今回は、スマートロッカーを使ったユニークなサービス事例を取り上げ、見過ごされがちな潜在ニーズの発掘と、既存資産を有効活用する方法を探ります。
ボピスタ
BOPISTA (ボピスタ) は、スマートロッカーを活用した商品の受け取りと預け入れの有料サービスです。
西武ホールディングスが運営していて、西武線の池袋や高田馬場の駅などで展開しています。ロッカーは駅構内や他には商業施設の中にもあり、受け取りをできるモノはオンラインで注文した商品です。
たとえばコストコの生鮮食品や日用品、他にはお花屋さんの花などの数十種類の多様な商品を冷蔵・常温のスマートロッカーで気軽に受け取れます。商品は最短で当日の注文3時間後にロッカーに届きます。
駅構内のロッカーが活きる条件
ボピスタは駅構内や商業施設に設置されたロッカーなので、ボピスタが使われるためには 「駅構内のロッカーを有料でも使用したい」 という経済的な合理性やベネフィットがあることが必要です。
アマゾンや楽天、他には EC サイトから購入する商品の多くは自宅に直接届けられるので、こうした商品をボピスタで扱っても勝ち目はないでしょう。
駅構内ロッカーを利用するというボピスタが活きるのは、自宅に直接届けるよりも駅構内のロッカーで受け取る方が便利な場合や、そもそも自宅に届かない商品などです。また、ロッカーから受け取った後に自宅に持ち帰る商品は、重すぎず、かさばりすぎないものが望ましいでしょう。
コストコがハマった要因
これらを満たすものの1つが、コストコの商品でした。
コストコは他の小売店にはないユニークな商品ラインナップが多数あります。コストコに行くことができないアクセスの難しさや年間会費があるために店舗に足を運べない人たちが一定数存在します。
郊外に位置するコストコ店舗へのアクセスが困難な都市部の消費者にとっては、ボピスタの駅ナカのロッカーでコストコ商品を受け取ることができるのは魅力になります。ボピスタはこうした潜在的なコストコのお客さんを掘り起こすことを狙ったわけです。
スマートロッカーの役割
スマートロッカーという存在は、ボピスタのサービスの多様性を広げました。
従来のロッカーであれば一般的な預け荷物に限定されるところが、スマートロッカーは常温、冷蔵、冷凍商品にも対応します (ただし、常温と冷蔵など、異なる温度帯の商品は別々のロッカーに入ることになる) 。
また、スマートロッカーの料金体系は1回200円などの固定料金ではなく、利用時間に応じて料金が変わるシステムが採用されています。これにより、利用用途の柔軟性が向上しました。
ボピスタから学べること
ボピスタは、多くの人の日常的な導線上にある駅構内や商業施設のロッカーを活かすことで、新しいサービスモデルを創出しました。
ボピスタの事例から学べるのは、駅構内などにあるロッカーの新しい利用用途を見出し、成功を収めた点です。
より一般化して捉えると、既存の資産を有効活用することで、新たなビジネスチャンスを生み出せるということです。
ここでのポイントは、コストコ商品の受け取りが象徴しているように、人々がやりたくてもできていなかった 「潜在ニーズ」 に注目したことです。既存の方法では実現されていなく、自社商品やサービスに独自の価値があればお客さんから選んでもらえるのです。
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