自社の商品やサービスは、競合商品と差異化ができていますか?
単に "他と違う" だけで満足していないでしょうか?
本当の差異化を実現するためには、ただ違うというだけでは十分ではありません。
今回は、「テロワールしょうゆ」 の事例から、差異化の重要性やその秘訣に迫ります。ぜひ一緒に学んでいきましょう。
テロワールしょうゆ
出典: 有田屋
ご紹介したいのは、ワインの伝統的製法を取り入れた地方産のユニークな 「しょうゆ」 です。
創業191年の老舗、群馬県安中 (あんなか) 市の有田屋は、フランス語で気候や土壌など産地の地域性を意味する 「テロワール」 というワイン造りの考え方を、しょうゆ造りに取り入れ始めた。
(中略)
テロワールはワイン造りで重視される要素の1つで、原料のブドウが育つ土壌や気候といった環境を意味する。ワインの味や個性を決める大きな要因とされる。
有田屋が掲げる 「あんなかテロワール」 は、ワインのようにしょうゆにも地域性を加える試みだ。市内の観光名所の1つで、まちのシンボルとなっている 「碓氷 (うすい) トンネル」 で、しょうゆを 「2次熟成」 するという新たな取り組みに挑戦している。
有田屋のテロワールしょうゆは、その地域ならではの希少性や限定感にこだわっています。
ウイスキーなどの醸造物の製造工程では熟成したものを別の樽に移し、2次熟成させて多様な香りに仕上げる手法が知られるが、しょうゆの2次熟成は極めて珍しい。有田屋は樽の代わりにワインボトルを利用。コルク栓は空気を通すので 「安中らしい空気を取り入れたしょうゆづくりができる」 と湯浅康毅社長は強調する。
県産原料を使い、トンネル内で約1年間2次熟成したしょうゆは22年12月に完成。群馬県立産業技術センターによる官能検査で 「トンネル内で熟成させた方が濃醇 (のうじゅん) な味になると評価された」 (湯浅社長) という。
テロワールは土地の固有性が重要だ。有田屋ではこれまでも県産大豆と県産小麦で造ってきたが、「テロワールしょうゆ」 のため、さらに地域を限定した 「安中産」 にこだわる。
学べること
では 「テロワールしょうゆ」 から、学べることを掘り下げていきましょう。
学べるのはマーケティングにおける差異化の重要性です。
差異化のアプローチと重要性
あらためて差異化とは何でしょうか?
解像度を上げると、差異化には2つのアプローチがあります。
- 他もできることをより良くやる
- 他ができない、やっていない、やりたくてもできないことをやる
遠い世界の成功事例や伝統を持ち込む
差異化への1つのやり方として 「遠い世界 (例: 異業種) の成功事例や伝統を持ち込む」 という方法があります。
自分の業界や事業領域にあるものとは異なる視点や知識を活用することで、新しい価値を生む手法です。
テロワールしょうゆの場合は、ワイン製造の 「テロワール」 の概念を醤油作りに取り入れることで、醤油からは遠い世界の成功事例を転用し、他にはない 「テロワールしょうゆ」 を実現しました。
地域の歴史や伝統をストーリー化
もう1つの具体的な差異化のやり方として 「地域の歴史や伝統をストーリー化」 する方法があります。
商品がその地域と深く結びつく物語性を見出し、地域固有の魅力を持った存在にします。テロワールしょうゆでは群馬県産の原料を使用し、地元の観光名所のトンネル内で醤油を二次熟成するという、地域密着型で作られています。
差異化が生む価値
差異化とは単に他と違うことをするだけでなく、マーケティングの観点では差異化によってお客さんへの価値を生むことが大事です。お客さんにとって何かしらの 「うれしさ」 につながっているかです。
テロワールしょうゆは、安中という土地ならではの独自のやり方を取り入れてます。希少性や独自性、開発や製造へのこだわり、ストーリーも相まって、おいしい醤油というだけではなく親近感、郷土愛、地域への誇りのような感情的な情緒的価値をお客さんにもたらしているわけです。
遠い世界からの知識や視点を取り入れ、地域の歴史や伝統をストーリーに取り入れることでの差異化から、他にはない価値を生み出しているのです。
まとめ
今回は 「テロワールしょうゆ」 を取り上げ、学べることを見てきました。
最後に学びのポイントをまとめておきます。
- 差異化とは、他もできることをより良くやる、または、他ができない・やっていない・やりたくてもできないことをやる
- たとえば差異化の方法として、異業種の成功事例や伝統を応用する、その地域の歴史や伝統をストーリーとして取り入れ、商品と地域のつながりを強化する
- 差異化はただ違うことをやるのではなく、違いによってお客さんに価値をもたらしていることが大事
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