投稿日 2022/03/09

大人用紙おむつ 「アテント」 のリブランディングに学ぶ、買いにくい理由を解決するマーケティング


今回は、お客が 「買いにくい」 と思う心理的ハードルを解消する方法についてです。

✓ この記事でわかること
  • 大人用紙おむつ 「アテント」 のリブランディング
  • リブランディングの狙いとは?
  • マーケティング視点での本質
  • 買いにくい理由を解消するマーケティング

おもしろいと思ったリブランディングの事例を取り上げて、マーケティングの観点で本質は何かを掘り下げます。そこから学べることを解説しています。

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

大人用紙おむつ 「アテント」 のリブランディング


ご紹介したいのは、大王製紙の大人用紙おむつ 「アテント」 です。コンセプトやパッケージ変更からのリブランディングが興味深かったです。

パッケージのデザイン変更


以下は、日経新聞の記事からの引用です。

大王製紙が大人用紙おむつ 「アテント」 で、紙おむつのあり方を変えようとしている。日用品の基本とされる機能性などを前面に出すパッケージを見直し、ブランド名だけを小さくあしらうデザインにした。

アテントの新パッケージ (出典: 日経

従来の大人用紙おむつのパッケージ (出典: 日経

リブランディングの狙い


変更の背景について、同じ記事からの引用をすると、

紙おむつをはくことで自分の加齢を感じてしまい、使用に抵抗感を持つシニアは少なくない。暮らしになじむ包装デザインにすることで抵抗感を減らし、身近な存在にしたい考えだ。

大人用紙おむつについては、使用することに抵抗感を持つシニアは少なくない。「まずは (抵抗感がより薄い) 老眼鏡くらいの感覚」 (ヘルスケア・ブランドマーケティング部の大蔵孝浩部長) を持ってもらうため、生活に取り入れやすいパッケージから取り組むことにした。

リブランディングでの新しいコンセプトは、「大人用紙パンツは恥ずかしいことじゃない」 「かくさなくてもいい」 です。


マーケティング視点での本質


では、アテントのリブランディングの意味合いについて掘り下げていきましょう。

結論から先に言うと、リブランディングの本質は 「お客さんの買いにくい要因の解消」 です。

ここで言う 「お客さんの買いにくい要因」 とは、具体的には次のようなことです。

✓ 買いにくい要因
  • お店で大人用紙おむつを選んでいる・買おうとしている自分の姿を、まわりの人に見られたくない
  • 大人用紙おむつを買い物かごに入れて店内を歩きたくない
  • 家に持って帰る時に、大人用紙おむつを買ったことを人に知られたくない
  • 自分も大人用紙おむつをついに買うような年齢になった老齢感から、さみしい気持ちになりたくない

こうしたマイナスの要素が、大人用紙おむつを買うことへの心理的な抵抗につながっているわけです。

以上のような買いにくい理由を、新しいコンセプトとパッケージ変更で解消するのが、今回のリブランディングの狙いです。

興味深いのは、本来の商品パッケージの役割は商品名などを目立つようにして存在感を出すことにありますが、アテントのパッケージ変更は逆だということです。紙おむつであることをあえてわからなくし、商品名も英語表記で情報量をかなりカットしたデザインになっています。

出典: 日経


学べること


では最後に、大人用紙おむつのアテントのリブランディング事例から、学べることを整理してみましょう。

一言で表現をすれば、お客さんの 「買いたい理由」 と 「買いにくい理由」 を分けて捉える重要性です。

前者の 「買いたい理由」 に目が行きがちで、確かにここを強化するのは重要です。一方で、後者の、今回のアテントの事例で見てきたように、お客さんが買いにくいと思ってしまう理由を見出し、解決することも大事です。

買いにくいと思う理由を一般化すると、具体的には次のようなものがあります。

✓ 買いにくい理由の例
  • 商品やサービスのことを詳しく知りたいのに、説明が書かれていない。またはわかりにくい
  • 買いたいのにお店で売られていない。Web で取り扱っていない
  • 中身は良いのに、見た目や名前が自分向けではない
  • 自分が興味を持っている・使っていることを知られたくない ( ← 今回のアテントの場合はこれ) 

こうしたマイナスの要素を見極め、マイナスを少なくともゼロにし、自分たちが選ばれる確率を少しでも高めるのがマーケティングの役割です。


まとめ


今回は大人用紙おむつのアテントのリブランディング事例を取り上げ、マーケティングに学べることを見てきました。

最後にまとめです。

買いにくい理由の解消を
  • お客さんの 「買いたい理由」 と 「買いにくい理由」 を分けて捉えるといい
  • 買いたい理由を強化するのは重要だが、お客さんが買いにくいと思ってしまう理由を見極め解決することも大事

買いにくい理由の例
  • 商品やサービスのことを詳しく知りたいのに、説明が書かれていない。またはわかりにくい
  • 買いたいのにお店で売られていない。Web で取り扱っていない
  • 中身は良いのに、見た目や名前が自分向けではない
  • 自分が興味を持っている・使っていることを知られたくない


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。