、「ギフトを受け取ったときに、内心は素直に喜べなかった理由」 を聞いたところ、35% 超が 「自分の好みや趣味嗜好とは合わない品物をもらってしまったから」 、30% 超が 「自分では使わないものをもらってしまったから」 と答えたとのことです。

こうしてみると、ギフトを贈る側と贈られる側でミスマッチが生まれている様子がうかがえます。

その解決策として行き着いたのが、「選び直し」 ができるギフトフルだったわけです。


学べること


ではギフトフルから、学べることを掘り下げていきましょう。

ギフト体験の 「トレードオフ」 


通常、ギフト選びはトレードオフが起こります。というのも 「贈り手の選ぶ楽しさ」 か 「受け手の喜び」 のどちらか一方に偏りがちだからです。

贈る人を優先するなら、贈る側が商品やサービスを選ぶ一般的なギフトという形式になります。一方で贈られる側のことを優先する場合は、カタログギフトでしょう。

ここには潜在的なミスマッチが存在します。GiftX が行ったアンケートでは、贈り手は大切な相手へのギフト商品を選ぶことに楽しさを見出す一方で、贈られる側は 30% 以上という決して少くない人が、自分の好みと合わないものをもらったため素直に喜べなかったと答えていました。

ギフトフルの 「トレードオン」 


ギフトフルは、贈り手と受け手の両方のニーズをうまく満たすために 「トレードオン」 のアプローチを採用しています。

トレードオン (trade on) とは、どちらか一方をやむなく犠牲にするトレードオフ (trade off) ではなく、ともすると相反することを両立させるというものです。

ギフトフルでは、贈り手が選んだ商品を受け手が好きな商品に交換できるという 「選び直し」 の選択肢を提供しています。これにより 「贈り手の選ぶ楽しさ」 と 「受け手の選び直す楽しさ」 が共存できます。

 「選び直し」 へのニーズ


ギフトフルのサービス開始前のテスト運用では、57% の利用者が選び直しを利用し、サービス開始後も 40% 以上が選び直しを行っているようです (参考記事) 。

これは、選び直しがお客さんの潜在的なニーズに応えていることを示し、今までにはなかった新しいギフト体験の価値を提供しています。

選び直しとコミュニケーションの価値


ギフトフルで注目したいのは、受け手が選び直したことを贈り手に知らせる仕組みが用意されていることです。ギフトを贈ってくれた相手にお礼のメッセージとともに、選び直したことを伝えられるようにしています。

選び直しは、贈り手の選んだ商品を否定したように見えますが、お互いの気持ちを伝え合う新たなコミュニケーションを生み出します。

ギフトフルは自らのサービスを 「ソーシャルギフト」 と打ち出しています。

受け手は選び直したことと贈り手の心遣いに感謝を伝えられ、贈り手は受け手の本当の好みがわかります。メッセージを通じてお互いの気持ちを伝え合うことで、ギフトの本質である相手への思いやりや感謝の気持ちをより深く伝えることができるのです。

ギフトフルにはこうしたコミュニケーション価値を高める仕組みが備わっており、単に物やサービスを贈る以上のお客さんにとって魅力的な選択肢となっています。

ここにギフトフルが他のギフトサービスではなく、「ギフトフルで贈りたい」 という選ばれる理由があります。


まとめ


今回は 「選び直し」 ができるユニークなギフトサービス 「ギフトフル」 を取り上げ、学べることを見てきました。

最後にポイントをまとめておきます。

  • ギフトフルには 「選び直し」 によって、贈り手への贈る楽しさと受け手にも喜びをもたらし双方の満足を両立させる 「トレードオン」 がある。贈り手と受け手のそれぞれのニーズを満たす新しいギフト体験を提供する

  • 選び直しを通じてのコミュニケーションから、ギフトをもらった受け手は贈り手の心遣いに感謝を伝えられ、贈り手は受け手の本当の好みを理解できる。物を贈る以上のギフト体験からギフトフルはお客さんにとって魅力的な価値をもたらしている


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。