Google は今年2023年で創業25周年を迎えました。
今回は Google のビジネスを紐解きます。
Google が検索サービスと検索広告で、どのように収益化を成功させたのかを解説します。
Google の検索サービス
サービス開始から今も、Google の検索サービスは無料でユーザーに提供されています。
検索サービス自体を有料とする選択肢もあったはずですが、Google はそれをしませんでした。
広告とつなげてのマネタイズ
代わりにやったのは、検索結果ページに 「検索キーワードと関連性が高い情報が出る枠」 を用意したことでした。この枠を有料で企業に販売するという、検索に広告という仕組みを取り入れたのです。
この枠 (広告欄) が企業にとって価値があるのは、そのキーワードで調べた人には検索関連のニーズがあるので、その人をピンポイントで狙って宣伝ができるからです。
検索結果に表示できる手段には、お金は払ってでも欲しいビジネスニーズがあったわけです。
Google が持っているデータ
Google は検索サービスは無料提供のままでも、検索データを活用した検索広告から価値化と収益化を実現しました。
私たちが Google から学べるのは、データを活用し価値にする方法です。どうやって価値化へのハードルを乗り越えるかに学びがあります。
前提として Google が持っている検索データですが、データとは検索をした人の 「検索キーワード」 です。例えば、「東京駅 カフェ」 、「北海道 来週 気温」 といった、検索利用者が検索ボックスに入力する語句をデータとして保存しています。
検索キーワードから、その人の興味や知りたいことが見えてきます。先ほどの例で言えば 「東京駅 カフェ」 は東京駅で飲食店を探している、「北海道 来週 気温」 は来週に旅行か出張で北海道に行く予定があり現地の気温から着ていく服の参考にしたい、という興味関心やニーズです。
では Google はどのようにして、こうした検索データから価値化のハードルを突破したのでしょうか?
価値化への3つの壁の克服
データを活用し価値を生み、収益につなげるためには、次のような3つの壁が立ちはだかります。
✓ データ活用の3つの壁
- 機会発見の壁
- ソリューションの壁
- マネタイズの壁
それでは順番に Google がいかに3つの壁を超えたのかを見ていきましょう。
[壁 1] 機会発見
1つ目の 「機会発見の壁」 とは、データがビジネスで何の問題を解決するかを見出すハードルです。活用する機会を見つけることが最初の関門です。
Google はユーザーが検索するという行為に、事業会社からのビジネス機会を発見しました。
商品やサービスをお客さんに売っている事業会社がやりたいことは、自分たちの商品・サービスに興味を持ってもらえそうな人、買ってもらえそうな人に直接アピールしたり宣伝することです。
想定しているニーズを持っている人が見つかれば、その人たちだけに商品のことを効率よく伝えたいというニーズがあります。
たとえば自宅用の子ども用プールを売っているメーカーにとっては、子どもがいてビニールプールを買いそうな人を見つけたいわけで、こうした企業ニーズが Google にとってのビジネス機会になったのです。
[壁 2] ソリューション
2つ目は 「ソリューションの壁」 です。機会を見つけたとして、データを使って問題を解決し価値を提供できるかです。
問題を特定したとしても解決できなければ、データから価値につながりません。Google がやったことは、検索結果ページの一番上の目立つ位置に企業向けの専用スペースを用意しました。ここに検索キーワードに沿った商品・サービス情報が表示されるようにしたのです。
あらかじめ検索ワードを指定しておき、たとえば 「子ども プール 家」 とし、このキーワードで実際に検索した人に検索結果ページに子ども用ビニールプールの商品を表示しアピールします。企業にとっては、興味があり検索していて、買ってくれそうな人だけに見せることができます。
つまり Google がやったことは、検索データを使って、買いたい人と売りたい人をマッチングしたわけです。
ある人が 「子ども プール 家」 と検索したときにはビニールプールを見せますが、同じ人でも別の検索で 「晩ごはん 白菜 にんじん 献立」 とした場合には見せません。あくまで自社商品へのニーズがある検索した時に知りたいこと、興味のあることに関連する情報を届けたいからです。
Google のコンセプトは 「適切な人に、適切な情報を、適切なタイミングで届けること」 です。
[壁 3] 収益化
3つ目の 「マネタイズの壁」 は、価値提供から収益を生めるかです。
ビジネスでは後からでもいいので、稼げる仕組みをつくることが重要です。Google は、検索結果ページへの表示スペース (アピールする場所) を有料で提供することにしました。
企業にとっては、興味があり買ってくれそうな人への宣伝機会は、お金を払ってでも欲しいものです。そこから商品・サービスが売れれば、Google にお金を払ってでも元は取れます。
Google は広告がクリックされればお金を支払ってもらう課金方法にしました (その後に広告がクリックされなくても表示されればお金を支払ってもらう課金方法も追加されました) 。広告がクリックされるという成果があった時だけに広告主は支払うので、払う側にはわかりやすく納得感のある支払い方法です。
以上のように Google は保有していた検索ワードデータを企業 (顧客) にとっての価値に変え、提供価値への対価として収益化まで実現しました。今でも検索広告は Google の収益源の多くを占め、親会社の Alphabet 全体の売上の 6割近い規模です (ちなみに YouTube などの広告全体では Alphabet の売上の8割) 。
戦略の観点で紐解くと
それでは Google の検索サービスと検索広告を、戦略の視点から掘り下げてみましょう。
2つの戦略アプローチ
戦略には 「意図的戦略」 と 「創発的戦略」 の2つがあります。
意図的戦略はあらかじめ計画されてつくられた戦略です。これは戦略の一般的なイメージでしょう。
一方の創発的戦略とは、最初は明確な戦略はなかったがやってみてたらうまくいきそうだとわかり、後から戦略になったものです。
意図的戦略は 「戦略 → 実行」 ですが、創発的戦略での順番は 「実行 → 戦略 → 実行」 です。最初に戦略がない中での実行があります。やってみて筋が良いことがわかり戦略がつくられ、戦略を本格的な実行に移します。
創発的だった検索サービスと検索広告
創発的戦略の流れ (実行 → 戦略 → 実行) は、Google が検索でやったことがまさに当てはまります。
Google は検索サービスを開発した時点では、検索と広告は結びつけていなく、収益化できる戦略や計画はありませんでした。検索サービスはユーザーを獲得できていましたが収益化できず、ビジネスとしてはむしろ苦しい状況だったわけです。
後から検索連動型広告が生まれました。
流れを整理すると次のようになります。
✓ Google 検索の創発的戦略
- 検索サービスの仕組みを開発し無料で提供した
- 検索結果ページに有料表示枠 (広告の仕組み) をつくってみた
- 検索した人に宣伝する機会はお金を払ってでも欲しいビジネスニーズだとわかった
- 検索広告のビジネス化
- 事業戦略がつくれら、本格的に実行された
- 今も検索広告は Google の収益を支えている
まずはやってみよう
Google から私たちが学べるのは 「まずはやってみる」 という実行の重要性です。組織でも、個人のレベルでも同じです。
行動や実行が大事なのは、行動することでしかわからない体験や知識があるからです。なるべく早く、一歩でも半歩でもいいので自分の足を踏み出してみましょう。行動することによって初めて見えてくるものがあります。
まとめ
今回は Google の検索サービスと検索広告から、学べることを見てきました。
最後に学びのポイントをまとめておきます。
✓ データ活用の3つの壁
- 機会発見の壁: データを活用する機会 (解決したい問題) を見つけられるか
- ソリューションの壁: データから問題解決をし価値を提供できるか
- マネタイズの壁: データでの価値提供から稼げる仕組みをつくれるか
✓ 戦略と実行
- 創発的戦略は最初は明確な戦略はなかったが、やってみてたらうまくいきそうだとわかり、後から戦略ができ、本格的に戦略が実行される (実行 → 戦略 → 実行)
- 「まずはやってみる」 という実行が大事
- 実行が大切なのは、行動することでしか得られない経験や知見があるから。行動することによって初めて見えてくるものがある
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