投稿日 2024/03/01

CRAFT MISO 生糀。顧客理解から価値提案と価値体験。お客さんの心をつかむための step by step

#マーケティング #顧客理解 #価値提案

マーケティングの成功は、深い顧客理解から始まります。

ただし、お客さんの理解だけでは、成功へはまだ道半ばです。というのも顧客理解の後には、価値提案と実際に価値を実感してもらうところまでが大事だからです。

今回はユニークな味噌の事例から、マーケティングのプロセスに沿ってお客さんの心をつかむ秘訣を紐解きます。

新ジャンルのクラフト味噌



ご紹介したいのは、クラフト味噌という味噌の新しいジャンルです。

長野県にあるひかり味噌の 「CRAFT MISO 生糀 (なまこうじ) 」 は、減塩・無添加で味噌をそのまま、ドレッシング感覚のように食べられる味噌です。

ターゲットとしているお客さんは、味噌へのなじみが少ないエントリー層、20 ~ 30代の若年層です。

味噌のメインユーザーは50 ~ 60代に対して、「CRAFT MISO 生糀」 は、初めて味噌を買う人たちや、子どもができて料理に悩んでいる人たちといった20 ~ 40代前半を 「味噌のエントリー層」 と捉え、この層にアプローチしています。

ひかり味噌のエントリー層への調査からわかったのは、味噌を買っても 「使い切れないこと」 や 「味噌汁以外の使い道がわからない」 といった人が多いことでした。そこで、味噌汁以外の食べ方をメインにした味噌を考え、そのまま食べてもおいしい味噌というコンセプトで生まれたのが、「CRAFT MISO 生糀」 です。


成功するマーケティングのプロセス


ではクラフト味噌から、マーケティングに学べることを掘り下げていきましょう。

注目したいのは、以下のような地道なマーケティングプロセスです。

  • これまでの商品への敷居の高さや使い方がわからないといった 「消費者の不」 を見出した
  • 新ジャンルとして単に目新しさだけではなく、商品の魅力や具体的な使い方までを価値として提案し、これなら自分も使えそう・使ってみたいと思ってもらう
  • 提案して終わりではなく、実際の利用シーンに足を運びお客さんに使ってもらい、価値を体験してもらうところまでをやる

では順番に詳しく見ていきましょう。

消費者の 「不」 の見出し


ひかり味噌は、調査から味噌に対する 「消費者の不」 を明確に見出しました。

味噌に馴染みのないエントリー層の消費者は、味噌を買ったものの、味噌汁以外への使い道がわからなかったり、味噌を使い切れず賞味期限を過ぎてしまうという、味噌への必ずしも良いとは言えないイメージや経験を持っていました。

このような味噌への心理的・物理的なハードルの高さが、新しい顧客層が増えることを妨げていたという状況です。

価値提案


そこで、ひかり味噌は目新しい製品を市場に投入するだけではなく、その商品の魅力や具体的な使い方を価値として提案しました。

減塩・無添加で、そのまま食べられること、ドレッシング感覚でサラダに使ったり、トーストにもバターのように使えるという様々な利用用途を具体的に見せたことで、消費者に 「これなら自分も使える」 「一度食べてみたい」 と思わせるきっかけになりました。

商品価値の体験


ひかり味噌の事例が良いと思うのは、提案した食べ方や商品価値を実際の利用シーンに自ら足を運び、見込み客の人たちに体験してもらうところまでやっていることです。

たとえば、ひかり味噌はキャンプ場でのサンプリングやイベント出店を通じて、実際に 「CRAFT MISO 生糀」 をその場で使って食べてもらう機会を積極的につくりました。

単なる広告や宣伝よりも強力で、消費者は商品の存在やその特徴を知るだけではなく、実際に口にすることで体験価値を直接的に得ることができます。実際に商品を使ってみることで、その便利さや美味しさを実感し、商品やメーカーに対する好印象が生まれるでしょう。

マーケティングのプロセス


それでは最後に、今回の事例から学べることを整理しておきましょう。

マーケティングで重要なのは、次のプロセスで進めることです。

  • ターゲット顧客を明確にする

  • お客さんの普段のやっている行動、やっていない行為、その時の心理を読み解き、奥にある望みや不満、何に価値を見出しているかの価値観までお客さんのことを深く理解する

  • その顧客理解から見出した本当の望みに応える価値を定義し、お客さんの文脈に沿った価値を提案する

  • 見せたり言うだけではなく、商品を使って得られる価値を実際の体験を通じて実感してもらう

こうしたプロセスを1つずつステップバイステップで展開していくことで、今まではお客さんではなかった人 (または企業) でも、マーケティングからお客さんの心をつかみ、顧客関係を築いていけるのです。

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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。