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プロダクト開発についてです。
新規プロダクトを開発するにあたって、最初の顧客やユーザーへのインタビューについて考えます。
エバンジェリストやアーリーアダプターにコンタクトし、自分たちが想定している顧客課題を、インタビューからどうやって磨き込むかです。具体的な方法をご紹介します。
エントリー内容です。
- インタビュー相手を見極める条件
- 顧客課題インタビューのポイント (5つ)
- インタビューが有益だったかのチェックリスト
インタビュー相手を見極める条件
プロダクト開発初期で重要なのは、顧客課題の検証です。
自分たちが想定している顧客課題が、実際に顧客にとっても課題かどうかを検証します。
インタビュー相手は、誰でもいいわけではありません。大事なのは、想定顧客を見極め選ぶことです。初期ユーザーになってくれることが期待できる、エバンジェリストやアーリーアダプターです。
エバンジェリストカスタマーの特徴は、次の3つです。これらの条件を満たせば、インタビューに相応しい相手です。
- 課題を認知している。問題解決のために模索し、試行錯誤している
- 解決のための予算を確保し、使う権限を持っている
- 意思決定ができる。組織内外に影響力がある
顧客課題インタビューのポイント
起業の科学 - スタートアップサイエンス という本に、エバンジェリストへのインタビューのポイントが紹介されています。
自分たちが設定した、顧客が抱えているであろう問題仮説について、インタビューからどのように検証するかです。
インタビューのポイントは、5つです。
- インタビュー相手のことをよく知る
- 弟子になる
- 非言語コミュニケーションに注目する
- 自らインタビュアーになる
- インタビュー内容を分析する
以下、それぞれについてご説明します。
1. インタビュー相手のことをよく知る
インタビューでの質問と対話を通して、相手のことを理解します。表面的な理解だけではなく、相手が抱えている問題に寄り添い、共感します。
対話から、相手がエバンジェリストかどうかを判断することも重要です。以下の質問から具体的な情報が得られれば、エバンジェリストの可能性が高いです。
- 現状の問題を解決するために、どんな方法を使っているか
- その方法への不満なポイントはどこか
- この問題を解決できるなら、いくらの予算を確保できるか
- 問題が解決される方法がもし見つかれば、組織内で導入に動けるような立場か。組織外への情報共有も積極的にやってくれそうか
2. 弟子になる
相手のことを少しずつ理解でき、有益な情報が得られると思えば、その人の弟子になるくらいの気持ちでインタビューに臨みます。
本書で紹介されているのは、以下のやり方でインタビュー相手からの情報を掘り下げることです。
- 教えを請う
- 根掘り葉掘り聞く
- 自分の理解が正しいか確認する
- 話の中から新しい質問を見つける
4つのうち、2つめの根掘り葉掘り聞くために、いくつかのポイントが紹介されています。
- 未来ではなく 「今」 に注目する
- 抽象的ではなく、具体的に質問する
- 結果だけではなく、プロセスを知る
- 解決策ではなく、課題を尋ねる
1つめの 「未来ではなく今」 というのは、次のような質問です。
- 「今後どうしたいか」 より 「今どうしているか」
- 「こんな製品が出たらいくらまでお金を払えるか」 ではなく 「現在、この問題解決のためにいくら払っているか」
3. 非言語コミュニケーションに注目する
インタビュー相手の言葉だけではなく、相手の非言語からの情報にも注目します。
- 表情:真剣な表情か、問題や痛みを語る時の表情は切実か
- 仕草:インタビューに集中しているか、非協力的なボディーランゲージを見せていないか
- 態度:前のめりの態度をしてくれているか、他人事のような話し方をしていないか
4. 自らインタビュアーになる
インタビューの場面に立ち会うだけでも気づきや学びは多いです。さらに発見が多いのは、自分がインタビュアーになり直接相手と対話をすることです。
インタビュー対象者の立場になり、問題やニーズへの深い理解につながります。
顧客の言葉で問題や望みをストーリーで語れることは、インタビュー後のプロセスで必要になる人が欲しがるプロダクトを開発するための必要条件です。
5. インタビュー内容を分析する
インタビュー相手が語ったことから、自分たちが何をすべきかを考えるのは自分たち自身です。
想定顧客であるインタビュー相手に直接答えを求めてはいけません。答えを見い出すのはあくまで自分たちです。相手が気づいていない、まだ言語化できていない潜在的なことを、自分たちで見つけられるかです。
インタビューが有益だったかのチェックリスト
本書 起業の科学 - スタートアップサイエンス には続けて、インタビューがしっかり行えたかを確認するためのチェックリストが紹介されています。
- インタビュー対象者としての要件を満たしていたか
- 相手が抱える問題点を確認できたか
- 現状のソリューションは何か
以下、それぞれについての補足です。
1. インタビュー対象者としての要件を満たしていたか
インタビューの相手がエバンジェリストとしての条件を満たす人だったかどうかです。先ほど見たように、具体的には以下です。
- 課題を認知している。問題解決のために模索し、試行錯誤している
- 解決のための予算を確保し、使う権限を持っている
- 意思決定ができる。組織内外に影響力がある
他には、最低でも5人以上に聞くなど、十分な人数の相手にインタビューが実施できたかです。
2. 相手が抱える問題点を確認できたか
自分たちが想定した問題は、実際に顧客にとっても問題となっていたかの確認です。問題は自分たちが絵に描いた餅ではなく、顧客の中に実在するものかどうかです。
問題点の存在が確認できれば、以下も理解できたかがチェックポイントです。
- 問題点の広さと深さ
- 発生頻度
- 解決の見通しがありそうか
- 解決するための前提条件は何か
問題点は、相手がインタビュー前から認知していたものだけとは限りません。インタビュー中の質問と深掘りからの対話によって、相手も気づいていなかった問題にまで掘り下げられたかどうかです。
3. 現状のソリューションは何か
今のところのベストソリューションは何かを把握できたかです。その解決方法がうまく機能しているところと、不都合や面倒、不満は何か、何を我慢せざるを得ない状況かを確認します。
併せて、どれくらいの労力、コストがかかっているかの定量的な情報も入手できたかです。
最後に
新規でのプロダクト開発にあたって、開発の責任者であるプロダクトマネージャーが考えるべき重要な問いは、以下の5つです。
- ターゲットユーザーは誰か
- そのユーザーが抱えている問題は何か (自分たちが解決する問題の定義)
- その問題をどのように解決するか
- 問題が解決したかをどう判断するか (成功の定義)
- 解決を判断するために何をするか (プロトタイプとテスト)
今回ご紹介したエバンジェリストへの顧客課題インタビューは、5つのうちの2つめに当たります。
自分たちが解決すべき問題定義のために、問題仮説を検証し磨き上げるプロセスです。
インタビューをし、抱える問題の背景も含めた根深さへの共感、現状の解決策 (我慢しながら使わざるを得ないやり方) などを理解します。自分たちが設定した問題仮説は、顧客内でも本当に存在し、解決すべき優先度の高いものなのかどうかです。
やっているアプローチは、まずは解くべき 「問題の質」 を高めることです。「解の質」 を上げるのは、その後です。
最後に、関連するエントリーのご紹介です。
先ほどの、プロダクトマネージャーが考える5つの問いについては、以下で詳しく書いています。よろしければ、ぜひご覧ください。