投稿日 2024/02/19

ユニクロ VOICE PAY 。双方向コミュニケーションからのブランディング術

#マーケティング #マーケティングリサーチ #ブランド

商品やサービスを単に売るだけでは強力なブランドは生まれません。では、ブランドをつくるカギはどこにあるのでしょうか?

今回はユニクロの VOICE PAY というキャンペーンから、ブランド構築の秘訣を探ります。ぜひ一緒に学びを深めていきませんか?

ユニクロ 「VOICE PAY」 イベント


出典: ITmedia

ユニクロがおもしろい無料配布キャンペーンをやっていました。

2023年発売の 「フリース T シャツ」 (1990円) を試着し、特設レジで 「着た感想」 を伝えると無料でゲットできるという期間限定イベントです。この仕組みは 「VOICE PAY」 というもので、利用客の感想が支払い代わりになるわけです。

サンプル配布とリサーチが一体となった仕掛け


このキャンペーンの特徴は、単にサンプルを無料で配って終わっていない点にあります。商品がお客さんにどのように捉えられ、受け入れられているかを理解する 「マーケティングリサーチ」 も兼ねています。

ユニクロは実際にシャツを着てみたお客さんの声を直接聞くことで、商品開発やマーケティングに活かせる情報を得られます。

ユニークな質問によるインスピレーションの促進


着用の感想を訊く質問はアンケートでありがちなものではなく、インスピレーションをかき立てる問いになっていておもしろいです。

具体的には、

  • フリース T シャツの着心地を 「擬音」 であらわすと? (例: フワフワ) 

  • 着心地を 「動物」 に例えると?3つお答えください

  • 今年のフリース、何が違う?

  • フリース T シャツで思い浮かぶ単語を3個答えてください

  • フリース T シャツに 「キャッチコピー」 をつけるなら? (例: 全米が泣いた) 

普段は訊かれないような質問にすることで、自分の感じたことをより創造的かつ具体的な言葉で表現することが促されます。お客さんからのより深い感想を引き出すことが期待できます。

アンケート回答のイベント化


出典: ITmedia

アンケートといえば紙用紙やアプリへの入力が一般的ですが、ユニクロの VOICE PAY のキャンペーンでは、マイクと画面を設置した特設ブースで回答する形をとっています。

イベントとして感想を言う体験の中に、ちょっとした非日常感が生まれます。お客さんが質問に答える行為自体を楽しめるような企画になっています。


学べること


ではユニクロの VOICE PAY の事例から、学べることを掘り下げていきましょう。

ブランド構築の観点で学びがあります。

ブランドとは


あらためてブランドとは何でしょうか?

結論から言うと、ブランドとは 「お客さんの好ましい感情が伴った商品やサービス、または企業」 です。

ここで言う好ましい感情とは、好き、共感、満足感、誇り、憧れ、応援したいという気持ちです。こうした気持ちが深いほど強いブランドです。

ブランドは良いユーザー体験が起点となってできます。商品やサービスの体験をし、その時に良い感情が生まれ、商品・サービスへの価値イメージが形成され、結果としてお客さんの頭の中でブランドができるという流れです。

マーケティングにおいて重要なのは、お客さんとの接点 (タッチポイント) においていかにユーザー体験を充実させられるかです。

VOICE PAY というブランディング


ここまでの文脈から、ユニクロの VOICE PAY の仕組みはブランディングの一環と見ることができます。

単なるフリース T シャツの無料配布キャンペーンとはせず、試着の先にユニークな体験を提供しました。試しに着てみて、その場ですぐに特設ブースに行き、普段は考えないようなユニークな質問から答え (感想) を実際に声に出すまでの一連の体験は、お客さんに強い印象を残したことでしょう。

お祭り感のある非日常的なイベント感から楽しいという気持ちが呼び起こされ、フリースやユニクロに対するポジティブな感情、価値認識が生まれます。

顧客接点での双方向性


ユニクロの VOICE PAY で注目したいのは、顧客接点での 「双方向性」 を取り入れた仕組みになっていたことです。

一方通行のコミュニケーションではなく、お客さんからの声を集めることで、お客さんとの対話を実現しています。

双方向のコミュニケーションは、お客さんが商品や企業に対してより深く関わる機会をつくります。ブランドへの親近感や愛着を高めることにつながります。

また、実際のお客さんの声はお客さんのことを理解するだけで終わらず、製品やサービス、マーケティングにも活かせるでしょう。よりお客さんの文脈や望みに合った提案をすることができます。

ユニクロの VOICY PAY のような顧客接点での双方向性を持つ施策は、お客さんからのエンゲージメント (心理的なユニクロへのつながり感) を強め、長く愛されるような顧客関係を築くための役割を果たします。


まとめ


今回はユニクロの VOICE PAY を取り上げ、学べることを見てきました。

最後に学びのポイントをまとめておきます。

  • ブランドとは 「お客さんの好ましい感情が伴った商品やサービス、または企業」 。好ましい感情とは、好き、共感、満足感、誇り、憧れ、応援したいという気持ち。こうした気持ちが深いほど強いブランド

  • ブランドは良いユーザー体験が起点となってつくられる。商品やサービスの体験をし、ポジティブな感情が生まれ、価値イメージが形成されることで、お客さんの頭の中にブランドができる

  • お客さんからの直接的な声を取り入れるなど、一方通行ではなく双方向のコミュニケーションによって、商品や企業への親近感や愛着を高められ、長期的な顧客関係を築くことにつながる


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。