2018/08/02

イノベーション理論と働かないアリから考える、余力を持っておくことの大切さ


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何かを新しく挑戦するために、余力を持っておくことの大切さを考えます。イノベーション理論と、働かないアリから学べることです。

エントリー内容です。

  • イノベーション理論の 「両利きの経営」
  •  「知の探索」 と 「知の深化」 をバランスよく
  • 働かないアリからの示唆


イノベーション理論の 「両利きの経営」


ビジネススクールでは学べない世界最先端の経営学 という本に、「両利きの経営」 という考え方が紹介されています。



両利きの経営とは、まるで右手と左手が上手に使える人のように、「知の探索」 と 「知の深化」 について高い次元でバランスを取る経営です。世界の経営学で研究されているイノベーション理論の基礎で、英語では Ambidexterity と表現されます。

知の探索と知の深化は、それぞれ以下の通りです。

  • 知の探索:企業が知の範囲を広げるために新しい知を探す行動。経営学では Exploration と呼ぶ
  • 知の深化:すでに持っている知識に対して理解を深め、必要に応じて改良を重ねること。経営学では Exploitation と呼ぶ

イノベーションのきっかけになる 「知」 を獲得するために、探索という対象を広げ、深化という深掘りをするという2つの方向性です。


 「知の探索」 と 「知の深化」 をバランスよく


経営学での研究結果で示されているのは、知の探索と知の深化がどちらかに偏りすぎてはいけなく、2つのバランスが大切であることです。

また、研究から企業組織は中長期的には 「知の深化」 に注力し、「知の探索」 は後回しになる傾向があるようです。「知の探索」 は労力のわりに、成果がすぐには出にくいものです。企業は新しい知を探すよりも、すでにある知を改善し深めるという 「知の深化」 に本質的に流れるのです。

事業が成功するほど知の探索を怠りがちになります。結果、中長期的なイノベーションが停滞するというリスクが企業組織には内在しています。


 「両利きの経営」 は個人にも当てはまる


両利きの経営の考え方は、個人にも示唆があります。

  •  「知の探索」 と 「知の深化」 をいかにバランスよく行なうか
  • 本質的には知の深化に偏る傾向がある

例えば、自分の知識や専門能力を高める場合、有効なのは今ある専門分野を強化することです。これは両利きの経営でいう 「知の深化」 にあたります。

ただし、今ある能力を高めるだけでは、専門性は深まっても新しくは広がりません。新しい知識や技術のためには、既存領域ではない範囲に視野を広げる必要があります。これは 「知の探索」 です。


知の探索に必要なこと (働かないアリからの示唆)


では、知の探索のためには、何が必要になるのでしょうか?

新しいことに知的好奇心があるだけではなく、余力があることです。


知の探索には余力が大切


知の探索とは、新しく挑戦することであり、リスクを取って自分が変化をすることです。新しいことへの挑戦のためには、気持ちの上でも、自分の時間やエネルギーに余裕が必要です。

知の探索は労力のわりに、成果がすぐには表れるとは限りません。余力という自分が投下できるリソースのバッファーがあれば、新しいことへの探索に取り組みやすいです。


 「働かないアリ」 の役割


ここからは、「働かないアリ」 について見ていきます。

アリの生態系には、余力の持ち方に示唆があります。

働かないアリに意義がある という本には、実はアリの7割はいつも休んでいて、1割は一生働かないということが書かれています。組織として見たアリの実態を興味深く読める本です。



巣の中のアリが、全員で一斉に働くのではなく、あえて非効率を保っています。理由はバッファーを持っておくためです。

人間の会社で例えると、働かないアリが存在しない状態とは、日常業務で全メンバーがフル稼働している状況です。それ以上は仕事が増えなければよいですが、もし突発的な急ぎの仕事が入ると逼迫し、組織がまわらなくなります。

働かないメンバーがいれば、急な案件が入ってきても彼ら・彼女らが対応できます。

7割のアリはいつも休んでいて、1割は一生働かないということは、普段は3割だけでまわっている組織です。どんなに逼迫した状況でも、9割のアリたちで支えるのがアリの世界です。

なお、働かないアリについては、別のエントリーで書いています。よろしければ、ぜひご覧ください。



働かないアリからの示唆


働かないアリからの示唆は、新しいことへの挑戦という知の探索のためには、どんなに忙しくても 10% の余力は持っておくことです。

さらに言えば、自分の稼働状況が 90% の状態は緊急時のみとし、普段の稼働はもっと下げておく、つまり、余力は 10% よりも大きくしておくとよいです。感覚的には、余力は 20% ~ 30% 程度を確保しておくべきだと考えます。


最後に


今回は、イノベーション理論である 「両利きの経営」 と、アリの組織に一定数存在する 「働かないアリ」 から、人間個人への示唆を考えました。

余力とは、精神的にも肉体的にも余裕を持っておくことであり、「遊び」 です。遊び心があることによって、自分の成長やイノベーションにつながります。




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書いている人 (多田 翼)

ベンチャーから一部上場企業の経営・事業戦略を支援。マーケティング、コンサルティング・アドバイザー・メンター、プロダクトマネジメント。前職は Google でシニアマーケティングリサーチマネージャー、現在は独立 (詳細は LinkedIn または Facebook をご覧ください) 。

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1981年 (昭和56年) 生まれ。名古屋出身、学生時代は京都。現在は東京23区内に在住。気分転換は毎朝の1時間のランニング。