投稿日 2023/09/03

アイスだヨーヨー。 売り手と買い手で価値をつくる共創の秘訣

#マーケティング #共創 #コミュニティ

共創という言葉、あなたはどんなイメージを持つでしょうか?

手と手を取り合い、共につくり上げる光景が思い浮かぶかもしれません。ただし実際はなかなか難しく、売り手だけでなく、買い手も参加して価値を生むことはそう簡単ではありません。

今回は、ユニークなアイスクリームメーカー 「アイスだヨーヨー」 から、共創をキーワードに価値をつくる秘訣を探ります。ぜひ一緒に学んでいきましょう。

アイスだヨーヨー



タカラトミーアーツが、ヨーヨー型のアイスクリームメーカー 「アイスだヨーヨー」 を発売しました。


本体に冷却用の氷と塩を入れ、アルミカップにアイスの材料をセットし、約3分間ヨーヨーのように上下に振るとアイスができあがります。

タカラトミーアーツは 「ポイントは塩と氷。氷を素早く溶かす性質を持つ塩と、溶ける時に周囲の温度を下げる氷の特性を組み合わせ、ボール内を氷点下 (-8℃) にする。ヨーヨー遊びによって攪拌 (かくはん) され、急速冷凍によりアイスの材料が凝固するので短時間でアイスができる」 と説明している。

こちらの 「アイスだヨーヨー」 にはサンリオキャラクターが採用され、取扱説明書にはアイスのレシピや自由研究のヒントも掲載されています。


本当の共創


この事例から学べるのは 「本当の共創とは何か」 です。

共創とは、商品やサービスの売り手と買い手が協力するようにして価値をつくり出すアプローチです。売り手だけでなく、買い手の参加によって初めて完成する価値創出です。

ご紹介した 「アイスだヨーヨー」 では、ユーザー (子ども) は自らアイスを作るプロセスに参加し、楽しみながら使います。

ポイントは、売り手からやらされるような義務的なものではなく、子ども自身の 「やりたい」 という気持ちから参加する仕掛けになっていることです。

子どもにはヨーヨーのように遊びながらアイスを作るという楽しさがあります。ヨーヨーで遊び、アイスを食べられるという2つの体験価値をもたらしているわけです。

学びを一般化すると、ユーザーが主体的に参加したいと感じるような共創体験の設計の重要性です。ユーザーが仕方なくやるという 「名ばかりの共創」 ではなく、「自らやりたいと思える共創」 を実現できればユーザー体験は良くなり、顧客満足度も向上します。


共創体験をつくるためのポイント


では、人が自ら主体的に参加したいと思える共創体験をつくるためには、どうすればいいのでしょうか?

ポイントを整理してみましょう。

  • お客さんを理解し、共感や遊び心、創造性の導入
  • 参加者が自分が何をすればいいか、今できることが理解でき、率先して行動しやすい環境
  • 自分が行動したことの成果がわかったり感謝されるなど、やったことの意味合いがわかる
  • 古参ばかりにならず、新しい人が入って来やすいオープンな雰囲気になっている
  • ユーザー同士の横のつながりができ、自分の居場所があると感じる

順番に見ていきましょう。

1. お客さんを理解し、共感や遊び心、創造性の導入

まずはお客さんのことを理解します。

その上で、お客さんが商品やサービス、共創する行為に共感できる何かがあることが重要です。また、ユーザーの遊び心や創造性を引き出すような仕掛けを入れることで、積極的な参加やアイデアが生まれやすい場になります。

2. 参加者が自分が何をすればいいか、今できることが理解でき、率先して行動しやすい環境

参加者が自発的に行動できる環境を整備することが大事です。自分が今何をすべきか、自分が行動をすることで何が変わるかを示すことで、自ら行動する意欲を高めることができます。

3. 自分が行動したことの成果がわかったり感謝されるなど、やったことの意味合いがわかる

参加者が自分の行動の成果を知ることができ、自分の貢献が評価されることで、参加者の満足度とロイヤルティは向上します。

具体的な成果のフィードバックや感謝の言葉を伝え、参加者の行動が商品やサービスの価値向上への貢献を可視化することで、行動への動機を生みます。

4. 古参ばかりにならず、新しい人が入って来やすいオープンな雰囲気になっている

新規のユーザーも参加しやすいようなオープンな環境をつくることで、より多くのユーザーからの共創を促すことができます。

新規ユーザーを歓迎する雰囲気がカルチャーのようになり、使用方法や共創の方法を教える教育プログラムもあるといいでしょう。

5. ユーザー同士の横のつながりができ、自分の居場所があると感じる

ユーザー間のコミュニケーションを促進し、お互いに情報を共有する場 (プラットフォーム) を設けることで、コミュニティ感が高まります。

ユーザーが、自分自身は商品やサービスに対して重要な存在であり、自分の居場所があると感じることで、より深く関わる意欲が生まれます。

* * *

以上から、ユーザーが主体的に参加したいと感じる体験の設計を進めていくことが、商品やサービスの共創からの価値創出につながります。


まとめ


今回は 「アイスだヨーヨー」 を取り上げ、共創をキーワードに学べることを見てきました。

最後に学びのポイントをまとめておきます。

✓ 本当の共創

  • 共創は、商品やサービスの売り手と買い手が協力して価値をつくり出すアプローチ。売り手だけでなく、買い手の参加によって初めて完成する価値創出

  • ユーザーが仕方なくやるという 「名ばかりの共創」 ではなく、「自らやりたいと思える共創」 を実現できればユーザー体験は良くなり、顧客満足度も向上する

✓ 共創体験をつくるためのポイント
  1. お客さんを理解し、共感や遊び心、創造性の導入
  2. 参加者が自分が何をすればいいか、今できることが理解でき、率先して行動しやすい環境
  3. 自分が行動したことの成果がわかったり感謝されるなど、やったことの意味合いがわかる
  4. 古参ばかりにならず、新しい人が入って来やすいオープンな雰囲気になっている
  5. ユーザー同士の横のつながりができ、自分の居場所があると感じる


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。