投稿日 2023/09/23

受け身な買い物の消費者心理とは?情報過多時代のマーケティングを解説

#マーケティング #顧客理解 #行動と心理

お客さんは、その商品やサービスを買おうとするときに、どんな気持ちになっているでしょうか?

その買い物をよりスムーズでストレスフリーにするには、どうすればよいのでしょうか?

今回は、お客さんの 「買い物での心理」 に注目し、情報過多の時代におけるマーケティングを一緒に探求していきましょう。

受け身での買い物


Z 世代の買い物行動は、商品選びが受け身かもしれない。これは NTT レゾナントが見出したものです (参考記事) 。

他の世代と比べて、Z 世代は買い物で受動的な探し方をし、提示されたものから探すという傾向が見られました。

これは2023年2月に実施した、15歳 ~ 69歳の男女1035人 (1か月以内に EC サイトを利用した人) へのネット調査からわかったことです。

EC サイトで商品を探す方法について尋ねた (複数回答可) ところ、ハッシュタグなどを意味する 「タグで探す」 と回答した Z 世代 (15 ~ 24歳) は 20.7% に達し、回答者全体の 11.3% を上回りました。また、「おすすめワード、トレンドワードで探す」 と答えた Z 世代も 27.8% で、全体 (14.1%) に比べて14パーセントポイント近く高い結果でした。


買い物は疲れる行為である


関連してつながるのは、Google が見出した消費者心理です。

Google は、リピート購入についての調査から、人の奥にある気持ち (深層心理) を紐解きました。興味深かったのは 「買い物とは疲れることでもある」 という指摘です。

Google が実施した消費者へのデプスインタビュー (1対1のインタビュー) では、次のような買い物疲れと、買い物への影響が見て取れました。

以下はインタビュー対象者の発言です。

■ 女性 / 20代
ビールは糖質 OFF の 「淡麗グリーンラベル」 。お茶は 「お〜いお茶 濃い茶」 だけを買う。どちらも機能性商品で味や価格など含めてこれと決まった。考えるのをやめたいからルーティン化しているという面もある。化粧品・ファンデーションなども買うものを決めてしまいたいという思いがある

■ 男性 / 40代
ブランドを意識するものは始めからそのなかでしか検討しない。年齢とともに買い物に時間をかけなくなった。レストランだったら恵比寿や麻布、洋服なら銀座など過去の経験や情報のストックがあるし、そもそも買い物に時間をかけたくない気持ちがあるからかも

■ 女性 / 50代
とんかつはまい泉、お米はコシヒカリ、家電はパナソニック、洋服は Theory 、化粧品は資生堂。あらゆるジャンルで基本的にブランドやお店が固定されていてそのなかで選んでいる若い頃よりも冒険を試すことが減っているという自覚がある

このように、消費者にとって 「自分が信じる商品を継続購入する」 という心理と行動は、生活者が買い物にかかる負担を無意識的にもなるべく減らすようにした結果と言えるでしょう。


お客さんの 「受け身な買い方」 に対応する方法


ではここまでの内容から、マーケティングへの示唆を掘り下げていきましょう。

受け身で選ぶ人


お客さんが商品やサービスを 「選ぶ」 そして 「買う」 という行為は、必ずしも能動的であるとは限りません。先ほど見たように 「受け身な買い方」 をする人たちが存在します。

受け身な買い方とは、消費者が直面する情報の過多からくる疲れを避け、選択肢を減らすことで心理的負担を軽減するために起こります。

具体的には、特定の商品を決めてルーティン化して購入したり、信頼するブランドのみから選んだりする買い方です。このままでいいという、過去の踏襲から今までと同じものを買う 「受け身のリピート購入」 と見ることもできます。

購入をより簡単にし、ストレスを減らすための自然な消費行動と言えるでしょう。

お客さんへの配慮


ここにマーケティングへの示唆があります。お客さんが 「受け身での買い方」 をすることを理解し、その心理的負担を下げる重要性です。

商品の選択肢が多すぎるとお客さんはどれを選んだら良いか迷い、買い物疲れが起こってしまいます。

そこで、お客さんが 「省エネ」 で選べる状況をつくることに配慮するといいでしょう。自社の商品やサービスが、お客さんにとって選びやすく、買いやすい状態にするようにすることが大事です。

例えば、

  • 選択肢を多くしすぎず、伝える情報量を適切にする
  • 商品やサービスのカテゴリー分けを見直し、お客さんが目的の商品をすぐに見つけられるようにする
  • 信頼できるレビューや評価を目立つ位置に配置する
  • 口コミやハッシュタグのような情報を見やすくし、探しやすくする
  • 定期購入やお気に入り登録などの機能を提供する

これらの施策は、お客さんが商品選びにかける時間とエネルギーを節約するのに役立ちます。お客さんは何を基準に商品を選べば良いのかが考えやすく、買い物をより簡単に行えるようになるでしょう。

マーケティングの役割


学びとして残しておきたいのは、「自社が選ばれる理由を理解しよう」 です。

ビジネスが存続できるのは、お客さんから他社ではなく自社が選ばれ、そして一度きりだけではなく長く選ばれ続けるからです。お客さんがなぜ自分たちを選んでくれるのかを解像度高く理解する。これはマーケティングで大事な視点です。

マーケティングで求められるのは 「お客さんから選ばれやすい状況」 をつくることにあります。マーケターはお客さんの買い物体験を改善し、負担を軽減する役割も担っています。

これらを実行することで、お客さんと長期的な関係を築くことができるでしょう。そして、結果としてビジネスの持続的な成功につながります。


まとめ


今回は買い物でのお客さんの心理を掘り下げ、学べることを見てきました。

最後に学びのポイントをまとめておきます。

  • 情報過多な状況では受け身で買い物をしたり、買い物は疲れる行為と捉える人が一定数存在する。ある調査では Z 世代は他の年代に比べて受動的な購買行動の傾向が見られた

  • お客さんが省エネで買える状況をつくるといい。具体的には、選択肢や情報量をあえて減らし、ハッシュタグや口コミ・レビューを見やすくするなど、お客さんの買い物での作業的・心理的負担を減らす工夫を入れよう

  • お客さんが 「自社を選ぶ理由」 を解像度高く理解することが大事。理解したお客さんの行動と心理にもとづき、マーケティングや商品開発を続けることが持続的なビジネス成功につながる


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。