投稿日 2023/09/08

友達がやってるカフェ / バー。顧客インサイトから新たな価値を創造せよ!

#マーケティング #顧客インサイト #価値提案

お客さんが本当に求めているものを見抜けていますか?

マーケティングで大事なのは、「顧客インサイト」 という心の琴線の洞察を得ることにあります。では、どうやって顧客インサイトを見つけ、マーケティングの成功につなげればいいのでしょうか?

今回は、Z 世代から注目されている斬新なカフェを事例に、顧客インサイトからの価値提案の秘訣を探っていきます。

友達がやってるカフェ / バー



店員がため口で、友達感覚の接客が特徴の 「友達がやってるカフェ / バー」 が人気とのことです (これがお店の名前です) 。

 「めっちゃ久しぶりじゃん!お店で食べる?テイクアウト?」 。入店した途端、初対面の店員から友達のようにため口で話しかけられる。来店客も、少し恥ずかしがりながら 「久しぶり!お店で食べるよ!」 とため口で答える。このような "疑似友達体験" が味わえる新感覚のカフェバーが今、Z 世代の若者の間で話題だ。

TikTok では、同店 (引用者注: 友達がやってるカフェ / バー) を扱った動画が2023年5月25日時点で総計3000万回再生、500万以上の 「いいね」 を記録。若い人々のインサイトをどのように捉えて人気を獲得し、SNS 上での話題を創出したのだろうか。

 「友達がやってるカフェ / バー」 はその名の通り、店員が自分の "友達" であることをコンセプトとしたカフェバー。昼間はカフェ、夜間はバーとして営業する。(中略) 同店舗が目指すのは、一般的な飲食店のような 「完璧な接客」 ではない。ため口であえて 「雑でラフな接客」 (仕掛け人の kakeru の明円卓氏) をすることを最大の特徴としている。店員として採用するのは、若手の役者やタレントなどエンターテインメント業界で働く人たちだ。

友達がやってるカフェ / バーがユニークなのは、店員が友達かのような演技をするだけでなく、客自身も友達として演技することにある。

 (中略) 

同店舗には、「来店客が店員に合わせて演技をする」 という一般的なカフェには存在しない独自性がある。筆者が1人で来店した際には、注文後、食事が到着するまでの間に、店員が 「1人で寂しくない?話そ!」 と話しかけてきただけでなく、向かいの席に座ってきた。それに合わせるように、筆者も友達のように会話を楽しんだ。このような店員との即興演技が SNS で話題となり、「自分もやってみたい」 と店舗に多くの若者が来店するきっかけとなっている。

学べること


では 「友達がやってるカフェ / バー」 から、学べることを掘り下げていきます。

まずは流行っている背景について、Z 世代が置かれている環境から見ていきましょう。

Z 世代のコミュニケーションと自己表現


Z 世代にとって、SNS は日常の中に当たり前のように存在するものです。

友だちと常につながり、情報を共有し、自分の考えを広める手段として、彼ら・彼女らは写真や動画を普通に使いこなします。スマホ一台でどこでもコミュニケーションができる現代において、特に Z 世代は視覚的な情報を中心にコミュニケーションを行っています。

Z 世代にとって SNS は自己表現を行う場であり、他人の目を意識する空間です。用途やコミュニティに応じて異なる SNS を使い、さらに1つの SNS 内でも複数のアカウントを使い分けることで、投稿する側・見る側の両者にとって快適な環境を作ろうとします。

他人への気配りを怠らず、場合によっては自分から主張して意見を述べることを控える傾向も見られます。特に社会的な問題などセンシティブなテーマでは、より慎重な態度を取ります。

新鮮な疑似友達体験


そんな Z 世代にとって、「友達がやってるカフェ / バー」 での友達感覚の接客は新鮮な体験になります。

SNS では本音のトークや素の自分を見せることがなかなかできないので、リアルな対面での店員とのため口のコミュニケーションは、日常にはない楽しさを感じるのでしょう。

マーケティングと顧客インサイト


マーケティングで大事なのは、ターゲットとなるお客さんの 「顧客インサイト」 をいかに見抜き、インサイトにもとづいた価値を提案することです。

顧客インサイトとは 「お客さんを動かす隠れた気持ち」 です。お客さんが普段は意識していないものの、そうだと気付かされると心の琴線に触れ、態度が変わり行動に強く影響する奥にある本音を指します。顧客インサイトのことを 「心のツボ」 や 「心のホットボタン」 と言ったりもします。

具体的な顧客インサイトと価値提案


友達がやってるカフェ / バーを顧客インサイトという視点で見てみましょう。

Z 世代である若者が持つ顧客インサイトは 「普段の友達と SNS でのやりとりではできないような、リアルな対面で、相手に忖度をしたり過度な気配りをしなくてすむフレンドリーなコミュニケーションをしたい」 です。

Z 世代のインサイトに対する価値提案が、「スタッフとの友達感覚でのため口を通じた会話体験」 なのです。

マーケティングの成功のカギを握るのは、顧客インサイトまでの深い顧客理解、インサイトにもとづいた価値定義、そしてインサイトに響く価値提案です。


まとめ


今回は 「友達がやってるカフェ / バー」 をご紹介し、学べることを見てきました。

最後に学びのポイントをまとめておきます。

  • マーケティングでは 「顧客インサイト」 をいかに見抜けるかが大事

  • 顧客インサイトは 「お客さんを動かす隠れた気持ち」 。心のツボや心のホットボタン。普段は意識していないが、そうと気付かされると態度が変わり、行動に強く影響する奥にある心理

  • お客さんが本当に求めている顧客インサイトまで理解し、顧客インサイトという心の琴線に触れる価値をつくり、提案することが成功のカギ


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。