投稿日 2024/02/27

ビジネス小説 「日本ゲートウェイ (楡周平) 」 。現状把握の難しさと変化することの重要性

#マーケティング #ピボット #本

今回は、小説を1冊ご紹介します。


本のタイトルは 日本ゲートウェイ (楡周平) です。

この本を読んで、ビジネスや戦略の視点で考えさせられたことを書いています。

本書の概要



書籍 「日本ゲートウェイ (楡周平) 」 はビジネス小説です。

本の物語の舞台は、倒産寸前にまで追い込まれた老舗百貨店です。

明治期に日本橋で創業した老舗マルトミ百貨店は、コロナ禍でメインバンクから追加融資を止められ最後通告を受け、一気に倒産の危機に瀕しました。

小説ではストーリーが進むに連れ、百貨店や小売業界だけではなく、苦況の日本を救うような壮大なビジネスプランができていきます。


現状把握と変化


ビジネス小説 「日本ゲートウェイ」 からは、ピボットの視点で学びが得られます。本の物語で言えば、業態転換の難しさや重要性です。

安西先生の名言とビジネスの現実


スラムダンクの安西先生の名言に、「あきらめたらそこで試合終了です」 があります。

その一方で、ビジネスではあきらめきれずにいつまでも続けてしまうことで撤退の判断を誤まり、結果として倒産と言う 「試合終了」 を迎えてしまうこともあるでしょう。

こうしたジレンマはビジネスの世界では起こり、ものごとはそう簡単にはいかないのです。

外部環境の変化と思考停止の危険性


だからこそ、この本からは示唆が得られます。

小説の物語では、全てをコロナなどの外部環境のせいにしてしまい、思考停止になり百貨店や市場環境の現状を直視することはありませんでした。

現実を受け入れられないまま、ではどうすればいいのかを考えることはされず、メインバンクからの融資が受けられず資金繰りが急速に悪化しました。数ヵ月後に倒産が現実化するという状態にまでいってしまったのです。


教訓として得られること


現状把握と変化という文脈で、この本から得られる教訓は次のようなものです。

  • 自分たちの状況を冷静に客観的に評価する

  • どんな優れたビジネスモデルも栄枯盛衰が起こる

  • たとえ今は成功していても胡座をかかない。慢心や驕りの気持ちを捨て、うまくいっている時こそ次を見据える

  • 何かを始める際にはあらかじめ撤退基準を決めておき、撤退のシュミレーションまでやっておく

  • リーダーは 「泣いて馬謖を斬る」 をできるかどうか

では、教訓として挙げた5つについて、具体的なビジネスへの例に当てはめてさらに掘り下げていきましょう。

現状認識への客観的な評価


ビジネスの世界では、市場の動向や消費者のニーズは常に変化しています。

ある商品が売れ行き好調でも、それが永遠に続くわけではありません。

自社の商品ラインナップや販売戦略を定期的に評価し、必要に応じて素早く修正することが必要です。

たとえばスマートフォン市場において、新しい機能やデザインが次々と登場する中で、自社の製品が市場でどのように受け入れられているかを正確に見極めることが重要です。

消費者の興味が大画面やカメラの性能から、軽さ、レトロなデザイン、折りたたみスマホへの回帰といった兆しが見られる場合、本当に今までの開発や改善の方向性でいいのかは判断が求められます。

栄枯盛衰が起こるビジネスモデル


栄枯盛衰については、かつては繁栄していたビデオレンタル業界が、デジタルストリーミングサービスの台頭により衰退したケースが当てはまります。

他にはファストファッション業界も、消費者の環境意識の高まりや持続可能なファッションへの関心の高まりによって、変化の波に直面しています。かつて流行の先端を走っていた企業も、今では持続可能性やエシカルな生産方法への転換を迫られているわけです。

業界や市場は常に変化しており、一度成功したビジネスモデルであっても、時代の変化と共にその有効性を失います。栄枯盛衰が起こるのがビジネスの世界における真実なのです。

成功している今だからこそ次を見据えた布石


1つのモデルが市場で成功を収めたとしても、その成功に満足してはいけません。技術は日進月歩で進化し、競合他社も似たような製品を市場に投入してきます。

たとえば、IT サービス業界では、現在のサービスが市場で成功していても、新しい技術の登場や競合他社の動向に常に注意を払い、将来的な変化に備える必要があります。AI などの技術進歩によって、顧客ニーズも変わってくるため、新たなサービスや製品の開発が不可欠でしょう。

成功している今だからこそ、次の市場ニーズを見据え、継続的な製品開発に注力することが大事です。

撤退基準の設定


たとえば、飲食店を展開する場合、あらかじめ決めた期間内の売上目標、集客数やリピート客数、店舗運営オペレーションの仕組み化など成功基準を設定しておくことが大切です。

これらの基準に達しなかった場合の撤退計画も含めて準備をしておくことで、ある程度のリスク管理ができます。過度な楽観論や現実に目を背けた事業継続はリソースの浪費につながるため、明確な基準を持つことが重要です。

泣いて馬謖を斬れるリーダーシップ


リーダーは、困難な決断を下すことが求められます。

たとえば、業績不振が続き愛着はあるものの今後の収益性のない事業部を閉鎖する、新製品開発プロジェクトが計画通り進まない場合は中止するなどの決断を誰かが下す必要があります。感情に流されず、長期的な視点で組織の利益を最優先に考えることがリーダーには問われます。

このような決断は組織全体のために必要なことであり、リーダーには時として 「泣いて馬謖を斬る」 という覚悟と判断力が求められます。起こってしまった失敗はそれを受け入れ、次のステップに進む勇気も必要です。


まとめ


今回は、日本ゲートウェイ (楡周平) という本を取り上げ、読んで考えさせられたことをご紹介しました。

最後に、現状把握と変化をすることの重要性という切り口でポイントをまとめておきます。

  • 自分たちの状況を冷静に客観的に評価する

  • どんな優れたビジネスモデルも栄枯盛衰が起こる

  • たとえ今は成功していても、その成功に胡座をかかない (慢心や驕りの気持ちを捨てる) 。うまくいっている時こそ次を見据える

  • 何かを始める際にはあらかじめ撤退基準を決めておき、撤退のシュミレーションまでやっておく

  • リーダーは 「泣いて馬謖を斬る」 をできるかどうか



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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。