新しいチャレンジに踏み出すとき、失敗するかもしれないと不安になったことはないでしょうか?
これは誰しもが持つ自然な感情でしょう。しかし失敗は忌み嫌うものではなく、最良の教師になります。
今回は、紅茶飲料のリプトンミルクティーのリニューアル事例を取り上げ、「失敗にどう向き合い教訓に変えるか」 というテーマで掘り下げます。次への挑戦に向けて、ぜひ一緒に学んでいきましょう。
森永リプトンミルクティーの決断
森永乳業のリプトンミルクティーが、2022年3月に味を大幅にリニューアルしました。リプトンミルクティーにとっては過去最大でのリニューアル規模でした。
しかし、わずか1年で元の味に戻すという意思決定を下したのです (リリースはこちら) 。
667通の 「恋文」 で復活
1年でリニューアルした味を撤回したのは、リプトンファンからの声からでした。
2022年3月、森永乳業の 「リプトン ミルクティー」 は、味を大幅に変更した 「リプトン ロイヤルミルクティー」 と入れ替わる形で終売した。
しかしその直後から、SNS では 「慣れ親しんだ元の味に戻してほしい」 という声が多発。森永乳業の問い合わせ窓口に届いた 「ご意見」 は、なんと同社史上最多の667件にものぼった。同社は悩んだ末に、リニューアル後1年という驚きのスピードで 「元の味に戻す」 という異例の決断をした。
ファンとの絆が恋愛アニメに発展
出典: コミックナタリー
今回の話で注目したいのは、リプトンミルクティーの元の味に戻しただけで終わらなかったことです。
重要なのは復活することを広く周知させ、一度離れてしまった顧客に戻ってきてもらうことだ。「さらにこの機会に、学生時代は飲んでいたけど大人になって飲まなくなった人や、一度も飲んだことのない人にも認知拡大できるような PR 施策を打ちたいと思った」 と営業本部マーケティングコミュニケーション部の小倉結衣氏は話す。
そこで同社が取った施策が、オリジナル短編アニメーション 「667通のラブレター」 の制作だ。23年3月にミルクティーの復活発表と同時に公開されるやいなや、SNS を中心に大きな反響を呼んだ。
公式ツイッターアカウントでの動画再生数は23年5月24日時点で2600万回以上。特設サイトへのアクセス数は公開から3日で1万回を超えたという。
(中略)
こうしてできた 「667通のラブレター」 という PR 施策では、もちろんアニメを公開しただけではない。再発売したミルクティーのパッケージの横面にデザインを施したり、東京・渋谷に屋外広告を出したりして多角的に PR 。顧客との接点を増やしさらなる認知拡大を図った。
ミルクティー復活後、売り上げは計画していた販売数量を上回る形で好調に推移しているという。さらに、問い合わせ窓口へは、23年5月現在で既に250件を超える声が届いている。内容の多くは、「復活させてくれてありがとう」 という感謝の声だ。「おかえりミルクティー」 。SNS ではこのような声が相次いでいる。
短編アニメの動画はこちらです。
学べること
では森永乳業のリプトンミルクティーの事例から、学べることを掘り下げていきましょう。
失敗の捉え方
失敗には 「良い失敗」 と 「悪い失敗」 の二種類があります。良い失敗とは次のようなものです。
✓ 良い失敗
- 新しく挑戦をした
- 全力で取り組んだ
- 次に活かせる
ところで、日本語で 「転んでもただでは起きない」 という言葉があります。
たとえ失敗をしたとしても、そこから少しでも何かを得ようとすることを指します。欲の深い人を表すニュアンスもあったりしますが、失敗をした後に次に活かすという意味ではポジティブに捉えたい姿勢です。
挑戦をすることには失敗はつきものです。挑戦の度合いが大きいほど、失敗の確率も高まります。この意味で失敗とは 「挑戦したことのバロメーター」 と見ることができます。
リプトンの失敗と進化
森永乳業のリプトンミルクティーの事例に当てはめてみましょう。
リプトンミルクティーは、リニューアルをしてすぐに想定外の事態に直面しました。
消費者から元の味に戻してほしいという切実な願いが多く寄せられ、リプトンミルクティーのことを 「青春の味」 や 「青春時代」 といった言葉で表現されていました。お客さんがリプトンミルクティーに愛着や感情的な結びつきを持っていることを示しています。
森永乳業はリニューアル前の味に戻しただけではなく、リプトンミルクティーに対する深い愛情を示すお客さんからの声を 「ミルクティーへのラブレター」 と捉え、青春恋愛アニメにした PR にまで発展させました。
失敗を次に活かす方法
リプトンミルクティーの事例からの学びは、失敗を次につなげる方法です。
4つのステップです。
✓ 失敗を次に活かす方法
- 失敗を受け入れる: 森永乳業はリニューアル後の批判を含む反響を、大切なお客さんからの声として真摯に向き合った
- 失敗の原因を究明する: 寄せられた多くの意見を分析し、リニューアルでやったこととお客さんがリプトンミルクティーに求めていることのギャップを理解した
- 学びを得る: 寄せられた意見を、リプトンミルクティーのお客さんの理解を深める情報として有効活用。お客さんが見出しているリプトンの本質的な価値 (例: 飲むことで青春時代を思い出し感情的になれる体験) を反映させる商品開発やマーケティングの重要性にあらためて気づいた
- 教訓を活かす: 集まったリプトンミルクティーへの声をもとに 「667通のラブレター」 という青春恋愛アニメを制作。リプトンミルクティーの新たな PR を展開した
新しく生まれた 「667通のラブレター」 はアニメの公開だけにとどまりませんでした。再発売したリプトンミルクティーのパッケージデザインにも入り、渋谷で屋外広告を出すなど、多角的なコミュニケーションを実施したのです。
売上は計画の販売数量を上回っただけではなく、問い合わせ窓口へは 「復活させてくれてありがとう」 という感謝の声、SNS では 「おかえりミルクティー」 という歓迎の投稿が見られました。
リプトンミルクティーの事例から学べるのは、失敗を恐れず挑戦をする大切さ、そしてたとえ失敗をしたとしても正面から受け止め、学びを得て次に活かす姿勢の重要性です。
まとめ
今回は森永乳業のリプトンミルクティーのリニューアル事例から、学べることを見てきました。
最後に学びのポイントをまとめておきます。
- 良い失敗とは、新しくチャレンジをし、挑戦に全力で取り組んだ結果起こったものであり、次に活かすことで失敗は貴重な教訓になる
- 挑戦には失敗はつきもの。挑戦の度合いが大きいほど失敗の可能性も高まる。失敗は挑戦のバロメーター
- 失敗から学びを得て次に活かす姿勢が重要。失敗を次に活かす方法は、① 失敗を正面から受け入れ、② 原因を究明し、③ 一般化した学びを得て、④ 教訓を次に活かす
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