投稿日 2018/08/09

「消費者インサイトとは何か」 と 「インサイトをどう見い出すか」 を具体的に解説します


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マーケティングの 「消費者インサイト」 についてです。

エントリー内容です。

  • インサイトとは何か
  • インサイトではないもの
  • インサイトを見い出すために心がけること


インサイトとは何か


消費者インサイトとは一言で言えば、「人を動かす隠れた気持ち」 です。消費者自身も普段は意識していませんが、気付かされれば行動を起こす気持ちです。

これが私自身の消費者インサイトの定義です。

消費者インサイトのポイントは3つあります。

  • 隠れている
  • 行動につながる
  • 新しい発見がある

以下、それぞれについて補足です。


1. 隠れている


1つめは、インサイトは奥にあり隠れているということです。人が日頃は意識していない、自分自身でも気づいていない無意識の領域にある気持ちです。表面的な行動や振る舞いの奥にあります。


2. 行動につながる


2つめは、訴求され生活者がその気持ちに気づけば、行動につながることです。

マーケティングの文脈で言えば、インサイトという心の琴線に触れられれば、購入などの行動が喚起されます。再度買ってくれるなど、インサイトは自分たちの商品やブランドにポジティブな影響を与える源泉になります。

消費者インサイトは、ビジネスにつながることが重要です。単に消費者の本音というだけでは、マーケティングの文脈ではインサイトとは言えません。


3. 新しい発見がある


3つめは、ビジネス側にとって新しい発見があるかです。インサイトのことを 「おもしろい」 と思えるかどうかです。

インサイトという人に隠れた気持ちには、その新しさやこれまでにない切り口があるか、発見、新しい発想や施策に発展するかです。


インサイトではないもの


消費者インサイトとは何かを理解するために、「インサイトでないもの」 と併せて考えると理解が深まります。具体的には次の3つです。

  • ニーズではない
  • 不満ではない
  • 建前や意見・考えではない

以下、それぞれをご説明します。


1. ニーズではない


1つめは 「インサイト」 と 「ニーズ」 との区別です。

インサイトとニーズの共通点は、人の気持ちです。どちらも、人の行動につながります。

一方で違いがあります。ニーズは、本人が明確に認識し、すでに顕在化された欲求です。インサイトは、普段は隠れて意識されていない奥にある気持ちです。


2. 不満ではない


2つめは、インサイトは顕在化した不満ではないことです。人がすでに意識できている不便に思う気持ちも、インサイトではありません。

すでに日頃から感じている不満はインサイトではなく、人から言われて初めて 「そう言われてみれば不満かも」 と、無意識だった感情が意識されるレベルになるものがインサイトです。


3. 建前や意見・考えではない


3つめは、インサイトは表向きの建前や意見・考えではありません。

例えば、アンケート調査で回答者が書いた答えそのもの、インタビュー調査で調査対象者が直接語ったことは、インサイトではないです。インタビューやアンケートで聞かれ、人が考えて話したり記述できる内容は、無意識のレベルではないためです。

インサイトは、アンケート回答情報やインタビューでの発言から、その背後にある隠れた気持ちとして、ビジネス側が見い出すものです。


インサイトを見い出すために心がけること


ここまでは、消費者インサイトは何かを見てきました。

ここからは、インサイトをどのように見い出すかについて考えます。具体的には、次の3つです。

  • インサイトは主体的に見い出すもの
  • 普段から 「消費者インサイトは何か」 を意識する
  • 建前と本音を区別する


1. インサイトは主体的に見い出すもの


インサイトを得るために求められる姿勢は、受け身ではなく主体的な態度です。インサイトは、相手から直接教えてもらうのではなく、能動的に自分たちで見い出すものだからです。

インサイトは新しくつくるというよりも、すでに生活者が奥の気持ちとして持っているものを発見する、見つけ出すことです。

ただし、インサイトはすんなりと出てくるものではありません。

調査から発言や行動などのファクトを知り、分析、気づきや考察を統合して、インサイトを見い出します。調査をすればあとは自ずと出てくるものではなく、自分たちで考え抜いて初めて得ることができます。

私の経験から、インサイトを得る際の感覚は、ある瞬間に自分の目の前にパッと現れます。頭の中で色々と考え、ああでもないこうでもないと試行錯誤をした後に、突然降ってくるような感覚です。


2. 普段から 「消費者インサイトは何か」 を意識する


インサイトへの感覚を研ぎ澄ますために、普段から 「消費者インサイトは何か」 を意識するとよいです。

例えば、人気のお店や流行しているもの、ヒットした商品やサービスについて、なぜそうなのかを考える際に、「裏にある消費者インサイトは何か」 という視点で見てみます。売れる理由ではなく、買う理由という意識も大事です。


3. 建前と本音を区別する


消費者インサイトは、奥にある 「人を動かす隠れた気持ち」 です。

インサイトは時として、本人が気づいても他人には知られたくない気持ちという場合があります。インサイトが、人には言いたくない感情や欲望ということもあるからです。

こうした生々しい本音からインサイトを見い出すために、自分の中にある 「建前と本音」 を客観視し理解することが、普段からできるインサイトのトレーニングになります。

自分が言っていることと、やっていることや考え方・気持ちなどの、自分が抱える矛盾に気づくことです。自分の建前と本音に向き合います。


最後に


今回は、消費者インサイトについて取り上げました。

最後に、インサイトについて書かれた書籍で、おすすめの本を3冊ご紹介します。





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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

ブログ以外にマーケティングレターを毎週1万字で配信しています。音声配信は Podcast, Spotify, Amazon music, stand.fm からどうぞ。

名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。