投稿日 2024/02/04

あなたの 「弱み」 を 「強み」 に。戦わずに勝つストーリーからのブランド戦略

#マーケティング #ブランド #本

自社商品のその 「弱み」 、見方を変えれば 「強み」 になるかもしれません。

今回は、あなたの 「弱み」 を売りなさい。 - 戦わずに売る新しいブランド戦略 (川上徹也) という本を取り上げます。


この本から、自分にしかつくれないストーリーの力で、小さな企業やブランドがいかに大手に立ち向かえるのか、その秘訣を探ります。

ストーリーで独自性をつくる


この本は、ある架空の町のレストランを舞台にした寓話です。無名の小さなお店が、有名で大きな店に 「戦わずに勝つための戦略」 を学べる本です。

大きなプレイヤーに勝つためのポイントは、商品のクオリティや低価格で大手と同じ勝負をするのではなく、「商品以外の "作り手や売り手のストーリー" で独自化を図ること」 です。

ストーリーの要素


この本ではストーリー要素を次のように分解し、体系立てて、寓話の物語を通してわかりやすく説明されています。

✓ ストーリーの要素
  • 独自性
  • 具体的で魅力的なエピソード

2つ目の独自性、3つ目のエピソードをさらに分けると、次のようになります。

✓ 独自性
  • ファーストワン 業界初
  • ナンバーワン 業界一
  • オンリーワン 業界唯一

✓ エピソード
  • 自分のパーソナルな部分を打ち出す
  • 志や地域貢献を伝える
  • お店を学校のようにし、教える場としてコミュニティ化する
  • 問題解決のエピソードを知ってもらう
  • 相手の期待値を 1% 超える

まずは志を立て、何かしらの独自性を見出し、エピソードを持って伝えていきます。泥臭いアプローチほど大手には真似ができず、そこを逆手に取り、弱いからこその自分たちにしかできない戦い方を展開していくわけです。

弱みを見せることの効果


本書の寓話物語では、レストランを営む主人公は失敗の連続でした。多くの失敗には共通点があり、それは町の大手のレストランと真正面から戦おうとしたことです。しかし最初から無理筋でした。

この本のタイトルには 「弱みを売れ」 とありますが、強者に真っ向勝負を挑むのではなく、本当にやるべきなのは弱みを受け入れた上で自分にしか持っていないエピソードからストーリーをつくることだったのです。

それにより、次のような効果が期待できます。

  • 覚えやすさ: お客さんにとって、独自の物語のあるお店や商品は覚えやすい。思い出してもらえることからの来店や購入につながりやすい

  • 信頼性の向上: ストーリーによってお客さんはその商品やサービスに対して信頼感を持つようになる

  • 口コミ効果: 強く印象に残るストーリーは、お客さんから自然と口コミがされやすく、それが新たなお客さんを呼び込むという好循環につながる

* * *

では、どうすれば 「弱み」 を 「強み」 に変えることができるのでしょうか?


弱み活かす方法


次の4つのステップで進めます。

✓ 弱み活かす方法
  1. 弱みの客観的な認識・現状把握
  2. 弱みを独自性に変換
  3. ストーリー構築
  4. コミュニティでの共有

では順番に見ていきましょう。

弱みの客観的な認識・現状把握


まずは客観的な現状把握からです。自分 (たち) の弱みにフタをしたり目をそらすのではなく、正面から事実として受け入れます。

たとえば 「手作りの家庭料理店」 を例にとって考えましょう。

弱みは、大手の飲食チェーン店に比べて料理メニューのバラエティがなく、スタッフの人数が少なく、広告などの宣伝活動も限られていることです。

弱みを独自性に変換


次に、弱みを明確にした上で、それをどうすれば魅力に変えられるかを考えます。同じことでも見る視点や切り口、評価ポイントを変えれば、大手企業には真似ができないお客さんにとっての価値を見つけ出すことができます。

たとえば 「地産地消の食材のみを使い、その日にオーナーが手作りで調理した家庭料理」 であると位置付け、チェーン店にはない独自性を打ち出します。弱みだったことを、大手が提供できない "地元ならではの家庭料理の味" を追求するという意味合いに変換するわけです。

ストーリー構築


独自性を明確にしたら、ストーリーに組み込みます。ストーリーがあればお客さんは感情的に引き込まれ、自分ごと化でき親近感が生まれるでしょう。

たとえば 「このメニューは地元の ◯◯ さんの農家で取れた野菜を使っています」 や 「レシピは農家の □□ さんとの雑談をしているときに、地元に古くからある言い伝えからヒントを得て生まれました」 です。こういった背景を物語にして共有することで、お客さんからの感情的な愛着を生み出します。

コミュニティでの共有


ストーリーができたら、お客さんが集まるコミュニティで独自性やストーリーを共有していきます。

お店自体をコミュニティと見立てれば、来てくれたお客さんへのコミュニケーションを通じて直接伝えられます。また、定期的な地域イベント、料理教室の開催、オンラインでのレシピ共有などを通して、多面的にコミュニティをつくりストーリーを共有するといいでしょう。

コミュニティ内でのお客さん同士の口コミや共感が生まれ、自然と商品やサービスが広まっていく良い流れができます。こうしたやり方は、大手企業は簡単には真似できない密着型のアプローチとなります。


まとめ


今回は書籍 あなたの 「弱み」 を売りなさい。 - 戦わずに売る新しいブランド戦略 (川上徹也) を取り上げ、小さなプレイヤーが生きる道としてストーリーを使ったブランディングの方法を見てきました。

最後にポイントをまとめておきます。

  • ストーリーからのブランディング: 商品のクオリティや価格だけでなく、作り手や売り手のストーリーで独自性を築く。ストーリーを分解すると志、独自性、具体的で魅力的なエピソード

  • 独自性: 独自性は業界初、業界一、業界唯一を打ち出す。エピソードには個人の物語や地域貢献、コミュニティの要素を入れ、お客さんの期待値を 1% でも超えることを目指す

  • 弱みを強みに変える: 弱みを客観的に認識し、解釈から独自性に変換。ストーリーを入れ、コミュニティで共有することで、ブランド力の強化とお客さんからの信頼を築いていく

この本は 「戦わずに勝つ」 というテーマで、興味深く読めた本でした。

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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。