投稿日 2024/01/06

コラボスの UZ 。こう使えば、顧客体験の理解を多面的に立体化できるポテンシャルのあるマーケティングツール

#マーケティング #顧客体験 #顧客理解

今回は、コールセンターに寄せられるお客さんの声 (顧客情報) をマーケティングに活用するコラボス社の 「UZ (ウズ) 」 をご紹介します。

そして、UZ をさらにこう使えば、「マーケティングで重要な顧客理解がここまでできるのでは」 という活用への提案を出していきます。

コラボス 「UZ」 


出典: PR TIMES

コールセンターシステムを開発・提供するコラボスが、 AI マーケティングシステム 「UZ (ウズ) 」 の提供を開始しました (リリースはこちら) 。

音声認識・感情分析表示 (出典: PR TIMES

興味関心キーワードの抽出 (出典: PR TIMES

UZ はコールセンターシステム分野で蓄積してきたコラボスの技術的ノウハウをもとに開発されました。

UZ の機能には、音声認識、話者判別、感情分析、興味関心キーワード抽出などを備え、個人情報の安全性も確保しています。コールセンターの通話データから顧客ニーズを解析するだけではなく、さらに ChatGPT を連携させることで効果的な広告テキストやキャッチコピー、メルマガの作成までできます。

UZ への私自身の印象は、コールセンターへの問い合わせに対してその場で解決する 「フロー」 としてだけでなく、コールセンターに集まった顧客の声をマーケティングなどに有効活用する 「ストック」 としての役割も担えるようにすると見ました。


顧客体験への理解の解像度向上


ではここからは、マーケティング視点でコラボスの UZ をこう使うと、もっとマーケティングに活かせるのではというアイデアを言語化してみます。

すでに UZ では感情分析や興味関心キーワード抽出の機能はありますが、感情などの心理に加えて、より多角的にコールセンターへの声から顧客理解を深めるために活用できそうです。

議論の前提として、一般的な事業会社のコールセンターに寄せられる声を整理しておきましょう。

コールセンターに寄せられる声


コールセンターに集まる顧客の声 (Voice of Customer (VOC) ) は、商品やサービスに関する意見、不明点への質問、要望、苦情・クレームなどが主になります。

具体的な例としては、次のようなものがあります。

  • 商品の使い方がわかりにくい。教えてほしい
  • 商品やサービスの改善提案
  • 機能やサービスに問題があった

これらの情報は、企業が市場や顧客ニーズに寄り添った商品・サービスを提供するための貴重なフィードバックとなります。

コールセンターへのお客さんからの直接の声を収集し分析することで、自社商品やサービスの 「顧客体験」 をより理解することにつながります。

たとえば、商品の使い方がわかりにくいと感じるタイミングは、商品の種類や特性によりますが、一般的には次のような 「使用前」 「使用中」 「使用後」 の3つのフェーズで起こり得ます。

  1. 商品を使用する前
    商品の説明や取扱説明書が理解しにくい、商品をどう組み立ていいかわからない、必要な部品が全て揃っているわからないなど、商品を使用する前に起こる問題

  2. 商品の使用中
    商品の操作方法が複雑で理解しにくい、特定の機能の使い方がわからない、予期せぬ動作やエラーが発生したなど、商品を使用中に起こること

  3. 商品の使用後
    商品のメンテナンス方法がわからない、商品の保管方法への質問など、商品を使用後に起こるもの

顧客体験の理解を深める切り口 (全体像) 


以上のような使用前・使用時・使用後において、コールセンターに寄せられるお客さんから声を解析・分析し整理していくことで、ここに UZ を効果的に使えば顧客体験への解像度を上げることができるはずです。

感情や興味関心の心理面だけではなく、置かれた状況、そのときの行動、本当は何を望んでいたのかまでを多面的に把握することでの 「顧客理解を立体化」です。

顧客体験の理解を深める切り口を整理すると、

  • 顧客の文脈や状況の把握 (コールセンターに連絡するきっかけ, お客さんの置かれた状況, そのときに取っていた行動) 
  • 感情の掘り下げと具体化
  • 顧客の理想や望みの見極め

それぞれについて順番に補足しますね。

[切り口 1] 顧客の文脈や状況の把握


お客さんや消費者がコールセンターに連絡するきっかけとなった出来事を把握します。

コールセンターでのお客さんとの会話から見出せる 「その人がどのような状況に置かれているのかの背景」 は、お客さんのことを理解するために大事な情報です。そして、その状況でどのような行動を取っていたのかも顧客理解を深める情報源です。

これらによりお客さんの行動パターンや傾向を捉え、その背後にある動機やニーズを推測することができます。

[切り口 2] 感情の掘り下げと具体化


顧客理解のためには、その人の心理面も大事な情報です。

UZ では感情分析や興味関心キーワードを抽出できるので、お客さんとの会話から感情やニュアンスを探り、その時の心理状態を理解することが可能です。怒り、失望、喜びなどの感情への具体的な理解です。

さらにここからもう一歩踏み込み、お客さんの感情の背後にある要因まで探れるといいです。不満の根本原因は何か、満足感をもたらした要素は何かへの分析です。

[切り口 3] 顧客の理想や望みの見極め


コールセンターへの問い合わせの背景として置かれた状況、取っていた行動、その時の心理の分析と理解を通じて、要するにお客さんは何を求めているのか、理想とする状態は何かを推測します。

お客さんが望む理想に近づくために、商品・サービスの提供者である企業側がどのような対応や改善が必要なのかへの示唆が得られるでしょう。

このように、コールセンターのデータを深く分析することで、顧客体験の解像度を上げられます。

お客さんや消費者が本当に望んでいることを理解し、それに応える商品開発、コミュニケーションやマーケティングにつなげられます。


カスタマージャーニーマップの作成


ここまで UZ を有効活用することでの 「顧客理解の立体化」 を見てきましたが、顧客体験の理解をより深めるために、もう1つ提案をしたいです。

それが、コラボスの UZ を自社商品やサービスのカスタマージャーニーマップの作成に応用することです (ただしコールセンターへは購入前のジャーニーより購入後の情報が集まりやすい構造ではあります) 。

一般的なカスタマージャーニーマップのイメージ (出典: NetIB-NEWS

先ほど、「顧客理解の立体化」 と表現しましたが、カスタマージャーニーという時間軸を加えることで、次元がさらに1つ増えた顧客理解です。UZ にはここまでの提供価値のポテンシャルを期待したいです。

カスタマージャーニーマップの作成プロセス (全体像) 


UZ を利用してのカスタマージャーニーマップの作成方法は、次のような流れになります。

✓ カスタマージャーニーマップの作成プロセス
  1. データの収集と整理
  2. 顧客体験がカスタマージャーニーのどの段階かの振り分け
  3. 顧客の行動と感情 (心理) のマッピングからジャーニーマップの作成
  4. 顧客理解への洞察や示唆の抽出
  5. 各顧客接点での対策立案

順番にそれぞれ見ていきましょう。

[ステップ 1] データの収集と整理


UZ を利用してコールセンターの通話データを収集しますが、ここで重要なのは、顧客の声 (VOC) をできるだけ広範囲から収集することです。

収集データを UZ の音声認識と感情分析機能を活用して、お客さんの感情の変化やトーンを解析します。

そして体験を的確に振り分けます。ポジティブ、ニュートラル、ネガティブに分け、たとえば 「感動体験」 「中立体験」 「残念体験」 といったラベルをつけて分類します。

[ステップ 2] 顧客体験がカスタマージャーニーのどの段階かの振り分け


コールセンターに寄せられた声から顧客体験をカスタマージャーニーの各段階ごとに振り分けます。

具体的には、認知、検討、購入、使用、サポートなどの各段階に割り当てます。

[ステップ 3] 顧客の行動と心理のマッピング


顧客の状況、取っていた行動、たとえば、会員登録をしようとしていた、商品を使おうとしていた、使った後に保管したなど、そしてその行動時の心理状態や感情 (不満や満足など) をジャーニーマップ上にマッピングします。特に感情については、実際のお客さんの声からの言葉をそのままリアルに残しておくといいでしょう。

お客さんの置かれた状況、行動、感情をカスタマージャーニーマップにすることで、顧客体験がどのような時間軸で展開しているかが視覚的にわかります。

[ステップ 4] 顧客理解への洞察や示唆の抽出


コールセンターへの情報から作成したカスタマージャーニーを分析し、顧客のニーズや期待、発生している 「不」 として問題点などを見出します。

これらへの洞察を進めることで、お客さんの立場になっての顧客理解を深め、改善策を考える上で重要な示唆になります。

[ステップ 5] 各顧客接点での対策立案


カスタマージャーニーの各顧客接点で、改善策を考えます。たとえば、残念体験が多い接点では顧客サポートを強化し、感動体験が起こったところではさらに促進する施策を考案します。

また、マーケティングコミュニケーションへは、得られた洞察や示唆をもとに、ターゲット顧客に適したメッセージやコミュニケーションチャネルを選定し、より効果的なマーケティング活動を展開できるでしょう。

以上のステップを踏むことで、UZ を活用したカスタマージャーニーマップの作成と、リアルなお客さんからの声にもとづく顧客理解、顧客体験の向上につなげられます。


まとめ


今回は、コラボスのコールセンターへの顧客の声をマーケティングに活用するサービス 「UZ」 を取り上げ、UZ を使えばさらにこんなことができそうというアイデア (提案) を考えてみました。

最後にポイントをまとめておきます。

  • コラボスが開発した UZ は、コールセンターの通話データから顧客ニーズを分析し、ChatGPT と連携することで広告テキストやメルマガの作成ができる。UZ の機能には音声認識、感情分析、興味関心キーワードの抽出などがある

  • [提案 1] UZ を用いての多面的な分析から顧客理解の立体化。お客さんの文脈や状況、そのときにとっていた行動を把握し、感情の掘り下げと具体化、お客さんの理想や望みの見極めを行う

  • [提案 2] UZ を活用してのカスタマージャーニーの作成。お客さんの文脈、行動と感情を時系列にマッピングする。マップから顧客体験の課題やボトルネックを見出し、顧客体験をより良くできる施策につなげる


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。