ビジネスで大事なのは、多くの人がまだ気づいていない問題を見つけて解決することです。
今回は、花王のビオレの 「瞬感ミスト UV」 の事例から、お客さんに 「これが欲しい」 という “バーニングニーズ” をつくり出す秘訣を探ります。ぜひ一緒に学んでいきましょう。
霧で簡単に塗り直しできる日焼け止め
出典: 花王
ご紹介したいのは、花王の日焼け止め 「ビオレ UV アクアリッチ アクアプロテクトミスト (通称 「瞬感ミスト UV」 ) 」 の事例です。
日経新聞の記事によれば、発売から約3ヶ月半で400万本超を出荷したとのことです。通常、日焼け止めは4月下旬ごろから売れ始めますが、2月の発売直後から買い求めるお客さんが絶えなかったようです。
瞬感ミスト UV の開発背景を見てみましょう。花王は日焼け止めを塗り直す際の潜在的なストレスに着目し、商品化しました。
日焼け止めの効果を持続するためには、こまめに塗り直すことが大事だ。にもかかわらず、花王が21年におこなった調査では、塗り直しをしている人は約3割にとどまった。開発に携わった小原聡太郎さんは 「『外で日焼け止めは使いにくい』と諦めている人が多いことに気づかされました」 と振り返る。
缶のスプレーは音や周囲への飛び散りが、クリームタイプなど塗り広げるものは手のべたつきや衛生面が気になる。そこで開発したのが、これまでにないミストタイプの日焼け止めだ。通称は 「瞬感ミスト UV」 。ガスで噴出するのではなく、霧吹きのように使う。逆さまでも使用可能で、背中や足元にも難なくつけられるようにした。
ミスト状だと、汗などで落ちやすいと懸念する人もいるかもしれない。こだわったのがムラなくつく密着感だ。
(中略)
ミストタイプであることが伝わりやすいよう、容器は透明に。形はコロンとしていて手に収まりやすく、カバンにそのまま入れて移動しても蓋が外れることのないよう繰り返し試験した。
付け替え用ボトルも発売しており、スプレー部分は再利用できる。「自分が買ったものが環境配慮にもつながるという実感を意識して買われる人が増えている」 (小原さん) ことを考慮した。
学べること
では花王の 「瞬間ミスト UV」 から、学べることを掘り下げていきましょう。
人々が気づいていない問題の発見
ビジネスで成功をするためには、まだ人々が認識していない問題を発見することが大切です。
見出した問題が既存の商品では解決されない場合、そこにビジネスチャンスがあります。
今回のケースでは、外出中も日焼け止めの効果を持続させるためには塗り直す必要があるわけですが、実際に行っている人は多くはいませんでした。スプレー式の日焼け止めは音が迷惑にならないか、周囲への飛び散りも心配だからです。また、クリームタイプでも手がべたつくことや衛生面が気になります。
花王はこうした状況を捉え、自分たちが解決する問題として設定したわけです。
課題感の醸成 (問題意識の共有)
多くの人がまだ気づいていない問題を発掘できたら、次に考えるべきことは、いかに課題感として持ってもらうかです。
今までは問題として明確に意識していなくても、そうだと認識し気づかされることで、お客さん自身が解決したいと思うようになります。お客さんにとっての 「バーニングニーズ」 、つまり切実に解決したいと感じるニーズを生み出すわけです。
解決策の提案
お客さんに課題感を持ってもらい切実なバーニングニーズにできた段階で、ここではじめて解決策として自社商品を提示します。
逆に言えば、商品を見せる前には下地づくりが必要だということです。お客さんにとって唐突感のないような文脈をつくることが大事なのです。
花王は、ここまで見てきたプロセスを踏んでいます。
- 日焼け止めは一度塗って終わりではなく、適宜で塗り直しをすることで効果が持続する。そうしなければ紫外線から大切な肌を守れないという問題意識を持ってもらう
- 生活者が 「じゃあどうすればいいの?」 と思うようになり、外出中も肌をちゃんと守りたいという課題感を顕在化させた
- 生まれたバーニングニーズに対して、ミストタイプの日焼け止めの新商品 (瞬間ミスト UV) を解決策として提案した
以上のことを1つずつ丁寧に行い、花王の 「瞬間ミスト UV」 は、普通の日焼け止めは4月下旬ごろから売れ始めるところが、2月の発売直後から買い求めるお客さんがいて、3ヶ月で400万本超も出荷されたのです。
この事例から得られる学びを一般化すると、お客さんがまだ気づいていない問題を発見し、それがお客さんにとってどれほど大事なことであるかに気づいてもらう重要性です。
そして、ハッとさせられた課題感に対する解決策 (商品) を提供することで、新たな価値をもたらすことができるのです。
まとめ
今回は花王の日焼け止めビオレ 「瞬間ミスト UV」 を取り上げ、学べることを見てきました。
最後に学びのポイントをまとめておきます。
- 多くの人がまだ気づいていない問題を探し出すことは、ビジネスで成功するために重要なこと
- 見出した問題をお客さんに共有し、問題だと気づいてもらうことで、切実に解決したいと思う 「バーニングニーズ」 をつくり出せる
- そのニーズに対する解決策を提供することで新しい価値を生む。商品を見せる前に下地をつくり、お客さんにとって唐突感のないような文脈をつくることが大事
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