投稿日 2024/02/02

情報の海に溺れない。"運まかせ購入" への消費者心理とマーケティングアイデア

#マーケティング #消費者心理 #運まかせ購入

情報過多の時代、日々溢れる情報の中で、「選べない消費者」 という新たな現象が浮かび上がってきています。

今回は、今の時代ならではの消費トレンドに注目し、マーケティングの視点で背景にある消費者心理を読み解きます。そして最後にマーケティングアイデアを考察します。

 「運まかせ購入」 


日経 MJ の一面の消費者行動の特集 (2023.11.6) がおもしろかったです。

特集テーマは 「選べない消費者」 でした。

出典: 日経

自分で買うものを選べないという消費行動の背景は、様々なことへの情報過多が起こり、商品へのレコメンド情報も多すぎることです。

そこで選択肢を絞ってくれたり、コレと決めてくれるサービスが人気のようです。

サービス例


自分で選ばずに、ときには 「運まかせ」 で選択や購入を決めるサービスは、たとえば次のようなものがあります。

  • ルーレット+
    項目に選択肢を記入して、ルーレットの当たりからランチのお店やメニュー選びなどをランダムで決められるサービス

  • KATE iCON BOX (AI 自販機) 
    カネボウ化粧品がブランド 「KATE」 で展開した AI 搭載の自販機。KATE の全26色のアイシャドーから最適な4色を提案してオリジナルパレットを提供

  • スマートシャッフル
    Spotify が提供するサービス。AI がユーザーのプレイリストを分析し、好みに合いそうな新しい曲を提案する

  • エアクローゼット
    プロのスタイリストが選んだ服が定期的に自宅に届くサブスクのレンタルサービス

  • OUTLET ごとガチャ
    冷凍食品の自販機。高級食材や珍味などをお得なアウトレット商品としてガチャガチャのように買える

  • 本のガチャ × 香水ガチャ
    文庫本と香水のコラボ商品。本と香水のセレクトセットからランダムで届く。本と香りへの出会いを通じて新しい読書の楽しみ方を提案

  • どこかにビューーン!
    ランダムに選ばれた駅へと新幹線で往復できる JR 東日本の旅行サービス。行き先は申し込み後に自動的にくじ引きのように決定される

 「運まかせ購入」 への2つの消費者心理


ここまで見てきた 「運まかせ購入」 という自分で選ばない購入で注目したいのは、消費者からの選んでもらうことへの期待感です。

サービスに期待している心理には、大きく2つがあると見ました。

  • 自分に合う "正解" を教えてほしいという 「安全・慎重派」 
  • ガチャ的に "サプライズ" を出してほしい 「冒険・探索派」 

では、こうした消費者心理から生まれる 「自分は選ばずに買いものをするという消費行動」 にはどんなマーケティングが有効なのでしょうか?


 「運まかせ購入」 へのマーケティング


自分では決められない消費者へのマーケティングで大事なのは、自分自身では選べないという悩みに寄り添い、いかにお客さんとの関係を築き信頼感を醸成することです。

その上で、クロスセル (付随購買) やアップセル (より高単価商品の購入) を狙っていけるかがポイントになります。

クロスセルのマーケティングアイデア


クロスセルでは、お客さんの現在の購買行動をもとに、お客さんに響くであろうズバリの関連商品をおすすめすることで、購買体験を広げられます。

たとえば、健康志向のお客さんがオーガニック食品を購入した際、エコフレンドリーなキッチン用品やサステナブルな食器を提案します。これにより、ライフスタイル全体をサポートする商品展開につなげます。

お客さんの生活全般に寄り添うブランドとしてのポジショニングを狙います。

アップセルのマーケティングアイデア


アップセルとは、お客さんが今使っていたり興味を持っている商品よりも、上位モデルや高機能版を提案するアプローチです。

例としては、スポーツジムの会員に通常の月額プランに加えてパーソナルトレーニングや特別クラスが利用できるプレミアム会員プランを提案します。

この例で重要なのは、ただ高価な商品を勧めるのではなく、お客さんの健康やライフスタイルの向上をサポートする価値を提示することです。お客さんに理想の自分になれることへの投資として捉えてもらえれば、上位プランのサービスに対しても前向きな姿勢をとることでしょう。

お客さんの理解からの提案


クロスセルやアップセルのいずれにおいても、お客さん1人ひとりの本当の望みを理解することが大事です。

深い顧客理解から、求めていることへの適切な提案を通して購買体験をパーソナライズ化することで、自分では決めきれないお客さんにも共感や納得のいく価値を提供し、「これを買いたい」 という気持ちをつくります。

その結果として自社の売上につながるという流れです。


まとめ


今回は、自分では買うものを選べない消費者がいて、その受け皿として 「運まかせ購入」 ができるサービス例から、学べることを見てきました。

最後に学びのポイントをまとめておきます。

  • 情報過多で商品へのレコメンド情報も多すぎることで、自分自身で買うものを選べないという悩みを持つ消費者がいる。こうした人たちには、選択肢を絞ってくれたり、コレと決めてくれる 「運まかせ購入」 ができるサービスが人気

  • 自分で選ばずに買えるサービスへの消費者心理は2つ。① 自分に合う "正解" を教えてほしいという 「安全・慎重派」 、② ガチャ的に "サプライズ" を出してほしい 「冒険・探索派」 

  • 選べない消費者へは、自分自身では決められないことへの悩みに寄り添い、お客さんとの関係を築き信頼感をつくることが大事。お客さん1人ひとりの本当の望みまでの深い理解から、自分では決めきれないお客さんに共感や納得のいく価値を提供し、「これを買いたい」 という気持ちをつくる


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。