投稿日 2022/03/01

フェーズフリーの商品企画シートに学ぶ、フレームとアイデアでの二段階の発想方法


今回は、アイデアを思いつく方法をご紹介します。

✓ この記事でわかること
  • フェーズフリーの人気商品
  • 社内でアイデアを募集するエントリーシート
  • マーケティング視点での秀逸さ
  • エントリーシートから学ぶ、アイデアを思いつく方法
  • まず箱庭を作り、その後に庭での遊び方を考えよう

おもしろいと思ったアイデアのつくり方を取り上げ、マーケティングの観点で学べることを掘り下げています。

具体的には、商品アイデアやマーケティングへの新しいアイデアの発想方法を解説します。よかったら最後までぜひ読んでみてください。

フェーズフリーの人気商品


日経クロストレンドのある記事を読みました。

 "20年前のボールペン" に再脚光! フェーズフリーが変える売り方|日経クロストレンド

アスクルの商品開発の裏側に迫る連載記事でした。近年注目を集める、新しい防災の概念 「フェーズフリー」 に着目した商品開発の話がおもしろかったです。

フェーズフリーとは、平常時と災害時という社会のフェーズを取り払い、普段使用している商品やサービスが災害時にも役立ち、かつ安全を守るという概念です。

記事ではフェーズフリーという切り口から、災害時にも使える様々な人気商品が紹介されています。


例えば、普段使いもでき、非常時には水をくめるバケツとしても使用できる撥水バッグです。

バッグにもバケツにもなる撥水バッグ (出典: 日経クロストレンド)


アイデアを募る共通フレーム


商品へのアイデア出しで興味深かったのが、共通のエントリーシートです。

記事から引用すると、

取り組んだのが、社内の MD にフェーズフリー商品のアイデアを広く出してもらうことだ。

フェーズフリーの考え方に沿った企画がつくれるように、エントリーシートを用意。例えば、最も重要な 「日常時の用途・価値」 「非常時の用途・価値」 を端的に書き込めるように工夫したり、どのような災害に備えるものかのチェックを入れられるようにしたり、フレームワークを整えることで認識を共有していった。

 (中略)

これによって、約60のアイデアが集結。そのアイデアの中から、オリジナルとして新しく開発するものと既存のメーカー製商品を活用するものとを選別しながら、商品化候補を絞り込んでいった。

実際のエントリーシートは、次のような中身です。


マーケティングの観点で良いと思ったのは、

  • 対象ユーザーを書いている (ターゲット顧客の設定)
  • 用途・価値を日常時と非常時の2つに分けている
  • 価値は商品が主語の機能ではなく、ユーザーを主語にしたベネフィットで表現している


共通エントリーシートから学べること


では、エントリーシートから学べることを見ていきましょう。

アイデア評価


フェーズフリーの商品企画のエントリーシートとは、アイデア出しの 「フレームワーク」 です。

フレームという枠組みがあることで、皆が同じ項目でアイデアを考え、記入できます。これにより色々なアイデアの比較と評価がしやすくなるメリットがあります。

二段階の発想方法


エントリーシートには、アイデアのつくり方にヒントがあります。

新しいアイデアを考える時は、まずはアイデアの切り口となるフレームワークをつくると良いです。フレームの後にアイデアを考えるという、二段階のアイデア発想方法です。

フレーム (切り口) とアイデアの関係は、抽象と具体です。

抽象レベルで考え、その次に具体的なアイデアを出すという順番です。イメージは、フレームという箱庭をまず作り完成度を高めてから、庭の中で何をして遊ぶかという、フレームに沿ったアイデアを考えていく流れです。


フレームを掛け合わせてみる


これは応用的な話ですが、フレームを考えたりつくる段階で、異なるフレームのかけ算によって、新しいアイデアを生むというアプローチがあります。

1つ具体例でご紹介すると、PDCA と OODA ループの組み合わせです。

OODA ループとは


2つのかけ算の前に OODA ループの補足をしますね。

OODA ループとは、意思決定と実行のプロセスです。OODA は4つの頭文字です。

✓ OODA ループ
  • Observe (観察) : 情報を収集する
  • Orient (状況判断) : 収集した情報を解釈し、意味合いを考える
  • Decide (意思決定) : 状況判断にもとづいて決断をする
  • Act (行動) : 実際の行動に移す

PDCA × OODA のかけ合わせ


では、新しいフレームとして、PDCA に OODA ループをかけ合わせてみましょう。

PDCA だけでも有効ですが、OODA ループという似て非なるフレームを掛け合わせることによって、PDCA をより効果的にまわすことができます。


PDCA と OODA の と掛け合わせのポイントは、 PDCA の1回をまわすために OODA ループを2回まわします。

Plan と Do で1回目の OODA 、Check と Adjust で2回目の OODA です。

異なるフレームを掛け合わせることによって1つのフレームでは一次元だったものが、マトリクスという二次元になります。できたマトリクスをアイデアを作るための切り口にし、それぞれの枠の中で具体的なアイデアを考えていきます。


まとめ


今回は、フェーズフリーの商品企画シートから、アイデアを思いつく方法を見てきました。

最後にまとめです。

二段階のアイデア発想術
  • 新しいアイデアを考える時は、まずはアイデアの切り口となるフレームワークをつくると良い
  • フレームという箱庭を作り完成度を高めてから、庭の中で何をして遊ぶかを考える
  • 最初にフレーム、その後にアイデアを考える 「二段階のアイデア発想方法」 がおすすめ


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。