投稿日 2022/03/14

ドンキのヒット商品 「民放が見られないテレビ」 に学ぶ、引き算の差異化

出典: ねとらぼ

今回のテーマは、戦略と商品開発です。

✓ この記事でわかること
  • ドンキのチューナーレステレビ
  • 引き算の差異化
  • スモールスタートでの商品開発

おもしろいと思ったドンキのプライベートブランド (PB) のテレビを取り上げ、戦略と商品開発の観点で学べることを掘り下げています。

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

ドンキのヒット商品 「民法が見られないテレビ」 


今回ご紹介したいのは、ドンキが自社開発したテレビです。


テレビチューナーを外し民放放送が見られず、 Netflix や YouTube などの動画視聴専用のテレビです (特設ページはこちら) 。

42V型と24V型 (出典: 日経クロストレンド)

日経クロストレンドの記事から引用すると、

ドン・キホーテは、プライベートブランド 「情熱価格」 の新商品として、「Android TV 機能搭載フル HD チューナーレススマートテレビ」 を2021年12月10日に発売した。

商品名にテレビと入っているが、地上波を見るためのチューナーを外したため、民放の見逃し配信サービス 「TVer」 などのアプリを経由する方法を除き、テレビ番組は視聴できない。

快適な操作性を担保するために Android をベースとしたテレビ用の OS 「Android TV」 をドンキの PB で初めて搭載し、Netflix や YouTube 、Amazon Prime Video といった動画配信サービス (VOD) の視聴に特化したテレビだ。

売れ行きは好調で、発売から1カ月で初回生産分の計6000台がほぼ完売した。

ちなみに値段は、42V型が税込み3万2780円、24V型が税込み2万1780円です。


初代のチューナーレステレビは失敗


先ほどの引用の最後で 「売れ行きは好調」 とありましたが、これは二代目の話で、実は以前の初代の発売では失敗に終わっていました。

同じ記事から引用します。

スマホで VOD を見る人が圧倒的に多くなり、チューナーがなくても成立するのではないか。そんな発想から初代のチューナーレステレビが生まれたが、当初予定していた Android OS の実装ができなかった。「Google から商品の認証を得るのが難しく、技術面やコスト面、商品の販売台数などで折り合いがつかず、当時は搭載を見送った」 (鷲津氏) 

機能的には "リモコンで操作する PC モニター" に近く、操作性が良いとはいえなかった。画質は HD にとどまるなど狙ったスペックには届いていなかったが、チューナーレスのニーズを確認する狙いもあり、年末商戦に合わせることを優先した。

結果は 「ビジネスという側面で考えたら成功したとはいえなかった」 と鷲津氏。消費者からは 「もっと高画質がよかった」 「Android OS を積んでほしい」 といった声が多く、初回生産分の1000台を売り切るのに思った以上の時間がかかったためだ。

しかし、発売から半年近くたっても問い合わせが後を絶たず、消費者の反応で潜在的なニーズを確信。商品のリニューアルに踏み切った。

テレビからチューナーを外すというコンセプトは良かったものの、Android OS が搭載されず、画質は HD だったので高くなかったことが、失敗の要因でした。

そこで二代目ではこれらの問題を解決し、発売1カ月で初回生産分の6000台が完売したヒット商品になったのです。

* * *

引き算からの差異化


ではここからは、ドンキのチューナーレステレビから学べることを見ていきましょう。

2つあり、1つ目は戦略です。一言で表現をすれば、「引き算からの差異化」 です。

そもそものテレビからチューナーを取り除くという発想がおもしろいです。「テレビとは、チューナーで地上波のテレビ放送を映すもの」 という常識を覆しています。

 「あれもこれも」 と機能を足していくのではなく、従来のテレビでのコア部分であったチューナーをなくすという決断をしたわけです。これは引き算の発想です。

戦略とは、目的を達成するための 「やること」 と 「やらないこと」 の決めごとで、ポイントは後者の 「やらないこと」 にあります。「やらないこと」 を意思を持って決めて捨てるからこそ、残った 「やること」 に自分たちのリソースを注力できます。

この意味において、ドンキのチューナーレステレビは、「チューナーを付けない」 というやらない判断をして、引き算からの差異化を図っています。


スモールスタートでの商品開発


学べることの2つ目は商品開発の観点です。

ドンキの初代チューナーレステレビは、販売目標とする1000台になかなか到達しませんでした。

要因は、Android OS が実装されていなく、HD で画質が高くなかったことです。この失敗から学び、課題をクリアしたテレビを開発しました。

確かに初代の販売結果だけを見れば、チューナーレステレビの開発は失敗だったかもしれません。しかし二代目の成功に必要なプロセスだったと見れば、どうでしょうか。独立した1つ1つの 「点」 ではなく、「線」 とつなげて見れば捉え方が変わります。

ドンキのチューナーレステレビは初代で1000台、二代目で6000台と、スモールスタートでの商品開発と市場投入 (ローンチ) になりました。一回目の市場ローンチによってユーザーのフィードバックを得て、失敗からの教訓から改善をしていく商品開発にできたわけです。

斬新な新しい商品・サービスほど、ユーザーに受け入れられるかの見極めは簡単ではないんですよね。

この場合は、小規模での市場ローンチからユーザーのフィードバックを得て、改善をしていくスモールスタートでの商品開発が適しています


まとめ


今回はドンキのチューナーレステレビを取り上げ、戦略と商品開発に学べることを見ていきました。

最後にまとめです。

引き算からの差異化
  • 戦略とは、目的を達成するための 「やること」 と 「やらないこと」 の決めごと
  • 「やらないこと」 を意思を持って決めるからこそ、残った 「やること」 に自分たちのリソースを注力できる
  • 「あれもこれも」 と足していくのではなく、引き算からの差異化を考えてみよう

スモールスタートでの商品開発
  • 斬新な商品・サービスほど、ユーザーに受け入れられるかの見極めは簡単ではない
  • この場合は、小規模での市場ローンチからユーザーのフィードバックを得て、改善をしていくスモールスタートでの商品開発が良い


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。