投稿日 2024/01/27

PL 思考と BS 思考で、変化する市場で勝つマーケティングとブランディング

#マーケティング #PL思考とBS思考 #短期と長期

ビジネスの世界で成功を収めるためには、短期的な売上と利益を追求するだけでは十分ではありません。

異なる2つのアプローチである 「PL 思考」 と 「BS 思考」 を効果的に組み合わせることで、短期的な成果と長期的な成長を両立できます。

では具体的にどうすればいいのか、ぜひ一緒にその秘訣を探っていきましょう。

PL 思考と BS 思考


PL 思考とは、損益計算書上の収益を重視する考え方です。四半期や1年などの短期間で、投じた費用以上の売上を上げていく思考を指します。

これに対して BS 思考は、長期的な視点で資産を築いていく姿勢を持つことです。BS 思考では有形・無形の資産を形成し、事業の基盤を強化することを重視します。

PL 思考は流れていくという 「フロー」 、BS 思考は蓄積する 「ストック」 というイメージです。

ここまでの PL 思考と BS 思考は抽象的なので、ビジネスでの具体例に当てはめてみましょう。

ビジネスの世界での具体例


ビジネスの現場での PL 思考の例は、短期的な成果を求める企業や事業が挙げられます。

売上とコストの観点から判断をし、打ち手を次々に実行していきます。留意点としては、目の前のことへの一時的な解決策ばかりになると、長期的な成長の機会を見逃してしまう可能性があることです。

一方の BS 思考の企業は、持続可能な成長のために長期的な時間軸で資産を築き上げ、事業や企業の基盤を強化する戦略を採用します。

例えばある企業 Y は PL 思考の傾向があり、短期的な売上増加のためにセールやキャンペーンを実施していました。一時的に売上を押し上げる効果がありましたが、長期的には顧客ロイヤルティの低下やブランド価値の希薄化につながってしまいました。お客さんは次の安売りセールを待つようになり、通常価格での購入が減少したからです。

別の企業 Z は BS 思考にもとづき、顧客体験の向上や独自ブランドの育成に注力しました。店舗のデザイン改善、品質の高い独自商品の開発、優れた顧客サービスの実現に向けて長い目で見て投資しました。

これらの戦略は当初は大きな利益を生まず、打ち手によっては赤字になったものの、時間が経つにつれてお客さんからの信頼とロイヤルティが築かれ、安定した売上とブランドの強化につながりました。

このように、PL 思考と BS 思考は異なるアプローチをとります。PL 思考は短期的な成功をもたらす可能性があり、長期的な視点では BS 思考が持続可能な成長とブランド価値の向上に寄与するでしょう。

PL 思考と BS 思考の相互関係


PL 思考と BS 思考は、ビジネスでの異なる側面を補完し合う関係にあります。

理想的には、PL と BS の2つの思考を組み合わせ、短期的な成果と長期的な成長を同時に追求することです。

例えば PL 思考からのキャンペーンは、顧客数の拡大、市場シェアの向上、売上増加に貢献することがあります。しかし、このような活動だけでは、お客さんのロイヤルティやブランド価値の構築には十分とはなりません。

そこで BS 思考も取り入れることにより、短期的な利益追求と同時に、長期的な顧客関係の構築やブランドへの信頼性向上に取り組むわけです。

また、新製品開発や市場拡大のような BS 思考による戦略は、初期段階では大きな費用がかかり、すぐには利益を生まないでしょう。だからこそ PL 思考にもとづく活動から資金源を得ることで、長期的な BS の戦略をとることができます。

このように、PL 思考と BS 思考を効果的に組み合わせることで、短期的な成果と長期的な成長のバランスを取ることが可能になるのです。

こうしたアプローチは、特に変化が激しい市場環境において有効です。短期的な市場の変動に PL 思考で対応しつつ、長期的な競争力を保持するために BS 思考で向き合います。


マーケティングとブランディング


では PL 思考と BS 思考をマーケティングやブランディングに当てはめてみましょう。

マーケティングにおける PL 思考と BS 思考


マーケティングにおける PL 的なアプローチの例としては、デジタルマーケティングにおいてクリックなどのコンバージョンという短期的な成果を追求することです。

一方で、BS 思考を取り入れたデジタルマーケティングでは、顧客エンゲージメントやコンテンツマーケティングに力を入れます。価値ある情報コンテンツを提供し続けることで、長期的なユーザーコミュニティの構築に注力し、お客さんとの深い関係を築くことを目指します。

ブランディングにおける BS 思考


ブランディングでは BS 思考になることが大事です。

長期的なブランド価値の構築は、短期的な成果にとらわれることなく、ブランドのストーリー、お客さんとの深い関係性を積み上げ、社会的責任などの実践からできあがります。

独自のブランドストーリーや価値観を持つ、それは例えば、環境に配慮した製品を提供する企業が自然保護や持続可能性に関する一貫したメッセージ発信を通じて、お客さんや社会との深い絆を築けるでしょう。

また、特定の消費者のライフスタイルに合わせた製品やサービスを提供することで、そのブランドに特有の文化やコミュニティを形成する企業もあります。

これらのブランディング戦略は、単に製品を売るのではなく、長期的な信頼関係とロイヤルティ構築からお客さんと強いつながりをつくっていくことを目指します。ブランド価値を高め、市場での競争優位を長期に渡って保持するためのカギとなります。


まとめ


今回は 「PL 思考」 と 「BS 思考」 をキーワードに考察をしました。

最後にポイントをまとめておきます。

  • PL 思考は短期的な成果 (例: 売上と利益) を重視する。BS 思考は長期的な資産の構築と基盤強化に重きを置く

  • 理想的には PL 思考と BS 思考を組み合わせ、短期的な成果と長期的な成長を同時に追求したい。特に変化が激しい市場環境において、短期的な市場の変動に PL 思考で対応し、長期的な競争力を保持するために BS 思考になるといい

  • マーケティングでは PL 思考で短期的成果を追求し、BS 思考から顧客体験向上に向けて投資し、お客さんとの深い関係から長期的なロイヤリティを築く。ブランディングにおいては長期的な視点でブランド価値を高めていく


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。