投稿日 2022/03/22

倒産の危機を脱したブロンコビリーに学ぶ、あえて 「手間のかかること」 に注力する重要性


今回は、「手間のかかることからの競争優位」 という話です。

✓ この記事でわかること
  • かつてのブロンコビリーの店舗拡大路線
  • 一時は倒産の危機に
  • 窮地を救ったのはお客さんの声
  • 「手間のかかること」 にもっと手間をかけてみよう

ステーキやハンバーグを提供する飲食チェーンのブロンコビリーを取り上げます。戦略やマーケティングの観点から学びがあると思ったので、一緒に見ていきましょう。

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

ブロンコビリーの拡大路線


ステーキハウスのブロンコビリーを取り上げた記事を読みました。

順風満帆から一転、倒産の危機へ - ブロンコビリーが窮地から抜け出したきっかけは 「お客さまの声」 |DIAMOND Chain Store

以下は記事からの引用です。

順風満帆だった。85年には 「炭焼き」 と 「サラダバー」 を導入して、一気に人気を博した。93年には多店化に備え、愛知県春日井市にコミサリー (自社加工工場) を開設。95年には商号を現在の 「ブロンコビリー」 に変更。「炭焼き」 「サラダバー」 という2つの武器を携えて快進撃を続けた。

しかし、あることを端緒に躓くことになる。「200店舗くらいまで規模を拡大したいと考え、2000年に低価格路線への変更を決め、手間とコストのかかることは極力やめました。『炭焼き』を鉄板に変え、『サラダバー』を廃止して、大量出店に専心するように舵を切ったのです」 (竹市さん) 。ブロンコビリーは低価格路線にまっしぐら。1700円あった客単価を970円にまで引き下げ出店を重ね、店舗数は40に達した。

ところがそこで降って湧いたように2001年、BSE (牛海面状脳症) 問題が勃発する。売上高53億円の企業は5億円以上の赤字を計上し、有利子負債は38億円 ―― 最大のピンチに直面し、倒産の危機を迎えた。

低価格路線からの出店拡大のため、手間やコストのかかることは極力やめたわけですが、その後は BSE 問題もあり、倒産の危機に直面してしまったのです。


窮地を脱したのは 「お客さんの声」 から


倒産の危機を救ってくれたのはお客さんの声でした。

記事から再び引用します。

失意のどん底の中で、たまたまつけていたラジオの声にはっとさせられた。

 「番組では『今年なくなって腹が立つことランキング』という企画をやっていたのです。その第2位にランクインされていたのが『ブロンコビリーのサラダバー』でした」 (竹市さん) 。「なんだか感動してしまってね。温かい風に吹かれたような気持ちになった。同時にお客さまの期待にお応えしなければいけないという熱い思いがこみ上げてきました」 。

この経験を通して、「ブロンコビリーの得意なことをやろう、好きなことをやろう、高い評価をして頂けることをやろう」 という考えの軸が定まり、覚悟が決まった。それからは、お客に価値を感じてもらえる 「ご馳走レストラン」 として、世界中から食材を求めて集め、日本中から旬の食材を探し、店舗では手間隙かけておいしい料理や気持ちの良いサービス、清潔で楽しい店づくりに徹底的にこだわった。

04年から、再びオープンキッチンによる 「炭焼き」 「大かまど (で炊くご飯) 」 「サラダバー」 の導入改装を開始し、05年4月には全店舗のリモデルを終えた。

炭火焼きやサラダバーを復活させ、ブロンコビリーにしかない価値を磨く方針に舵を切りました。


日本中から旬の食材を集め、店舗では手間をかけた料理や気持ちの良いサービス、清潔で楽しい店づくりの実現を目指しました。


手間のかかること


ブロンコビリーは、かつては拡大路線で進めるために手間とコストのかかることを極力やめました。

今回の話から掘り下げたいのは、「手間のかかることとは何か」 です。

大きく2つあり、1つは時間がかかる割に成果を生み出せていない無駄なことです。もう1つは手間をかけるほど価値につながり、例えばお客さんへの提供価値の源泉になっていることです。

ブロンコビリーから考えさせられたのは、手間について、この2つのどちらかなのかの見極めの重要性です。

ブロンコビリーが極力やめることにした炭焼きやサラダバーは、2つのうち後者の 「来店客への価値になっていたこと」 でした。しかし、そうだと捉えず 「手間がかかる = 無駄なこと」 と見なしやめてしまって、自分を見失ってしまったのです。


学べること


では最後に、今回のブロンコビリーの話から学べることを整理してみましょう。

一言で表現をするなら、学びは 「手間がかかるとは真逆の2つの意味があり、必要な手間には時にはもっと手間をかけてみよう」 です。

自分 (たち) が生み出している価値は何によってなのか、それは他者から真似されにくいことかを見極めることが大事です。一見すると非効率に思えても、それが価値を生む源泉であれば続けるべきです。

効率さというものさしで全てを測らず、また短期的な視点だけにならないように、多面的に捉えるといいです。そうすれば、今回の 「手間がかかること」 のようにものごとの両面を見出すことにより、価値提供につながります。


まとめ


今回は、ブロンコビリーの拡大路線とかつての倒産の危機から、「手間のかかること」 について掘り下げました。

最後にまとめです。

手間からの競争優位
  • 手間には大きく2つあり、1つは時間がかかる割に成果を生み出せていない無駄なこと
  • もう1つは手間をかけるほど価値につながり、例えばお客さんへの提供価値の源泉になっているもの
  • 一見すると非効率に思えても価値を生んでいるなら、時にはもっと手間をかけて競争優位を高めよう


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。