投稿日 2023/09/13

おじテック下着 「キープガード」 。成功するマーケティングの秘訣は "顧客" と "価値"

#マーケティング #顧客設定 #価値提案

どうすれば、自社商品の魅力をお客さんに伝えられ、お客さんの心をつかむことができるのでしょうか?

今回は、「おじテック」 でかっこよく尿漏れケアができる男性用の下着を取り上げ、成功するマーケティングの秘訣を紐解きます。ぜひ一緒に学んでいきましょう。

 「おじテック」 でかっこよく尿漏れ対策


出典: MonoMax Web

ご紹介したいのは老舗アパレルメーカーのクロスプラスが開発した、尿漏れ対策パンツ 「KEEP GUARD (キープガード) 」 です。

クロスプラスが製造・販売する尿漏れ対応型の男性パンツが人気を集めている。2022年9月に発売してから累計で約1万3千枚を出荷するなど好調に推移している。吸水性や防水性が特長のパンツで、加齢に伴って抱えやすい悩みに応えていく。

 (中略) 

同社が男性向けパンツを発売するのは初めて。キープガードは、妊婦向けに展開する吸水パッド付きブラジャーや吸水ショーツの製造方法を応用して作られた。

例えば、肌に触れるところは吸水性の高い生地を二重にした。また表面にシミができないように防水機能の高い生地を施した。尿が漏れた場合、パンツの内側はすぐに吸水される一方、表面にしみ出さないようにした。

キープガードがマーケティングの観点で興味深いのは、「誰の何の問題を解決するか」 でした。

吸水量は 10cc と、ペットボトルのキャップ2杯分。介護用パンツの中には 60cc 分を吸水できる商品もあるが、キープガードは 「自分でトイレに行けるが、軽い尿失禁が気になる」 というシニア層向けに開発された。

担当した木村伊穂李チーフデザイナーは 「市場では女性向けの吸水性商材は豊富にあるが、男性向けは少なかった」 と話す。同社が22年に男性1万人を対象に調査したところ、トイレを出た後に尿漏れが気になると答えた人は全体の約8割を占めた。介護向け紙製パンツがあるなかで、中高年からは 「紙製のパンツは恥ずかしい」 という声も聞かれた。

クロスプラスはヒョウ柄や迷彩柄など全5色をそろえ、派手なデザインを採用した。グンゼなど大手下着メーカーも男性向けパンツを販売するが、黒やグレーといったベーシックな柄が多い。そこでクロスプラスは外見からでは尿漏れ対応のパンツだとは分からないデザインを採用。他社製との違いを出す。

 (中略) 

同社は、加齢に伴う男性の悩みを解消する商品を 「おじテック」 と称してシリーズ化する計画。今年度中にも、乳首が透けにくい T シャツや足のにおいの軽減を狙った靴下の販売などを予定している。

学べること


ではキープガードから、学べることを掘り下げていきましょう。

顧客設定と理解


クロスプラスは明確な顧客像を描くことから始めました。男性の尿漏れで軽い症状の人をターゲット顧客と設定し、消費者調査から規模感を把握しました。

調査からわかったのは、男性の尿漏れの実態、実は多くの人が何も対処していないという現状でした。

価値の定義


顧客理解からクロスプラスは、お客さんに提供する価値を定義しました。

パッと見て尿漏れケア商品だとわからないデザインのキープガードを開発し、見た目でお客さんが恥ずかしさを感じることなく尿漏れのケアができる価値としたのです。

お客さんへの訴求


クロスプラスは 「バレず、かっこよく尿漏れケアできるパンツ」 としてキープガードを訴求しました。

既存の尿漏れ用下着との差異化を図るために、機能性だけでなく 「スタイル」 や 「自己表現」 を魅力として提案しています。家族にもバレずに使用できる安心感を持ってもらうことで、お客さんが 「これなら使ってみてもいいかも」 と思ってもらうアプローチです。

成功するマーケティングとは


クロスプラスの事例から学べることを一般化すると、成功するマーケティングの進め方です。

具体的には次のプロセスです。

✓ マーケティングの流れ
  • お客さんを決める。マーケティング活動の対象となるターゲット顧客を設定する
  • お客さんを深く理解する。お客さんの置かれた環境、やっている行動、ニーズ、奥にある望みや不満、価値観まで
  • 顧客理解にもとづいて価値を定義する。お客さんが本当に求めている価値を提供できる商品を開発する
  • お客さんの心の琴線に触れる提案を行う。商品の特性や価値を的確に訴求
  • お客さんの態度や行動を変え、選ばれ、買ってもらい、使ってもらう

これらのステップを踏むことで、マーケティングの成功につながります。


まとめ


今回はかっこよく尿漏れ対策ができる下着 「キープガード」 を取り上げ、学べることを見てきました。

最後に学びのポイントをまとめておきます。

  • お客さんを決め理解する: クロスプラスは尿漏れに悩む人々を対象に、その実態や対策の現状を調査し、より深い理解を得た

  • 価値を定義する: 顧客理解から、見た目が尿漏れケア下着とわからないデザインの 「キープガード」 を開発。お客さんが恥ずかしさを感じずに尿漏れケアができる価値をつくった

  • 心の琴線に触れる提案をする: キープガードを 「バレず、かっこよく尿漏れケアできるパンツ」 と訴求。機能性だけでなく 「スタイル」 や 「自己表現」 を魅力として提案。お客さんが 「これなら使ってみてもいいかも」 と思えるようなコミュニケーションを展開した


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。