投稿日 2024/01/20

安心感、期待、サプライズ。「一番くじ」 が教えてくれる心をつかむマーケティング

#マーケティング #提供価値 #価格設定

今回は 「一番くじ」 を取り上げます。

一番くじの人気の裏には、実は洗練されたマーケティングがあります。安心感、期待、サプライズ。これらがお客さんの魅力になっています。

一番くじから学べるマーケティングのヒント、ぜひ一緒に紐解いていきましょう。

一番くじ



コンビニなどで買える 「一番くじ」 が人気です。

一番くじは、コンビニ以外にもアニメ・ホビーショップなどで売られ、価格は安いもので1回税込み680円からです。リーズナブルとは言えないかもしれませんが、一番くじの会員数は約800万人にものぼります。

くじで当たる商品は 「ドラゴンボール」 や 「鬼滅の刃」 、他には 「たまごっち」 と、アニメや漫画、日用雑貨など多岐にわたります。

人気の要因


では 「一番くじ」 の人気の高さはどこにあるのでしょうか?

整理してみましょう。

  • 人気の IP: 「ドラゴンボール」 や 「鬼滅の刃」 など、人気作品やキャラクターが使われている

  • 複数の販路: コンビニを中心に、アニメショップ、書店、ドラッグストアなどでも販売されているため、消費者は目にする機会が多い

  • 購入しやすい仕組み: 一番くじは各賞の残数状況が掲示している。当たりに何が残っているのかがわかり 「これを当てたい」 という気持ちになる

  • ハズレ無し: 購入者は何らかの商品が必ず当たる。何が出るかは分からないという楽しさはありながら、商品は必ず当たるので安心感がある

  • ラストワン賞: その店で最後の1枚を引くと特別な商品が当たる。上位賞並みの人気を誇る。残り物には福がある設計になっている

  • 購入後のチャンス: 購入後にもう一度当たるチャンスがある。半券に記載されたキャンペーンナンバーで 「ダブルチャンスキャンペーン」 に挑戦できる

以上のような複数の要因が組み合わさり、一番くじは多くのお客さんの心をつかんでいるのです。

価格設定がおもしろい


もう1つ注目したいのは、一番くじの価格です。

一番くじは 「ワンコイン500円」 のようなわかりやすい価格設定ではありません。あえてそのようにしていないのです。

実はここも 「一番くじ」 の人気に一役買っているのです。

ポイントは2つです。

  • 当選賞品の柔軟性: ワンコイン500円のような一律ではなく、価格が柔軟に設定されている。より高価な賞品にでき、高額な当たりが購入意欲を高めることもある

  • 多様な顧客層の獲得: 価格を固定しないことで、より多くのお客さんにアプローチできる。少額で買えるくじを気軽にやりたい人、高額でも豪華な賞品が当たるくじに挑戦したい人など、多様なニーズに応えられる


学べること


それでは 「一番くじ」 の事例から、さらに学べることを掘り下げていきましょう。

3つあります。

  • 安心感とサプライズの絶妙なバランス
  • 価格設定の柔軟性と心理的な影響
  • 売る側への配慮 (一番くじは設置するコンビニにもありがたい存在になっている) 

では順番に見ていきましょう。

安心感とサプライズの絶妙なバランス


一番くじは、賞品ラインアップの中で何が当たるかは、買うまでわかりません。

何かしらの商品は手に入る安心感がある一方、どの商品が当たるかは不確定なのでサプライズ要素があります。何も当たらないというわけではないので、お客さんが失望することもないでしょう。

こうした期待値とサブライズ感の絶妙なバランスがあることで、一番くじは人々を引きつけ、何度も買ってもらえます。

価格設定の柔軟性と心理的な影響


一番くじでは、価格設定が一律でないことも特徴的です。ワンコイン500円というようなものではありません。

価格設定が柔軟にできることで、価格感度の異なる色々なお客さんに対して、それぞれのニーズと価値認識に合った提案をすることができます。これにより購買意欲を刺激する効果もあります。また、価格が高すぎず低すぎない点が、購入後の満足度にも寄与しています。

売る側への配慮


一番くじは、くじを買うお客さんだけでなく、設置するコンビニや小売店にとってもメリットがあるようになっています。

一番くじが店内にあることで、それ自体がお客さんが来てくれる 「集客ツール」 となります。

さらに、一番くじを購入するお客さんが、そのお店で売られている他の商品も購入することも期待できます。一番くじによるプロモーションや広告効果から、来店や売上への効果もあるでしょう。

このように、お客さんに価値を提供しつつ、他方では販売チャネルやパートナーにもメリットを提供することで 「一番くじの売り手」 にも配慮されています。


まとめ


今回は、コンビニなどで売られている 「一番くじ」 を取り上げ、学べることを見てきました。

最後に学びのポイントをまとめておきます。

  • 安心感とサプライズのバランス: 一番くじは賞品が確実に手に入る安心感と、何が当たるかわからないサプライズ要素がうまく組み合わさっている

  • 価格設定の柔軟性: 一律の価格ではなく価格設定を柔軟にすることで、低価格でくじを気軽にやりたい人、高額のくじに挑戦したい人など、多様なお客さんに対応できる

  • 売る側への配慮: 一番くじは設置するコンビニや小売店にとっても集客ツールになる。くじを引いたお客さんがお店で買いものをすればお店全体の売上向上に貢献する。ウィンウィンの関係ができている


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。