今回は本の紹介です。
タイトルは、非クリエイターのためのクリエイティブ課題解決術 (齋藤太郎) です。
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本書の概要
著者の齋藤太郎さんは、日本にウイスキーの 「角ハイボール」 ブームを巻き起こしたクリエイティブディレクターです。他には翻訳機 「ポケトーク」 、タクシーアプリ 「GO!」 の仕掛け人でもあります。
齋藤さんのこれまでの経験や知見、実例の案件をもとに、どんな仕事や依頼でも 「なんとかする」 というプロのクリエイターの思考とノウハウを解説しています。
課題解決のプロセス
最初に 「課題の本質」 を見つける
この本で提示されるビジネスでの課題解決は、大きく3つのプロセスからなります。
✓ 課題解決のプロセス
- 課題の本質を見つける
- 仮説を立てる
- 解決策につなげる
順番に補足すると、まずは 「課題の本質を見つける」 ことからです。ここで必要になってくるスキルが 「探る」 「聞く」 「見る」 です。
次が、解決策の 「仮説を立てる」 。課題の本質を見つけ出したら、本質を見失わずにプロジェクトなどの仕事を前に進めていきます。ここでは 「想像する」 「考える」 「生み出す」 ことが求められます。
そして3つ目が 「解決策につなげる」 ことです。仮説を検証しながらクオリティを高め、優れたアウトプットを生み出していきます。ここで必要になるのは 「動かす」 「選ぶ」 「伝える」 というスキルです。
上流から考える
問題解決につなげるためには、ものごとの上位概念に立ち返ることが大事です。
たとえばマーケティングにおいて、最終的にプロモーションの広告施策を打つという解決策になるとしても、本当にそのクライアントの課題を理解し、適切な解決策を講じるためには、上流から考えることが重要なのです。
上流とはクライアントのことやクライアントの周辺についてです。クライアント企業の業界の状況、ビジネスモデル、収益構造、組織文化などを理解し、最新の情報にアップデートしておくことが大事です。
法人の人格に合わせる
どの法人にとっても、揺るがしてはいけない土台、本当の核と言える資産 (アセット) があります。
その1つは法人の 「人格」 です。会社を表す 「法人」 という言葉には 「人」 という文字が入っているように、法人にも人格というものがあります。
法人の人格にそぐわない取り組みはうまくいきません。人には合う服と合わない服があるように、会社にも合う表現、合うコミュニケーションとそうでないものがあります。人格を理解せず、反映されていない打ち手では、問題解決にはつながらないでしょう。
解決の 「幹」 を捉える
問題設定において上流に立ち返ると、論点は場合によっては商品開発や組織づくりに至ることもあります。
つまり、広告だけで達成できることには限界があるわけです。広告やプロモーションを考える前に、商品、会社の組織、ビジネスモデルや売り方の仕組みについて考えていく必要があるわけです。そのためには、クライアントも巻き込んで一緒に考え、行動をしていくことが時には必要です。
広告 (だけ) をやりたくてしょうがない事業責任者や経営者はいません。彼ら・彼女らが本当に求めているのは、売上を大きくし、利益を増やすことです。世の中に価値を提供し、その対価として利益をあげることなのです。
そのためには、クライアント企業の業界の収益構造やビジネスモデルを知っておくことが大切です。背景情報としてこうした知識がないと 「お金をいくら使ってくれるか」 や 「いくら払われるの」 という目線だけでクライアントと付き合うことになってしまいます。
広告代理店で言えば 「広告が売れればいい」 という発想になり、クライアントと一緒に課題を解決していく関係にはならないでしょう。クライアントの課題を解決するためには 「枝葉」 ではなく、「幹」 をしっかりと見極める必要があるのです。
商品の存在意義を捉える問い
著者の齋藤太郎さんのとっておきのキラークエスチョンは、「この商品で世の中はどう変わりますか?」 です。
この質問を相手に投げかけることで、狭くなった視野を大きく広げることができます。
他には、「うまくいったときの世の中は、どうなっていますか?」 や 「この商品が当たり前の世界になったとき、5年後はどうなっていますか?」 という質問も効果的です。
存在意義や価値の言語化 (タグライン)
問題への解決策を考えるときに、ぜひやるといいのが、あらためてその商品やサービスの 「存在意義や価値を定義すること」 です。これを本書では 「タグラインをつける」 と表現しています。
タグラインとは製品名ではなく、ターゲットとするお客さんにとっての便益が理解できるもの、ターゲットがありがたいと思えること、スッと腹落ちできるメッセージです。
こうした存在意義や価値の言語化をやらずに、いきなり打ち手を考えようとしたり、 「広告表現のクリエイティブ」 の力に頼ったりすると、うまくいかないでしょう。
誰にとって、何が魅力なのかが、パッと見て理解できるレベルまで言葉を磨く。お客さんからの 「一言で言えば、それって何?」 に答えを提示できることが大事なのです。
まとめ
今回は、非クリエイターのためのクリエイティブ課題解決術 (齋藤太郎) を取り上げ、読んで学べたことを共有しました。
最後にポイントをまとめておきます。
- ビジネスの課題解決は、大きく3つのプロセスからなる。① 課題の本質を見つける、② 仮説を立てる、③ 解決策につなげる
- 問題設定や解決策をつくるにあたって、上位概念に立ち返ることが大事。たとえば依頼が広告作成だとしても、業界知識、クライアントのビジネスモデル、組織文化を理解する
- 商品やサービスの存在意義や提供価値を 「タグライン」 として言語化する。タグラインはお客さんが価値を理解できるもの。誰にとって、何が魅力なのかが、パッと見て理解できるレベルまで言葉を磨く
この本のタイトルに 「非クリエイター」 とあるように、クリエイターではない人がクリエイター視点になり、課題設定と問題解決を学べる本です。
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