伊藤園の緑茶飲料 「お~いお茶」 の CM に、AI でつくられた女性モデルが登場し話題になりました。
今回は、CM での AI 活用の裏側を探り、「バーニングニーズ」 をキーワードにマーケティングへの学びを考察します。
伊藤園 「お~いお茶」 の CM に AI 女性が登場
CM では、近未来を思わせる街を背景に、快活なシニア女性が登場します。手には伊藤園の 「お~いお茶 カテキン緑茶」 を持っています。
出典: ITmedia
次のシーンでは未来から現在に変わり、それに合わせてシニアの女性が一気に若返ります。
出典: ITmedia
そして 「未来の自分を、今からはじめる」 というナレーションが入ります。CM から伝わってくるメッセージは、年齢を重ねても元気でいるために、今の若いうちから健康習慣を始めませんかという提案です。
マーケティング課題
では、この CM を作成した背景を見てみましょう。
伊藤園のマーケティングへの課題感は、「お~いお茶 カテキン緑茶」 を自身の健康が気になり始める 30 ~ 40 代にこそ飲んでほしいというものでした。
しかし事前の調査では、30 ~ 40 代はカテキン緑茶をまだまだ自分には遠い飲み物であるという、自分ごと化していない人が多いことがわかりました。
そこで、カテキン緑茶を 「自分の未来のためのお茶」 という認識を持ってもらうことを狙い、より若い層にも買ってもらえるようなマーケティングコミュニケーションを行うことになりました。
AI モデルでなければいけないワケ
CM の企画段階で生まれた演出アイデアは、「現在と30年後の同一人物を登場させ、"未来の自分が現在の自分にお茶を手渡しする" 」 というものでした。
しかし、このアイデアを CM の映像で表現するには、実在のタレントの顔を加工して老けさせることになり、こうした見せ方では視聴者からの共感を得られないと伊藤園は考えました。そこから議論を重ねた結果、AI を使うことが望ましいという決断に至りました。
注目したいのは、CM での AI モデルを使うのは、マーケティングの目的や課題のための解決手段だったことです。逆に言えば、CM に AI を使う 「手段の目的化」 が起こらず、「AI でいいかな」 のレベルではなく、「AI でなければいけない」 という理由があったわけです。
学べること
それでは伊藤園の 「お~いお茶」 の CM から、学べることを掘り下げていきましょう。
バーニングニーズを捉える
CM では AI の女性モデルを使うことが目的化されることなく、もともとの目的や課題への手段として採用されました。
マーケティングへの学びとして着想を広げると、切迫したニーズ (バーニングニーズ) を捉える重要性です。
お客さんからの 「あればいい」 くらいのニーズなのか、それとも 「これがないと困る」 「今すぐ必要」 というバーニングニーズかどうかの必要度合いの見極めです。
ではどうすればバーニングニーズを捉えられるのでしょうか?
ニーズの背後を理解する
そのニーズが本当にバーニングニーズなのか、なぜ切実であるかを理解するためには、その背景や文脈を見つめるといいです。
背後にある3つの要素から掘り下げます。
- 発生頻度
ニーズが切実である理由の1つは、その問題が頻繁に発生すること。頻繁に発生する問題は、お客さんが解決策を求める度合いが強くなる - 起こる範囲や影響の広さ
問題発生が広範囲にわたり、多くの人々に影響を及ぼす場合、そのニーズは切実であると言える。多くの人が同様の問題に直面している場合、解決策への需要が高まる - 発生したときの影響度・インパクトの大きさ
問題が発生した際に、その影響が大きいほど、お客さんは解決策を求める意欲が強くなる。インパクトが大きい問題は解決が急務となり、バーニングニーズとして認識されることが多い
これらの要素を切り口にし、ニーズの背景やお客さんの文脈を理解することで構造化でき、奥にある本質の見極めにつながります。
お客さんが 「お金を払ってでも解決したい」 と思うような課題を見つけることが、マーケティングを成功させるカギを握ります。ニーズの解像度を上げることで、より適切なマーケティングを展開していくことができます。
まとめ
今回は、伊藤園の 「お〜いお茶」 の CM に AI モデルが使われた事例を取り上げ、学べることを見てきました。
最後に学びのポイントをまとめておきます。
- お客さんの 「今すぐ必要」 と感じる緊急かつ重要なニーズ (バーニングニーズ) に応えることがマーケティングでは大事
- ニーズの背後までを理解し、ニーズの強さを見極める。そのニーズの発生頻度、起こる範囲や影響の広さ、起こったときのインパクト・影響度の大きさから解像度高くニーズを捉えよう
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