投稿日 2024/01/31

令和版 「マーケティング定義」 が発表。2024年 vs 1990年の定義を比較考察

#マーケティング

今回は、日本マーケティング協会から新しく発表された 「マーケティングの定義」 を取り上げます。

日本マーケティング協会による今までの 「マーケティング定義」 は1990年につくられたものでした。最新の2024年版と1990年版のマーケティングの定義を比べることによって、マーケティングとは何かを紐解いていきましょう。

日本マーケティング協会の新しいマーケティング定義


日本マーケティング協会が1月25日、新たにマーケティングの定義を刷新したことを発表しました (リリースはこちら) 。

今までの定義は1990年のものからでしたが、今年2024年に34年ぶりに再定義されました。1990年というと平成2年なので、昭和から平成にかけての頃から、令和版としてマーケティングの定義があらためて見直されたということですね。

令和版の最新の定義


日本マーケティング協会による最新のマーケティングの定義は以下です。

✓ マーケティングの定義 (2024年制定) 

 (マーケティングとは) 顧客や社会と共に価値を創造し、その価値を広く浸透させることによって、ステークホルダーとの関係性を醸成し、より豊かで持続可能な社会を実現するための構想でありプロセスである。

  • 注1) 主体は企業のみならず、個人や非営利組織等がなり得る
  • 注2) 関係性の醸成には、新たな価値創造のプロセスも含まれている
  • 注3) 構想にはイニシアティブがイメージされており、戦略・仕組み・活動を含んでいる

英語版も用意されています。

Marketing is processes, strategies, and activities aimed at co-creating value with customers and society while fostering relationships with stakeholders through the extensive dissemination of this value. Its overarching objective is to advance a more prosperous and sustainable societal paradigm.

  • Note 1: The subjects of this definition encompass corporations, individuals, non-profit organizations, and other stakeholders.
  • Note 2: The term 'fostering relationships' implies the process of generating new value.

定義の議論で出た共通キーワード


日本マーケティング協会のマーケティング定義制作委員会では、定義を検討する場で共通するキーワードが挙がりました。具体的には、「企業と顧客の価値共創」 「ステークホルダーとの関係性の構築」 「社会課題の解決」 「持続的成長」 などです。

こうしたキーワードからマーケティングへの共通認識をつくっていき、日本のビジネス慣習を念頭に置きつつ、日本独自の定義としてふさわしい文章に推敲していったとのことです。

1990年に制定されたマーケティング定義


ちなみに、1990年に制定された日本マーケティング協会のマーケティング定義は次の通りです。

✓ 1990年に制定されたマーケティングの定義

マーケティングとは、企業および他の組織¹ がグローバルな視野² に立ち、顧客³ との相互理解を得ながら、公正な競争を通じて行う市場創造のための総合的活動 ⁴ である。

  • 注1) 教育・医療・行政などの機関、団体などを含む
  • 注2) 国内外の社会、文化、自然環境の重視
  • 注3) 一般消費者、取引先、関係する機関・個人、および地域住民を含む
  • 注4) 組織の内外に向けて統合・調整されたリサーチ・製品・価格・プロモーション・流通、および顧客・環境関係などに係わる諸活動をいう


2024年と1990年の定義の比較考察


では、2024年と1990年の定義を見比べてみましょう。

2024年のマーケティング定義は、マーケティングが単なる経済活動や事業の一環としてだけではなく、顧客や社会とともに価値を創造し、広く浸透させることで、より豊かで持続可能な社会を実現するための構想およびプロセスとして捉えられています。

もう少し続けると、以下の3つが日本マーケティング協会による最新のマーケティング定義の特徴です。

  • ステークホルダーとの価値共創と関係性を重視
    2024年の定義は、顧客や社会との価値創出を重要視している。マーケティングは単に商品やサービスを売ることではなく、より深いレベルでのつながりや協働からの価値をつくりだすことを指している

  • 持続可能性の追求
    持続可能な社会の実現が明確に目標とされている。SDGs を考慮した環境や社会全体の健全性を考慮したビジネスの展開を促している

  • 主体の多様化
    企業だけでなく、非営利組織や個人もマーケティングの主体として位置づけている。マーケティングの枠組みをより広く捉え、多様な主体に適用できるようにしている

こうして整理してみると、令和の今はマーケティングの役割が社会全体に対して、より包括的かつ戦略的なものになっていると言えますね。

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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。