2020/05/31

書評: PIXAR (ピクサー) - 世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話。ストーリーの彩り豊かなビジネス小説




今回は、書評です。

PIXAR (ピクサー) - 世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話 という本をご紹介します。





この記事でわかること


  • 本書の概要
  • 著者の仕事への向き合い方
  • ストーリーの彩りを豊かにする人間描写
  • スティーブ・ジョブズの人間像


この本は、おもしろくて一気に読めました。

今回の記事では、本書の簡単な概要と、具体的にどんな視点でおもしろく読めたかを書いています。

ぜひ記事を最後まで読んでいただき、この本をまだ読んでいない方は、手にとって読んでみてください。


本書の内容


この本を一言で言えば、ピクサーの IPO まで、その後の成長のヒストリーを 「論理」 と 「感情」 の両方で深く味わえる本です。

論理とは戦略と実行、感情は登場人物の人間性です。スティーブ・ジョブズを中心に、人間描写が多様でストーリーに深みを持った内容です。

以下は本書の内容紹介です。

ジョブズが自腹で支えていた赤字時代、「トイ・ストーリー」 のメガヒット、株式公開、ディズニーによる買収……。

小さなクリエイティブ集団をディズニーに並ぶ一大アニメーションスタジオに育てあげたファイナンス戦略!


ここがおもしろかった


この本をおもしろく読めた視点は、次の3つです。


おもしろかった視点
  • 仕事への向き合い方
  • 人間描写
  • スティーブ・ジョブズの人間像


では、それぞれについて順番にご説明していきます。


[おもしろかった 1] 仕事への向き合い方


著者がピクサーへ入った当初は、状況は八方塞がりでした。


無理ゲーな状態


ジョブズが5000万ドル (60億円相当) の自分のお金を投じてピクサーを支えていたにもかかわらず、儲けの出そうな事業がありませんでした。

そんな状況で、ジョブズは株式の公開を望んでいました。

ピクサー社員とジョブズの関係がよくない問題も解決しつつ、ピクサーを立てなおし、株式公開を実現する。双方が納得するやり方をみつけなければなりませんでした。

もはや 「無理ゲー」 というやつです。


次の一手をどう指すか


書かれていた表現で印象に残っているのは、チェスの盤面と打ち手の話です。

私は、配られた手札を嘆いても始まらないと若いころに学んでいる。仕事や人生についていろいろと教えてくれたメンターがいたのだ。

チェスの名人が盤面を見るように事業を観察する人で、その彼から 「駒がいまどう配置されているのか、それを変える術はない。大事なのは、次の一手をどう指すか、だ」 と教えられ、そう考えるように意識してきた。

自分にどうこうできないことで感情的になるより、ずっといいやり方だ。

 (引用: PIXAR (ピクサー) - 世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話 (ローレンス・レビー (著), 井口耕二 (翻訳) ) )

チェスの盤面というコントロールできないことです。

自らが置かれた環境において、どんな打ち手をするかです。打ち手とは自分がコントロールできます。


戦略と実行


戦略をどう立てるかも興味深く読めました。

著者は、具体的に次のようなステップで戦略を組み立て、実行に移していきました。


戦略策定と実行
  • 現状分析
  • 本質理解
  • 方針 (戦略)
  • 事業計画
  • 実行


人に頼る (まわりを巻き込む)


著者の仕事の進め方で興味深いと思ったのは、人に頼るうまさです。

具体的には、自分が尊敬するメンター、専門家、そして妻にもアドバイスを率直に求めています。

スティーブ・ジョブズとのコミュニケーションも印象的でした。密にコミュニケーションをし、意思疎通を図っています。

物語が進むにつれて、ジョブズが著者を信頼していきました。

信頼は2つに要因分解ができます。仕事の成果への信頼と、人間性の信頼です。著者は、ジョブズから両方の信頼を得ました。


[おもしろかった 2] 人間描写


この本は全体を通して、著者の目から見たピクサーや登場人物が書かれています。

印象的だったのは、登場人物は必ず著者が見た印象や評価が描写されていることです。

それだけ著者は人をしっかり見ていることの表れです。

具体的な描写により登場人物のイメージが頭に浮かび、読み手はき込まれます。無味乾燥なビジネス小説ではなく、全体を通して彩り豊かなことが、この本の特徴です。

思ったのは、ピクサーが大事にするクリエイティブさとストーリー性に通じます。


[おもしろかった 3] スティーブ・ジョブズの人間像


著者から見たジョブズの人間性が興味深かったです。

というのは、一般的に語られるジョブズの印象とはずいぶん違うように描かれているからです。

この本を読む前のジョブズの印象は、付き合いにくい、近づきにくいというものでした。しかし、この本で描かれているジョブズは、人間味があふれる人物です。

建設的な議論をし、耳の痛い指摘に対して聞き入れ、真摯に向き合います。何よりも興味深かったのは、まわりへの気遣いです。著者と家族への優しさが何度も書かれていました。

気さくでフランクな人となりで、著者の家にふらっとやってきて 「一緒に散歩に行こう」 と誘うシーンは何度も出てきました。

その一方で、成功したい、アップルから追放され、それでももう一度返り咲きたい、IPO への強い思いを感じさせます。

等身大のジョブズを知ることができるのも、この本の見どころです。


まとめ


今回は PIXAR (ピクサー) - 世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話 という本をご紹介しました。





いかがだったでしょうか?

この本のサブタイトルは、「世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話」 です。ここでいうお金とは、IPO (新規株式公開) にまつわるものです。

ただでさえ IPO というのは難しい上に、当時のピクサーの苦しい事業状況、スティーブ・ジョブズの無理な要望など、よくこの状況で上場できたなと、あらためて思います。

まだこの本を読んだことがない方は、ぜひ読んでみてください。おすすめです。

最後に今回の記事のまとめです。


本の概要
この本は、ピクサーの IPO まで、その後の成長のヒストリーを 「論理」 と 「感情」 の両方で深く味わえる。戦略と実行、スティーブ・ジョブズを中心に、人間描写が多様でストーリーに深みを持った内容。


おもしろく読めた視点
  • 著者の仕事への向き合い方 (チェスの基盤と打ち手)
  • 人間描写からの彩りが豊かなストーリー
  • スティーブ・ジョブズの人間像 (人間味があふれる人物)






PIXAR (ピクサー) - 世界一のアニメーション企業の今まで語られなかったお金の話 (ローレンス・レビー (著), 井口耕二 (翻訳) )

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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 合同会社の代表 (会社概要はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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1981年 (昭和56年) 生まれ。名古屋出身、学生時代は京都。現在は東京23区内に在住。気分転換は毎朝の1時間のランニング。