投稿日 2024/01/21

ローソンのアートトイレ。コンビニの 「選ばれる理由づくり」 に学ぶマーケティングの本質

この画像はイメージです

#マーケティング #顧客理解 #価値

今回は、ローソンのユニークな取り組みをご紹介します。

コンビニのトイレをアート化するプロジェクトを通じて、マーケティングの本質、マーケターとして目指したい姿勢やありたい姿を考察します。

ローソン アートトイレ


出典: ローソン

ローソンが、店内トイレの壁を装飾する 「アートトイレ」 をテスト展開しています。アートは公募で募集しました。

背景にあるトイレ問題とは?


ローソンによれば、全国のローソンの店舗では1日に約100万人がトイレを使用しているとのことです。このうち、トイレを使った後に商品を買わないで退店する人は約4割いるとローソンは推計しました。

店舗オーナーの中には 「トイレ利用へのマナーの悪い利用者がいる」 「トイレの清掃の手間だけでなく、水道代や備品代の負担が大きい」 といったことを問題視している人もいます。

解決策としてのアートトイレの効果


一部店舗のトイレを 「アートトイレ」 に変えたことで、トイレ掃除の回数や手間が減ったり、「トイレ借ります」 と声をかけてくれる人が増えたそうです。

さらに、トイレがきれいだと、利用者は自然と退店時に 「ありがとう」 と従業員に伝えてくれることもあります。すると、従業員はモチベーションが高まり、接客も丁寧になるとのことです。アートトイレをきっかけにお店に愛着を持つ人が増えるだけでなく、店舗全体の雰囲気が良くなる効果もあったようです。


マーケティングへの学び


では、ローソンのアートトイレをマーケティングの観点で捉えて掘り下げていきましょう。

公募アートからトイレ内の雰囲気を他にはない空間にすることで、消費者のローソンに行く理由を新たに生み出せます。

通常はコンビニに行く理由は必要なものを買いに行ったり、ATM の利用、公共料金の支払いなどのためですが、アートトイレによってこれまでにはなかった来店意向をつくることを目指しているわけです。

ローソンの取り組みからの学びを一般化すると、マーケティングの役割が見えてきます。

マーケティングの本質


一言で結論から言えば、マーケティングとは 「お客さんから選ばれる理由をつくること」 です。

お客さんから選ばれるとは、買ってもらえる、使ってもらえる、来店してくれる、指名されることです。

お客さんから選ばれるのは、提供する商品やサービスに他にはない価値があるからです。他にはない価値を提供し、選ばれる理由をアップデートし続けることが重要になります。

商品やサービスは、お客さんから選ばれ続けることによって生き残っていけます。自分たちのビジネスも存続できるのです。

価値はお客さんが決める


マーケティングの文脈で価値について大事な捉え方は、価値かどうかは、売り手である提供者が決めるものではないということです。

価値を認識し感じるのはお客さんです。提供者側が価値だと思ってもお客さんがそうは思わなければ、それは価値ではないのです。

終わりなき顧客理解の旅


お客さんとの価値の認識ギャップを埋めるためには、顧客理解が不可欠です。すでに顕在化しているニーズだけではなく、奥にありお客さん自身も自覚していない気持ちをどこまで深く掘り下げられるかです。

奥にある気持ちとは、言葉にならない本当の望みや不満、何に価値を見出しているかの価値観までです。マーケティングの専門用語で 「顧客インサイト」 と言ったりしますが、「人を動かす隠れた気持ち」 をどこまで理解できるかがポイントです。

お客さんの理解はどこまでいっても終わりがありません。というのは、環境や生活スタイルの変化からお客さんは変わり続けるからです。この意味で、マーケティングとは 「終わりなき顧客理解の旅」 のようなものです。

では、マーケターは顧客ニーズやインサイトにどのように向き合えばいいのでしょうか?

最後にマーケターとして目指したい姿勢について考えてみます。

御用聞きとなってはいけない


お客さんが欲しいと言っていることに応えるだけでは、マーケターの役割を十分に果たしていません。

マーケターはお客さんの単なる御用聞きではいけないのです。時には、お客さんの期待を良い意味で裏切ります。

自ら主体的に新しい価値を提案することが求められます。お客さんの想像を超える価値提供が、新しい市場を創っていくのです。

マーケターはお客さんの幸せに誰よりもコミットする人


お客さんが商品やサービスにお金を支払うのはなぜかと言うと、お客さんにとっては、商品・サービスは自分の状況をより良くするための手段です。

では、目的は何かと言うと、目的は、突き詰めれば幸せになることです。ここにマーケターの存在意義があります。

マーケターは誰よりも、時にはお客さん本人以上にお客さんの幸せを願い、そのために行動する人です。お客さんの成功や幸せに誰よりもコミットするのがマーケターなのです。


まとめ


今回はローソンのアートトイレをご紹介し、学べることを見てきました。

最後に学びのポイントをまとめておきます。

  • マーケティングとは、お客さんから選ばれる理由をつくる活動全般。お客さんから選ばれるのは、提供する商品やサービスに他にはない価値があるから。商品やサービスがお客さんから選ばれ続けることによってビジネスは存続できる

  • お客さんから選ばれる理由をつくるためには、お客さんの本当の望みや価値観までを深く理解する。変わり続けるお客さんの理解は絶え間ないプロセスであり、終わりなき顧客理解の旅のようなもの

  • マーケターは単なる御用聞きではなく、お客さんの期待を超えた新しい価値を提案し、市場を創造する。マーケターは時にはお客さん本人以上にお客さんの成功を願い、行動し、お客さんの幸せに誰よりもコミットする人


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。