投稿日 2018/08/10

ビジネスの企画書を戦略的につくる方法を、具体例で解説します


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ビジネスでの企画書の書き方についてです。戦略的な企画書のつくり方を考えます。

エントリー内容です。

  • 企画書がまとまらない理由
  • 戦略的な企画書のつくり方
  • 具体例で解説


企画書がまとまらない理由


例えば新規事業や新規プロジェクトなど、企画書をいざ書こうと思っても手が動かない、内容がまとまらないということはないでしょうか?

前提として、企画書のようなアウトプットは、無理やり頭から内容をひねり出すものではない、ということです。10分考えても手が進まない場合は、以下の2つを疑うといいでしょう。

  • 企画書の戦略が不十分
  • アウトプットのための情報収集が不十分

2つめの情報収集が足りないかどうかは、1つめに依存します。必要な情報の量と質は、アウトプットから逆算して決めます。アウトプット (ここでは企画書) のための戦略を立て、構造化し、描いたストーリーからです。


企画書の戦略とは何か


ここからは、企画書の戦略が不十分な場合に、具体的にどのような方法でつくればよいかをご説明します。先にやり方の全体像をご紹介し、その後に具体例で解説します。


[ステップ 1] 企画書の基本設計


企画書をつくるにあたって、企画書の基本設計をつくります。

  • 読み手:企画書の読み手は誰か。複数の関係者がいる場合は、その中で最も重要な読み手として1人に絞る
  • 知りたいこと:読み手が知りたいことは何か。すでにわかっていることは何か (前提情報や知識)
  • ゴールイメージ:企画書を読んだ後に期待する行動。知りたいことがわかれば、どんな行動を取ってもらいたいか
  • 期限:企画書はいつまでに必要か


[ステップ 2] 知りたいことを分解し 「問い」 にする


基本設計のゴールイメージを達成するために、知りたいことをさらに分解します。

具体的には、知りたいことを3つ設定したとすると、それぞれの知りたいことを2~5個の 「問い」 に分解します。


[ステップ 3] ストーリーに落とし込む


ゴールイメージに向かって分解した 「問い」 を構造化します。

設定した読み手にとって、どのような順番で 「問い」 と 「答え (または仮説) 」 を説明すれば、理解され納得でき、最終的には企画内容に共感してもらえるかです。そして、ゴールイメージである期待する行動を取ってもらえるかを考えます。


戦略的に企画書をつくる具体例


具体例で解説します。


1. 企画書の基本設計


新規事業を提案するケースで、以下のような基本設計だとします。

  • 読み手:所属部署の執行役員
  • 知りたいこと:なぜやりたいのか・やるべきなのか (why) 、何をやるのか (what) 、どのようにやるのか (how) 。企画している新規事業の概要は口頭で伝えたことはあるが詳細は知らない。部の業績はわかっている
  • ゴールイメージ:新規事業への取り組みを、会社として正式に承認する。予算と人をつける
  • 期限:企画書は2週間後の部会で提案プレゼンをする


2. 知りたいことを分解し 「問い」 にする


読み手が 「知りたいこと」 を、それぞれ次のように分解します。


なぜやりたいのか・やるべきなのか (why)

  • 何の問題を解決するのか
  • 新規事業のビジョンは何か。事業がつくり上げたい理想の世界観は何か
  • なぜ当社がその事業を取り組むのか。どのようなビジネスインパクトか


何をやるのか (what)

  • 新規事業のミッションは何か (ビジョンを実現するために自分たちは何をやるか)
  • やらないことは明確になっているか
  • 顧客と競合は誰か


どのようにやるのか (how)

  • 成功すると考える要因 (KSF: Key Success Factor) は何か。その根拠は何か
  • ビジネスモデルはどう描いているか (顧客への提供価値、価値の源泉、どこで収益を得るか)
  • スケジュールロードマップは何か
  • 必要な投資額は。収益化の目処はいつ頃か
  • 誰とやるのか (新規事業の立ち上げメンバー)


3. ストーリーに落とし込む


以上のそれぞれの 「問い」 に対して、自分たちの考える答え (または仮説) をセットにして1つのメッセージにします。

企画書をスライド形式でつくる場合は、1スライドで1メッセージを徹底します。

もし、1つの問いに対して2つの答えがある時は、あるいは、上記の問いよりさらに分解が必要な場合もスライドは2つに分けます。例えば、「顧客と競合は誰か」 の問いは、顧客と競合は別のスライドに分けることになるでしょう。

メッセージの並べ方は、必ずしも上記の why - what - how の通りでなくても構いません。また、例えば why の中のうち 「なぜ当社がその事業に取り組むのか」 は、あえて企画書の最後にもってくる考え方もあります。

ただし、あくまでメッセージを並べる判断基準は、相手が知りたい順番です。自分たちが言いたい順番ではありません。


まとめ


今回は、ビジネスで企画書をつくる時に、戦略的な方法をご紹介しました。

ポイントを一言で言えば 「急がば回れ」 です。

いきなりスライド作成をパソコンで始めるのではなく、できれば紙に戦略を書くことです。字が丁寧でなくても、他の人が見てわからない雑な書き方でも構いません。

一度、紙に自分の頭の内容を言語化、図解するだけで、その後のスライド作成の効率は上がり、質も圧倒的に良くなります。

最後に、今回のまとめです。

  • 企画書がまとまらない要因は、企画書の戦略が不十分、または、アウトプットのための情報収集が不十分
  • 企画書の戦略は、基本設計 (読み手・知りたいこと・期待する行動) 、知りたいことを 「問い」 に分解し、問いと答え (または仮説) をメッセージにする。ストーリーは自分が言いたい順番ではなく、相手が知りたい流れにする
  • いきなり企画書のスライド作成をパソコンで始めるのではなく、先に紙に戦略を書いてから。急がば回れ

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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。