投稿日 2023/09/17

データが解き明かす真実。兼六のデジタル化に学ぶ、お客さんが実は求めていたことを発見する方法

#マーケティング #データ分析 #顧客理解

自社の商品やサービスの中身は、本当にお客さんが望んでいることと一致していますか?
思い込みが邪魔をして、実はお客さんの実態を見失っていないでしょうか?

今回は、データによってお客さんに対する誤った理解に気づき、売り手の認識と買い手の実態を合わせる方法について見ていきます。ぜひ一緒に考えていきましょう。

兼六のデジタル化


日本三名園の1つ、金沢市の兼六園の茶店。経営するのは兼六です。

兼六がデジタル化を進めています。

まずはデジタル化の背景から見てみましょう。

兼六は1918年の創業。兼六園内の日本最古とされる噴水前にある茶店 「兼六亭」 などを運営している。約150人が入る団体客向けの食事処だったが、社員旅行などの減少に加え、新型コロナウイルス禍が追い打ちをかけ、売り上げが急減した。

事業再構築を模索するなか、個人客向けの店づくりへの転換を決めた。2022年秋、40人程度がゆったり楽しめるカフェのような店に改装。噴水を眺めながら食事できるカウンター席や茶室などを設けた。同時に進めたのがデジタル化だった。

兼六は、具体的にどのようなデジタル化を進めたのでしょうか?

接客や会計では紙の注文伝票と電卓での作業が中心だったが、POS (販売時点情報管理) システムに転換。中小の店舗では珍しい需要予測システムも導入した。顧客のアンケートや POS のデータなどを分析。メニューやサービスの改善に活用する。

例えば菓子のセットメニューにするドリンクを絞り込むとき、甘い飲み物は合わないと考えて店オリジナルのコーラを外す候補にしていた。しかし販売データを分析した結果、注文がかなりあり、この組み合わせを好む人が多いことが判明。残すことにし、印象だけで人気メニューを自ら失うことを防いだ。

宇田麻記子常務は 「お客様のニーズをデータの形で、情報共有できたのが大きい」 という。

学べること


では、金沢市の兼六園内にある茶店 「兼六亭」 のデジタル化の事例から、学べることを掘り下げていきましょう。

思い込みのズレがデータで明らかに


私たちが今回の事例から得られる教訓は、売り手が持つお客さんへの印象や理解と、実際のお客さんの好みや行動は必ずしも同じではないということです。

兼六は、お客さんについての認識が事実と違っていたことをデータから明らかにしました。

兼六亭では、お菓子のセットメニューに入れるドリンクを絞り込むときに、甘い飲み物は合わないだろうという判断からオリジナルのコーラを除外候補にしていました。しかし販売データを詳細に分析したところ、実際はコーラは多く注文されていることがわかりました。

コーラのような甘い飲み物とお菓子は合わないという売り手の思い込みによって、販売の機会損失を生むところでした。

お客さんの立場に変えてみると、お菓子と店舗オリジナルコーラを一緒に楽しむ体験が失われる可能性があったということです。

データにもとづくマーケティングの重要性


今回の事例から、データにもとづいたマーケティングの重要性が見てとれます。

兼六はデータ分析結果から、実はお客さんはお菓子と甘い飲み物を一緒に楽しむという好みを理解し、セットメニューに当初は除外予定だった店オリジナルのコーラを残すことにしました。

データは、売り手の思い込みや経験に頼るだけでは見えてこない、お客さんの本当のニーズを理解する手がかりとなります。

もちろんデータだけでは、お客さんの気持ちまでは直接的にはわかりません。データをきっかけに売り手と買い手のギャップに気づき、そこから掘り下げることで奥にあるお客さんの心理や価値観までをうかがい知ることができるのです。


まとめ


今回は兼六のデジタル化の事例から、学べることを見てきました。

最後に学びのポイントをまとめておきます。

  • 売り手の思い込みは、お客さんの実際と異なる場合がある。誤認識がビジネスの機会損失を生み、お客さんが得たであろう体験価値を奪ってしまうかもしれない

  • データからのお客さんの実態を発見することで、売り手の思い込みや経験だけでは捉えきれないお客さんが本当に求めていることを理解する手がかりとなる


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。