投稿日 2018/08/30

書評: the four GAFA 四騎士が創り変えた世界 (スコット・ギャロウェイ) 。人間の本能 (脳・心・性器) に訴える GAFA


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the four GAFA 四騎士が創り変えた世界 という本をご紹介します。



エントリー内容です。

  • 本書の内容
  • 人間の本能に訴える四騎士
  • 思ったこと (2つ)


本書の内容


以下は、本書の内容紹介からの引用です。

Google 、Apple 、Facebook 、Amazon ─ GAFA

GAFA が創り変えた世界の姿とは。この激変を予言した著名教授が断言する、次の10年を支配するルールとは。

米国発、22カ国で続々刊行のベストセラーがついに日本上陸!


人間の本能に訴える四騎士


この本が興味深く読めたのは、グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンの四騎士について、著者の独特の視点で分析されていることです。人間の本能に立ち返り、四騎士の本質は何かです。

以下は、本書からの引用です。

進化心理学の見地からすると、成功するビジネスはどれも、体の3つの部位のどれかに訴えかけるものだ。

その3つとは脳、心、性器である。これらはそれぞれ人間の生き残り戦略の違う面を支えている。会社の指導者は、自分たちがどの領域にいるか ─ どの器官を刺激しているか ─ を知り、それに沿って戦略を練る必要がある。

 (引用:the four GAFA 四騎士が創り変えた世界)

四騎士を 「脳」 「心」 「性器」 の視点で当てはめると、それぞれ以下のようになります。


グーグル


  • 脳。覚えていないことも検索で引っ張り出せる。外部脳としての働き
  • あらゆる質問に答えてくれる
  • 私たちの思考はグーグルに操られ、やがて支配される


アマゾン


  • 脳、さらには指 (欲しいものを手に入れる) 。狩猟と採集の本能に訴えかける
  • 楽をしたいという私たちの本能を、存分に満たしてくれる
  • 気付けば、私たちはアマゾンなしの生活は考えられない


フェイスブック


  • 心。自分と友人や家族を結びつける。人と人をつなげ、コミュニティ形成を促す
  • 自分の居場所を提供し、拠り所から自分の生存確率を上げてくれると本能的に思える
  • 認められたいという私たちの渇望を利用し、人間関係のすべてを晒させる


アップル


  • 私たちは美に惹かれる。性的な魅力や演出を手に入れたい気持ちを満たしてくれる
  • GAFA の中で唯一、生殖本能にアピールし性器に訴えかける

著者の見立ては、四騎士の中でアップルが22世紀まで存続する可能性が最も高いことです。


思ったこと (2つ)


ここからは思ったことです。


アップルの独特な存在感


1つめは、GAFA の中でのアップルの独特な存在感です。

具体的には、以下です。

  • アップルは iPhone などのデバイスを販売。他の3つはサービス事業をメインにしている
  • GAFA の中でアップルは最もブランドの確立ができている。品質の高い高級ブランドのポジションを得ている。グーグル・フェイスブック・アマゾンには高級なイメージはなく、無料・便利・安い・早いのイメージを持たれている
  • アップル以外の3社は、ユーザーデータをマネタイズ。アップルはジョブズがつくりたかったデバイスでマネタイズ


GAFA は何を代替したのか


本書を読みながら考えたのは、GAFA がそれぞれ既存の何を代替したかです。まとめると、以下です。

  • Google (検索) :調べる手段を代替。辞典や図鑑、図書館、公共施設で調べていたことがネット検索で可能にした
  • Apple (スマートフォン) :ポケットに入りどこでも持ち運べるコンピューターを一般消費者に提供した。それまでは iPhone のような高性能の端末は誰もが持つことはなかった
  • Facebook (ソーシャルメディア) :友人や知人の近況を知る。以前は例えば同窓会で発生していた会話が日常的に発生。ニュースや動画も流れ、テレビや新聞の代替に
  • Amazon (EC サイト) :様々なお店に行かなくても、アマゾンだけで日常生活の買いものは十分に満たせる。小売を代替

GAFA に代替されたものは、今から考えるとどれも決して便利とは言えませんでした。しかし、GAFA 以前はそれが当たり前でした。

GAFA 後は、グーグル検索、iPhone 、Facebook でのコミュニケーション、アマゾンでの買いものが当たり前になりました。

GAFA が変えたのは、当時の当たり前を、その時にはなかった 「未来の当たり前」 にしたことです。


最後に


本書での大きなテーマは、次の3つです。

  • GAFA は、なぜこれほどの力を得たのか
  • GAFA は世界をどのように支配し、どう創り変えたのか
  • GAFA が創り変えた世界で、私たちはどう生きるか

興味深く読めることの一つは、著者が GAFA を批判的に捉え、分析をしていることです。

例えば、GAFA について、次のような指摘をしています。

  • メディアで最も実入りのいい検索分野で 90% のシェアを占めながら、せっせと訴訟とロビー活動に励み、独占禁止法の適用を逃れている広告配信プラットフォーム
  • 国内のテロリズムについての情報を連邦政府の捜査にも提供せず、その思想に共鳴する宗教じみた熱狂的ファンに支えられるコンピュータ企業
  • あなたの子どもたちの何千枚もの写真を分析し、携帯電話を盗聴器として活用し、その情報をフォーチュン 500 企業に売りつけるソーシャル・メディア企業
  • 売上税を払うのを拒否し、従業員の待遇が悪く、何万という仕事を消滅させながら、事業革新の神と崇められている小売業者

著者の独自の切り口で、GAFA をただ礼賛するだけでもなく、批判だけに終始することもなく、興味深く読める本です。



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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。