投稿日 2023/09/28

競争プレゼンで勝つ秘訣。クライアント理解から、競争環境を制する者が提案を制す

#マーケティング #競合プレゼン #本

今回は、最近読んでおもしろいと思った本をご紹介します。

こちらの書籍、競合プレゼンの教科書 勝つ環境を整えるメソッド 100 (鈴木大輔) には、広告、コンサルティング、建築、IT 、デザインなど様々な業界で競合プレゼンに勝つための方法が詰まっています。


企画提案を成功させるための環境整備の重要性と、どうすれば 「勝つ環境をつくれるか」 の秘訣をぜひ一緒に探っていきましょう。

本書のスタンス


本の内容を一言で言えば 「勝つ環境を整える方法論」 です。

勝つ環境をつくる


競合プレゼンで勝つためには、「提案の中身」 が重要であることは言うまでもありません。しかし、それと同様に、ときにはそれ以上に、純粋に提案の中身で勝負できるレベルまで引き上げるための 「勝つ環境を整えること」 が大切なのです。

この点は見過ごされがちであり、ここに本書の存在意義があります。勝つ環境を整えるために、競合プレゼンの各フェーズで行うべきことや避けるべきことを解説しています。

負けフラグを回避する


勝つためには、何よりも負ける確率をいかに下げるかがカギになります。

この本にはいくつかの 「負けフラグ」 が出てきます。その1つが 「だろう運転」 です。

競合プレゼンで負けるとき、多くの場合 「きっとこうだろう」 という安易な、自分たちに都合のいいほうで考えてしまって、そこで思考停止をしています。一方の勝つチームは 「かもしれない」 と悪いシナリオも意識的に想定し、負ける確率を下げるための情報収集を疎かにせず、あらゆる状況を予測して意思決定しています。そうすることで、勝つ環境を整えていくわけです。


クライアントを深く理解する


競合プレゼンに強い人は、「クライアントをとことん考え抜く人」 です。

クライアントの根底にある課題 (真のイシュー) を捉えて、「本質」 を突く提案をできる人です。ここで言う 「クライアントのことを考え抜く」 の中には、エンドユーザーを考慮することも含まれます。

勝つ環境をつくるには、プレゼンや提案をする相手であるクライアントをどれだけ深く理解できるかです。

意思決定者と決定方法を理解する


意外に見落としがちになるのは、意思決定者は誰で、決定方法はどうのように行われるかです。

クライアントからのオリエンテーションのときなど、なるべく早いタイミングで確認すべき重要な論点です。意思決定者と方法を把握することで対策が変わります。

裏の意図を理解する


競合プレゼンに至る背景には、表と裏の両方が存在します。オリエンの書面にも書かれている公式の 「表向きの背景」 、もう1つは公式な書面に書かれることは決してない 「裏の背景」 です。

提案相手の会社や関係者のことを深く理解するためには、後者の 「裏の背景」 を把握しておくことが重要です。表立って語られることはない、クライアントの水面下になる懸念や問題を掘り下げましょう。

抽象と具体の両方で掘り下げる


そこで、クライアントから自分たちが知りたい情報を引き出すためには、「考え方 (課題設定や戦略など) 」 という上位概念だけではなく、「具体 (クリエイティブ表現や施策など) 」 に関する質問を投げかけるといいです。

上位レイヤーの戦略について問いかけても、クライアントからはそれ以上の具体的な答えが得られず、抽象論で終わってしまいます。したがって具体的な質問を投げかけることで、競合プレゼン実施の本当の意図やクライアントの本音を探る入り口をつくれます。

核心に迫る質問


ある程度の情報が得られたと思ったら、核心に迫る質問の出番です。

具体的には 「最も議論に時間をかけた点は何ですか?」 「意見が分かれた部分はありますか?」 「A, B, C の中で優先順位をつけるとしたら、どれが最も重要ですか?」 です。これらの質問によって、オリエンテーション内の重要ポイントを見つけることができます。

さらに 「課長 (あなた) はどう思いますか?」 「部長 (1つ上の役職) ならどう感じると思いますか?」 と尋ねてみるのも手です。

課長と部長の意見が同じであればいいですが、もし異なる場合は、クライアント社内でも意見が一致しておらず、競合プレゼンの争点となるポイントが存在するということです。


オリエンやプレゼンでのポイント


オリエンで初期仮説を検証する


クライアントからのオリエンテーションでは、ただ漫然と聞くのではなく、オリエンを受ける前に考えた 「仮説」 と比較しながら聞くことが重要です。仮説との違いや距離を常にはかり、少しでもひっかかった場合は、なるべくその場で解消するといいです。

オリエンを受けて 「自分たちが想定したことと違う」 と感じたら、チャンスが隠れています。そのギャップは単に自分たちの情報不足や認識違いから来ているのか、それともクライアントがマーケットやお客さんを理解しきれていない場合もあります。

仮説とのギャップや認識の違いが生じた理由にクライアントへの提案のヒントが潜んでいます。

プレゼンでの提案の構成


提案は以下の3つのパートから成り立ちます。

  • 前提: 背景や目的
  • 提案の核心: 目的を達成する戦略、課題設定、コンセプトやコアアイデア
  • 具体: 具体的な施策やクリエイティブ表現など。体制、スケジュール、見積り

競合プレゼンの際に意識すべきポイントは 「相手の一番かゆいところ (= 最大の関心事) 」 に届いていることです。

事前のリサーチで 「一番かゆい場所」 がわかっているのであれば、その部分にまずフォーカスします。場合によってはいきなり冒頭で触れてもいいですし、提案の核心部分を入れるとしても早めに提示するといいでしょう。

そうしないとクライアントは不安を抱えたままで、もやもや感のある状態でプレゼンを聞くことになってしまいます。


まとめ


今回は、書籍 競合プレゼンの教科書 勝つ環境を整えるメソッド 100 (鈴木大輔) から、競合プレゼンで勝つための方法を見てきました。

最後にポイントをまとめておきます。

  • 競合プレゼンに勝つためには、勝つための環境をつくることが大事。純粋に提案の中身で勝負できるレベルまで引き上げるために、勝つ環境を整える

  • 勝つ環境をつくるには、いかにクライアントを理解ができるか。競合プレゼンに至った背景や狙い (表と裏) 、クライアント内の意思決定プロセスや意思決定者、クライアントの本質的な課題への理解から、相手の最大の関心事を見極める

  • オリエンでは事前に設定した仮説と照らし合わせる。もし仮説と違えば、ギャップには提案へのヒントが隠れている



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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。