投稿日 2021/10/01

一芸調理家電 「サラダチキンメーカー」 に学ぶ、引き算の戦略と価値提供


今回は、商品開発の話です。

この記事でわかること


  • 一芸調理家電 「サラダチキンメーカー」 のヒット理由
  • 機能を絞り込むことの商品開発とマーケティングへのメリット
  • 発売後の消費者との共創からの商品開発

この記事を読んでいただきたいと思うのは、商品開発やマーケティングの仕事をされている方です。他には、一芸調理家電には 「引き算の戦略」 があり、この戦略に興味を持っていただいた方にも読んでいただきたいです。

家電メーカーの事例から、戦略的に機能を絞り込むことのメリットや顧客への価値提供を解説しています。

自社のビジネスがメーカーではなくサービス事業でも、異業種のヒット商品からは学べることがあります。商品開発やマーケティングの参考になればうれしいです。


一芸の調理家電


今回取り上げたいのは、ライフオンプロダクツというメーカーが製造している調理家電です。



以下は日経新聞の Web 記事からの引用です。

家電・雑貨企画のライフオンプロダクツ (大阪市) が開発する単機能の調理家電の販売が伸びている。

サラダチキンやチーズフォンデュなど特定の料理を簡単に作ることができる家電で、新型コロナウイルス下の巣ごもり需要を取り込んだ。購入者が家電の使い方を工夫して、アレンジ料理を楽しむことができる点も人気につながっている。

同社が手掛ける調理家電は 「一芸家電」 とよばれて親しまれている。

最近ヒットした象徴的な製品は2020年に発売した 「サラダチキンメーカー」 (市場想定価格は4950円) だ。手のひらよりやや大きい機体で、内部の容器に鶏胸肉と水を入れると自動で加熱調整し、しっとりしたサラダチキンができあがる。

低脂肪・高たんぱくのサラダチキンはコンビニエンスストアなどで手軽に購入でき、人気を集めていた。ただ 「市販品はなぜどれも冷たいのか」 という今井正史社長の疑問から開発に着手。1年足らずで製品化した。サラダチキンを自宅で簡単に作れると話題となり、累計3万個超を売るヒットになった。

 (引用: 日経 2021.9.6)

こちらが、サラダチキンメーカーの公式サイトです。

紹介動画も付けておきますね。



サラダチキンメーカーは、商品名の文字通りにサラダチキンを家で作ることに特化しています。

ではここからは、サラダチキンメーカーから商品開発やマーケティングに学べることを見ていきましょう。


機能を絞り込むメリット


商品やサービスの機能をあえて絞り込むことにはメリットがあります。

具体的には次の通りです。


商品・サービスの機能を絞り込むメリット
  • ターゲットが明確になる (ターゲット顧客と利用シーン)
  • 訴求やアピールがしやすい
  • 消費者にとっても理解しやすい (いる・いらないの判断, 自分が使うことへのイメージ)
  • 企画から発売までの開発スピードが早い
  • 価格が抑えられる
  • 利用者の工夫が入れられる 「余白」 が生まれる



各メリットの補足


一芸家電のサラダチキンメーカーは、機能を 「これだけ」 と一点集中させています。本当に必要な機能に絞る 「引き算の戦略」 です。

機能を絞り込むことによって、それを求める欲しい人のイメージが明確になります。ターゲット顧客と、さらに利用者が具体的にどう使うかの 「ターゲット利用シーン」 も具体化できます。

ターゲット顧客と利用シーンが明確になれば、相手にどう伝えるかのコミュニケーションや訴求内容も定まります。

買う側の消費者にもメリットがあり、機能が絞られていると何ができるかが理解しやすいです。買い手にとって 「いるか・いらないか」 を判断しやすく、実際に自分が使う時や場面のイメージが湧きます。

商品開発の段階でもメリットはあります。機能をあれもこれもと追加せず、サラダチキンを作るのに必要なものだけと割り切れるわけです。これにより開発スピードが早くなります。

また、コストも抑えられるので低価格での販売につながります。サラダチキンメーカーの値段は5000円ほどで、例えばホットクックは安くても3万円台、上位機種では7万円以上するので桁が1つ違います。


発売後の共創からの商品開発


機能を絞り込むことのメリットの最後に 「余白が生まれる」 を挙げました。最後にこの意味合いを掘り下げてみます。

以下は先ほどの日経の記事からの引用です。

今井社長は 「日本の家電は複雑な機能がありすぎる」 と指摘する。同社の製品は、メーカー側として求められる以上の機能訴求はしない。シンプルな製品だが、最近では新しい楽しみ方が注目されている。目的の料理以外のアレンジレシピなどを考案し、SNS (交流サイト) などを通じて紹介することだ。

まず市場に製品を投入し、その後に消費者主導で新しい用途やレシピを発案してもらう。消費者とともに製品の魅力を高めていく、「育成型」 の製品モデルともいえる。

 (引用: 日経 2021.9.6)

サラダチキンメーカーは 「あれもこれも」 の足し算でなはく、「あれかこれか」 と引き算から削ったことにより利用者の工夫の余地が生まれました。例えばアレンジレシピやサラダチキン以外のレシピの新しい用途です。

提供者であるライフオンプロダクツが情報を一方的に提供するだけではなく、利用者の方からも SNS での発信がされています。機能を特化しシンプルにしたことによって、発売後もメーカーと消費者での共創から開発プロセスが続いているのです。


まとめ


今回は一芸調理家電の 「サラダチキンメーカー」 を取り上げ、商品やサービスの機能を絞り込むことのメリットを見てきました。

最後にまとめです。


一芸家電のサラダチキンメーカー
  • 本当に必要な機能に絞る 「引き算の戦略」 。サラダチキンを作ることに特化したシンプルな調理家電
  • サラダチキンを自宅で簡単に作れると話題になり、累計3万個超のヒット商品に
  • 家電の使い方を工夫しアレンジ料理を楽しめる人気の要因


商品・サービスの機能を絞り込むメリット
  • ターゲット顧客と利用シーンが明確になる
  • 訴求やアピールがしやすい
  • 消費者にとっても理解しやすい (いる・いらないの判断, 自分が使うことへのイメージ)
  • 企画から発売までの開発スピードが早い
  • 価格が抑えられる
  • 利用者の工夫 (新しい用途やレシピを考える) が入れられる余白が生まれる



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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 合同会社の代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。