出典: ワイン王国
今回のテーマは、お客さんへの提供価値です。
✓ この記事でわかること
- アサヒスーパードライ生ジョッキ缶のヒット理由
- 缶ビールのタブーへの挑戦
- 覚えておいて損はない 「価値の二階建て理論」 とは?
ヒット商品の缶ビールを取り上げ、人気の秘密とマーケティングに学べることを解説しています。
よかったら最後までぜひ読んでみてください。
アサヒスーパードライ生ジョッキ缶
今回ご紹介したいのは、「アサヒスーパードライ生ジョッキ缶」 です。
出典: アサヒ
特徴は、まるでジョッキで飲むような生ビールの味わいを手軽に楽しめるところです。
缶ビールの上の部分全部がフタになっていて、フタを開けるとビールの中から泡が発生します。缶の内部に焼き込んだ塗料の微細な凹凸に泡がぶつかり発泡する仕組みです。
出典: ワイン王国
自然発泡する様子を SNS に投稿する人が相次ぎ、あまりの人気に発売直後に販売休止となった商品です。
缶ビールのタブーへの挑戦
アサヒスーパードライ生ジョッキ缶で興味深いのは、缶ビールのタブーに切り込んだことです。
タブーとは 「ビールの泡」 についてで、泡の捉え方を変えて缶ビールの常識を覆しました。
以下は、日経新聞の記事からの引用です。
もう一つの課題が 「泡立つ」 をどう捉えるかということだった。本来、泡立つビールは不良品。ビールがこぼれて服を汚してしまったら即クレームにつながる。泡立つことを商品の特徴と考えるか、吹きこぼれのリスクと考えるか。そしてそれを消費者にどう伝えるかが問題だった。
上司からは 「商品として成立しないんじゃないか」 という声も飛んだ。ただモニター調査では消費者は驚いて楽しそうだった。この様子を録画して経営会議で流したところ、「リスクを超える驚きがある」 と判断してもらえた。
生ジョッキ缶は冷やしすぎると泡立たず、逆に温度が上がると吹きこぼれるリスクが高まる。コストはかかったが12度以上の常温の場合には吹きこぼれに注意するよう記載したシールを貼った。
ビールに 「おいしさ」 よりも 「楽しさ」 という新しい価値を持ち込めたことがヒットの要因ではないかと考えている。
ではここからは、引用の最後にあった 「おいしさ」 よりも 「楽しさ」 という新しい価値を持ち込んだことについて掘り下げていきます。
価値の二階建て理論
マーケティングのフレームで、覚えておいて損はないのが 「価値の二階建て理論」 です (これは私が勝手にそう呼んでいるフレームで、世の中一般で言われているものではないです) 。
商品やサービスからのお客さんへの提供価値を、建物の二階建てのように捉えるといいです。
✓ 価値の二階建て理論
- 一階: 基本的な価値。機能や性能の利便性や使いやすさ。食品であればおいしさや栄養成分
- 二階: 付加価値。見た目のかわいさ・愛着が持てる・使っていて楽しいこと
建物がそうであるように、二階は一階部分が土台としてあることで成立します。
逆に言えば一階の価値が低いと、どんなに二階の付加価値が高くても商品全体で見れば価値としては高まりません。
アサヒスーパードライ生ジョッキ缶に当てはめれば、一階のベースとなる価値はビールとしての 「おいしさ」 です。二階の付加価値がフタを開けると生ビールのように泡ができ、ジョッキで生ビールを飲むような体験、おもわず SNS でシェアしたくなる 「楽しさ」 です。
このようにアサヒスーパードライ生ジョッキ缶は、他のビールとの競争において勝負のやり方を変えました。従来の味での勝負だけではなく、「楽しさ」 という新しい競争ルールを持ち込んだのです。
学べること
では最後に、アサヒスーパードライ生ジョッキ缶から学べることを整理してみましょう。
一言で表現をするなら、学びは 「お客さんへの提供価値を解像度高く捉えよう」 です。
例えばご紹介した 「価値の二階建て理論」 のように、基本的な価値と付加価値に分けて考えてみます。他には少し似ていますが、機能的価値と感情的価値はそれぞれ何かを見てみるのも良いです。
そして、自分たちはお客さんから選ばれる競争に、どんな価値提供から勝利しようとしているのかの把握です。ここで言う勝利とは、競合商品ではなく自分たちが選ばれることです。
大事なのは、価値についてお客さんの立場で捉えて言語化できていることです。
まとめ
今回は 「アサヒスーパードライ生ジョッキ缶」 を取り上げ、ヒット理由から提供価値について学べることを見てきました。
最後にまとめです。
価値の二階建て理論
- 一階: 基本的な価値。機能や性能の利便性や使いやすさ。食品であればおいしさや栄養成分
- 二階: 付加価値。見た目のかわいさ・愛着が持てる・使っていて楽しい
提供価値の把握
- 自分たちはお客さんから選ばれる競争に、どんな価値提供から勝利しようとしているのかの把握が大事
- 勝利とは、競合商品ではなく自分たちが選ばれること
- お客さんへの提供価値をお客の立場になって解像度高く捉えよう
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