出典: ねとらぼ
今回のテーマは、戦略と商品開発です。
✓ この記事でわかること
- ドンキのチューナーレステレビ
- 引き算の差異化
- スモールスタートでの商品開発
おもしろいと思ったドンキのプライベートブランド (PB) のテレビを取り上げ、戦略と商品開発の観点で学べることを掘り下げています。
よかったら最後までぜひ読んでみてください。
ドンキのヒット商品 「民法が見られないテレビ」
今回ご紹介したいのは、ドンキが自社開発したテレビです。
テレビチューナーを外し民放放送が見られず、 Netflix や YouTube などの動画視聴専用のテレビです (特設ページはこちら) 。
42V型と24V型 (出典: 日経クロストレンド)
日経クロストレンドの記事から引用すると、
ドン・キホーテは、プライベートブランド 「情熱価格」 の新商品として、「Android TV 機能搭載フル HD チューナーレススマートテレビ」 を2021年12月10日に発売した。
商品名にテレビと入っているが、地上波を見るためのチューナーを外したため、民放の見逃し配信サービス 「TVer」 などのアプリを経由する方法を除き、テレビ番組は視聴できない。
快適な操作性を担保するために Android をベースとしたテレビ用の OS 「Android TV」 をドンキの PB で初めて搭載し、Netflix や YouTube 、Amazon Prime Video といった動画配信サービス (VOD) の視聴に特化したテレビだ。
売れ行きは好調で、発売から1カ月で初回生産分の計6000台がほぼ完売した。
ちなみに値段は、42V型が税込み3万2780円、24V型が税込み2万1780円です。
初代のチューナーレステレビは失敗
先ほどの引用の最後で 「売れ行きは好調」 とありましたが、これは二代目の話で、実は以前の初代の発売では失敗に終わっていました。
同じ記事から引用します。
スマホで VOD を見る人が圧倒的に多くなり、チューナーがなくても成立するのではないか。そんな発想から初代のチューナーレステレビが生まれたが、当初予定していた Android OS の実装ができなかった。「Google から商品の認証を得るのが難しく、技術面やコスト面、商品の販売台数などで折り合いがつかず、当時は搭載を見送った」 (鷲津氏)
機能的には "リモコンで操作する PC モニター" に近く、操作性が良いとはいえなかった。画質は HD にとどまるなど狙ったスペックには届いていなかったが、チューナーレスのニーズを確認する狙いもあり、年末商戦に合わせることを優先した。
結果は 「ビジネスという側面で考えたら成功したとはいえなかった」 と鷲津氏。消費者からは 「もっと高画質がよかった」 「Android OS を積んでほしい」 といった声が多く、初回生産分の1000台を売り切るのに思った以上の時間がかかったためだ。
しかし、発売から半年近くたっても問い合わせが後を絶たず、消費者の反応で潜在的なニーズを確信。商品のリニューアルに踏み切った。
テレビからチューナーを外すというコンセプトは良かったものの、Android OS が搭載されず、画質は HD だったので高くなかったことが、失敗の要因でした。
そこで二代目ではこれらの問題を解決し、発売1カ月で初回生産分の6000台が完売したヒット商品になったのです。
* * *
引き算からの差異化
ではここからは、ドンキのチューナーレステレビから学べることを見ていきましょう。
2つあり、1つ目は戦略です。一言で表現をすれば、「引き算からの差異化」 です。
そもそものテレビからチューナーを取り除くという発想がおもしろいです。「テレビとは、チューナーで地上波のテレビ放送を映すもの」 という常識を覆しています。
「あれもこれも」 と機能を足していくのではなく、従来のテレビでのコア部分であったチューナーをなくすという決断をしたわけです。これは引き算の発想です。
戦略とは、目的を達成するための 「やること」 と 「やらないこと」 の決めごとで、ポイントは後者の 「やらないこと」 にあります。「やらないこと」 を意思を持って決めて捨てるからこそ、残った 「やること」 に自分たちのリソースを注力できます。
この意味において、ドンキのチューナーレステレビは、「チューナーを付けない」 というやらない判断をして、引き算からの差異化を図っています。
スモールスタートでの商品開発
学べることの2つ目は商品開発の観点です。
ドンキの初代チューナーレステレビは、販売目標とする1000台になかなか到達しませんでした。
要因は、Android OS が実装されていなく、HD で画質が高くなかったことです。この失敗から学び、課題をクリアしたテレビを開発しました。
確かに初代の販売結果だけを見れば、チューナーレステレビの開発は失敗だったかもしれません。しかし二代目の成功に必要なプロセスだったと見れば、どうでしょうか。独立した1つ1つの 「点」 ではなく、「線」 とつなげて見れば捉え方が変わります。
ドンキのチューナーレステレビは初代で1000台、二代目で6000台と、スモールスタートでの商品開発と市場投入 (ローンチ) になりました。一回目の市場ローンチによってユーザーのフィードバックを得て、失敗からの教訓から改善をしていく商品開発にできたわけです。
斬新な新しい商品・サービスほど、ユーザーに受け入れられるかの見極めは簡単ではないんですよね。
この場合は、小規模での市場ローンチからユーザーのフィードバックを得て、改善をしていくスモールスタートでの商品開発が適しています。
まとめ
今回はドンキのチューナーレステレビを取り上げ、戦略と商品開発に学べることを見ていきました。
最後にまとめです。
引き算からの差異化
- 戦略とは、目的を達成するための 「やること」 と 「やらないこと」 の決めごと
- 「やらないこと」 を意思を持って決めるからこそ、残った 「やること」 に自分たちのリソースを注力できる
- 「あれもこれも」 と足していくのではなく、引き算からの差異化を考えてみよう
スモールスタートでの商品開発
- 斬新な商品・サービスほど、ユーザーに受け入れられるかの見極めは簡単ではない
- この場合は、小規模での市場ローンチからユーザーのフィードバックを得て、改善をしていくスモールスタートでの商品開発が良い
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