投稿日 2025/08/31

米国コストコの富裕層戦略。顧客を中心に置くマーケティング 4P 戦略

#マーケティング #ブランディング #マーケティング4P

自社のブランドは消費者にどのように映っているでしょうか?

人々の価値観が多様化する中、既存のイメージにとどまっていては新たな市場を逃してしまうかもしれません。

アメリカのコストコは、これまでの 「安くまとめ買いができる店」 という印象だけにとどまらず、高級品を取り扱うことで新たなブランド価値をつくりだそうとしています。

マーケティングの基本である 4P をどのように連動させれば、一貫性のあるブランド展開ができるのか――。コストコの事例から、ビジネスに活かせるヒントを紐解きます。

米国コストコが高額商品にも注力


出典: FASTCOMPANY

アメリカのコストコは、倉庫型会員制ディスカウントストアという立ち位置で長らく支持されてきました。

コストコへのイメージは、家庭用日用品や食品を大量に買い込み、まとめ買いでお得になるというもので定着しています。

しかし近年、アメリカのコストコでは、金やプラチナの延べ棒を始め、ロレックスの時計や10カラットのダイヤモンド、シャンパンのドン・ペリニヨンといった高級品を販売しています (参考情報) 。日用品のお得なまとめ買いという買い物に加え、ちょっと意外な高級商品を、リーズナブルに買える場所として、アメリカのコストコは新たな機会を消費者にもたらします。

アメリカでは上位 10% の高所得者が国内支出の半分を占めるほど富裕層の存在感が高まっていることも、コストコが高額品をそろえて富裕層を狙う背景にあります。

コストコは安売り店としてだけではなく、高級品もお得に買える店という新たな一面を打ち出すことによって、ブランドイメージの幅を広げてようとしています。

マーケティング 4P で見るコストコの戦略


では、アメリカのコストコの事例から学べることを見ていきましょう。

コストコが高級品もお店で取り扱い始めたという事例からの示唆は、マーケティングの 4P を連動させ、全体で整合性をとりながら一貫性を持たせている点です。

Product (製品) 、Price (価格) 、Promotion (広告・販促) 、Place (流通・販売チャネル) の各要素においてです。ではマーケティング 4P を順番に Product から見ていきましょう。

Product [製品]

アメリカのコストコが売っているものは、日用品や食品を大量パッケージで売るディスカウント商品だけではありません。

先ほど見たように、高級商品です。ロレックスの時計、高カラットのダイヤモンド、シャンパンのドン・ペリニヨン、金やプラチナの延べ棒などです。これらをコストコの店内の一画に並べ、来店客へのサプライズを演出します。

コストコの買い物体験でできる "宝探し感覚" をさらに刺激し、これまでのコストコのイメージにプラスして、おもしろくて高額商品も手に入るお店という新しいブランドイメージをコストコは打ち出しています。

Price [価格]

高級ブランドの時計や宝石、金やプラチナなどの高額商品を扱うと聞くと、コストコは手の出ない値段の高いお店になると消費者から思われるかもしれません。しかしコストコはお得感も大切にします。

富裕層向け商品でも割安感をつくり、ロレックスの時計や高級シャンパンなどでも市場価格よりもお値打ち価格にすることによって、コストコへの高いものが比較的お手頃に買えるというイメージを醸成しようとしています。富裕層はもちろん、ちょっと背伸びをしたい中間層にも訴求できます。

また、コストコの従来のディスカウント感も継続します。食品や日用品などのまとめ買いによる低価格は維持し、今までの低価格と新たな高級路線が共存する状態をつくることを目指します。

Promotion [プロモーション]

ブランドイメージを消費者に訴求するためには、どれだけ優れた製品や価格設定があっても、マーケティングコミュニケーションによってしっかりと相手に伝えなければ効果は限定的です。

アメリカのコストコとは、新しく高級品も手に入るという意外性をアピールするために、コストコの公式サイトやメールマガジン、店頭ポスターなどで高級アイテムの存在を知らせ、SNS や口コミにも広げ話題性を高めています。

また、コストコ特有の 「ここでしか買えないかもしれない」 という希少性を打ち出し、宝探し感覚を伴ういつ行っても新しい発見があるお店というワクワク感を育んでいます。

こうしたプロモーション活動からのコミュニケーションによって、コストコへのイメージをただ安いものが大量に買えるだけではなく、思わぬ掘り出し物がある、高額商品ももしかしたらお得に手に入るかもしれない期待感を醸成させています。

Place [流通・販売チャネル]

マーケティング 4P の最後の P は Place です。コストコは会員制の倉庫型店舗という独自の販売チャネルを持ち、ブランドイメージを形成する大きな要因にもなっています。

コストコの独特の倉庫の雰囲気を活かした店舗では、巨大な倉庫内で商品を並べるだけではありません。高級品を目立つ場所にディスプレイする工夫を行い、日用品や食品などを探しながら、ふと目に入る高額商品を見つけるなど、他の一般的なスーパーにはない買い物体験を提供します。

新たに富裕層にとってはお店での宝探しのような、他にはない高額商品の買い物体験ができるようにし、また、中間層にとっては少し背伸びをする非日常的な買い物ができる場所というイメージを加えようとしているわけです。

マーケティング 4P の Place において、コストコが高額商品も楽しくワクワク感のある買い物ができるというイメージをつくるために、コストコでは Product, Price, Promotion が連動します。

顧客起点のマーケティング 4P の統合によるブランディング


ここまでマーケティング 4P に沿って見てきました。アメリカのコストコは従来のイメージを保ちつつ、高級路線の要素を加えることでブランドイメージの幅を拡大し、新しい顧客層を取り込もうとしています。

では最後のパートでは、マーケティング 4P を統合させるポイントを整理します。

中心に注力顧客を置く

マーケティング 4P の前提として、注力するお客さんが明確に設定され中心に置かれていることが大事です。


コストコの場合は、これまでの注力顧客であった、日用品を大量にお得に買いたい大衆層に加え、消費意欲の高い富裕層やプチ贅沢を楽しみたい中間層といった複数の層を意識しながらも、特に富裕層向けの商品を拡充している点が今回の事例です。

ビジネス活動において注力顧客を定義することで、マーケティング 4P に紐づく商品開発 (Product) 、価格設定 (Price) 、プロモーションの内容 (Promotion) 、売場づくり (Place) に一本の軸が通ります。

4P で一貫性を保つ

マーケティング 4P で一貫性があることが大切です。4P の要素を組み合わせるとき、バラバラに課題を対処するのではなく、全体として整合性は取れているかを意識するといいです。

今回のコストコの場合は、高級商品を扱うなら、それに合った売場の演出やプロモーションが必要です。

アメリカのコストコが新しく高級路線の商品も打ち出す一方で、低価格商品のまとめ買いメリットもキープするというバランスが求められます。どちらか一方に振り切らず、来店客が 「日常使いの大量購入」 でも 「特別な日の贈り物購入」 のいずれの顧客文脈でも利用しやすいお店としています。

コアバリューとの整合性をとる

企業や商品にはそれぞれのコアバリュー (中核的な顧客価値) があります。

コストコなら、商品をできるだけ安く大量に買えてお得感があり、広大な倉庫型店舗でテーマパークで買い物をするようなワクワク感が DNA のように根底にあることでしょう。

コストコが新たに高級品を扱うと聞くと、従来のコアバリューと矛盾するように思えるかもしれません。しかしコストコでは、高額商品も含めて割安に提供するという姿勢が全体で貫かれており、高価格帯の商品はコスパが悪いという図式にならないよう気を配っています。

コストコでは高いものを安く買えるといったイメージをブラさないようにすることで、コアバリューをむしろ進化させ拡張させているわけです。

アメリカのコストコからは、ブランドイメージを訴求するために、注力顧客を起点にマーケティングの 4P を連動させ、全体で一貫性を持った取り組みを行う重要性を学べます。

まとめ


今回は、アメリカのコストコの事例を取り上げ、学べることを見てきました。

最後にポイントをまとめておきます。

  • 注力顧客を中心に据える。出発点として明確なターゲット顧客を設定することで、商品開発、価格設定、プロモーション内容、売場づくりすべてに一貫した軸が通る

  • マーケティング 4P の一貫性を保つ。製品 (Product) 、価格 (Price) 、プロモーション (Promotion) 、流通 (Place) の各要素をバラバラに扱うのではなく、ブランドの方向性をそろえる

  • コアバリューとの整合性を維持する。ブランドの中核的な顧客価値を基盤としつつ、新たな要素を加える場合でもコアバリューを損なわない進化と拡張をさせる


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多田 翼 (運営者)

書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。マーケティングおよびマーケティングリサーチのプロフェッショナル。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

前職の Google ではシニアマネージャーとしてユーザーインサイトや広告効果測定、リサーチ開発に注力し、複数のグローバルのプロジェクトに参画。Google 以前はマーケティングリサーチ会社にて、クライアントのマーケティング支援に取り組むとともに、新規事業の立ち上げや消費者パネルの刷新をリードした。独立後も培った経験と洞察力で、クライアントにソリューションを提供している。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。