投稿日 2022/03/15

ある神社の両替サービス 「コインチェンジ」 の秀逸さを、ビジネスモデルから紐解く


今回のテーマは、ビジネスモデルです。

✓ この記事でわかること
  • 神社が始めた両替サービス 「コインチェンジ」 とは?
  • コインチェンジの開始背景と狙い
  • 秀逸なビジネスモデル
  • 一石三鳥のサービス

おもしろいと思った、ある神社のサービスを取り上げ、ビジネスモデルのフレームを使ってサービスの秀逸さを紐解きます。

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

神社が始めた無料両替サービス


大阪府交野 (かたの) 市の住吉神社が、おもしろい両替サービスをやっていました (2022年2月に限定で2回実施 (詳細はこちら) ) 。

両替サービスの名前は 「コインチェンジ」 です。


想定しているサービスのターゲット顧客は、近隣の商店主でした。

商店から紙幣を受け取り、住吉神社が小銭を渡すシンプルなサービスです。特徴は両替手数料が無料なことで、神社にお金を持って行くだけでタダで両替をしてくれました。


コインチェンジの背景と狙い


住吉神社は2つの課題を抱えていました。

1つは参拝客を増やすこと、もう1つは硬貨取扱手数料の削減です。

後者について、神社への参拝客がお賽銭をする小銭は、銀行に預けれると手数料がかかります。この手数料の負担が小さくなかったというのが、コインチェンジを考案した背景の1つです。

一方の商店主を見ると、現金決済をしているお店は、お釣り用に小銭が必要です。もし銀行で両替をすると両替手数料が発生します。

駄菓子屋や弁当屋など ゆうちょ銀行、硬貨の預け入れ手数料に困る人々|ITmedia (2022.2.7) 

小銭が欲しい商店主と小銭を手放したい住吉神社という需要と供給がうまくマッチしています。住吉神社が両替サービスを無料で提供し、商店の人々が神社に両替に来てくれることを狙うのがコインチェンジなのです。


秀逸なビジネスモデル


コインチェンジはビジネスモデルの観点でも興味深いです。

ビジネスモデルとは、次のように要素に分けることができます。

✓ ビジネスモデルの要素
  • 誰の何の問題に [顧客定義]
  • 他のプレイヤーよりも [競合設定]
  • より良い解決方法で [問題解決方法]
  • お客さんに価値を提供し [提供価値]
  • 対価として収益を得る [収益モデル]

この5つをコインチェンジに当てはめると、

✓ コインチェンジのビジネスモデル
  • お釣り用に小銭が必要な商店主にとって、両替手数料が負担になっている問題
  • 両替手数料を取る銀行よりも
  • より安く (無料で) 両替サービスができるコインチェンジを提供
  • 神社に行けば無料で小銭に両替してくれ、手数料負担をなくせる価値
  • 無料サービスなので収益は出ないが、住吉神社は近隣の商店からの信頼が獲得できる

最後の5つ目の収益モデルについて補足をすると、コインチェンジからは利益は生まれませんが、その代わりにお金では買えない、まわりからの信頼を得ることができます。

神社がなじみのある場所になることで、参拝客が増えることも期待できます。

コインチェンジは、サービスのターゲット顧客である 「商店主の小銭両替の問題」 を解決するだけではありません。住吉神社にとってもお賽銭で得た小銭の取扱手数料を減らし、参拝客も増やすという一石三鳥のサービスなのです。


まとめ


今回は住吉神社の無料両替サービス 「コインチェンジ」 について、ビジネスモデルの観点から掘り下げました。

最後にまとめとして、ビジネスモデルの要素です。

ビジネスモデルの要素
  • 誰の何の問題に [顧客定義]
  • 他のプレイヤーよりも [競合設定]
  • より良い解決方法で [問題解決方法]
  • お客さんに価値を提供し [提供価値]
  • 対価として収益を得る [収益モデル]


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。