市場で新しいお客さんを獲得するためには 「リプレイス」 、つまり既存商品にはない新しい価値を提供する商品で置き換えることが重要です。
では、リプレイスはどのように実現すればいいのでしょうか?
今回は、アサヒビールの 「スーパードライ 生ジョッキ缶」 の事例から、新規事業を成功させる秘訣をぜひ一緒に学んでいきましょう。
外食でも 「スーパードライ 生ジョッキ缶」
出典: アサヒビール
アサヒビールが 「スーパードライ 生ジョッキ缶」 の飲料シーンを外食に広げています。
アサヒビールは家庭向けの缶ビール 「スーパードライ 生ジョッキ缶」 で飲食店向けの展開を始めた。蓋を開けると、生ビールのように泡が沸き立つ商品で、今春から牛丼チェーン 「松屋」 が採用した。ビールサーバーの洗浄など作業負担を軽減できることもあり、外食チェーンに生ジョッキ缶を売り込み販売量を底上げする。
松屋フーズが展開する松屋では3月末から340ミリリットル缶を290円、牛皿とのセットを500円で販売している。2022年末に関東で実施したテスト販売が好評で、導入を全店に広げた。
従来は生ビールを提供していたが、生ジョッキ缶の採用後はビールサーバーを撤去した。アサヒによると、業務用の生ビールは開栓してから3日以内に消費しないと品質が劣化する。サーバーを洗浄する手間もかかり、導入を見送る飲食店もあった。
生ジョッキ缶は冷蔵庫から取り出すだけで提供でき、店舗運営の効率化につながる。松屋フーズ商品部の上田納央紀チーフマネジャーは 「冷えたものを提供するだけなので (従業員の作業が) 格段に楽になっている」 と話す。店舗での酒類売り上げは前年に比べ2割増のペースで推移しているという。
学べること
アサヒビールの 「スーパードライ 生ジョッキ缶」 は、販売先を家庭向けビール市場 (BtoC) から飲食店向け (BtoB) へと広げています。
今回の事例から学べるテーマは、「既存の商品といかに差異化をするか」 です。既存商品を置き換えるというリプレイスに学びがあります。
2つのターゲット顧客への価値提供
マーケティングの観点でのポイントは、「スーパードライ 生ジョッキ缶」 が 「2つのターゲット顧客」 にそれぞれ価値をもたらしていることです。
2つのターゲット顧客とは、アサヒの直接的な取引相手である飲食店、もう1つは飲食店の来店客 (エンドユーザーである生活者) です。異なる立場のお客さんに対して、それぞれに見合った価値を提供することが大事です。
飲食店に対して生ジョッキ缶が提供する価値は、業務の効率化、在庫管理の簡易化、売上向上です。具体的には、ビールサーバーの洗浄やメンテナンスなどの手間が省けることで業務効率が向上し、未開封の生ジョッキ缶は長期保存が可能なため在庫管理がしやすくなります。そして何よりも、生ジョッキ缶の導入はお店の売上向上に貢献しました。
一方、来店客に対する生ジョッキ缶の提供価値は、飲食店で今までにない生ビール体験ができる点です。通常は生ビールはガラスのジョッキで飲みますが、「スーパードライ 生ジョッキ缶」 は生ジョッキ缶を開けると、ビールが泡立つ感覚も楽しめます。
リプレイスを成功させる方法
アサヒは BtoC のヒット商品を BtoB にも展開し、従来の業務用生ビールから 「スーパードライ 生ジョッキ缶」 に置き換えることに成功しました。
実現できたのは、それぞれのお客さんに対するメリットがあったからでした。
既存のものと置き換えるというリプレイスを成功させるには、一般化すると以下の4つが成功のカギを握ります。
✓ リプレイスを成功させる方法
- ターゲット顧客の定義: お客さんは必ずしも1つに限定されるわけではなく、複数のお客さんを想定する
- 置き換える商品の設定: 競合となる商品やサービスを明確にする
- 既存商品の未充足ニーズの把握: 既存の商品によってターゲット顧客に生じている 「不」 (不便や不都合, 不満など) を見つける
- 新しい価値の実現: その 「不」 を解消する、競合に比べて優れた利点やこれまでにない便益を新しい価値として提供する
まとめ
今回はアサヒの 「スーパードライ 生ジョッキ缶」 を取り上げ、学べることを見てきました。
最後に学びのポイントをまとめておきます。
- 新しい市場で勝ち筋をつくるには、その市場での既存の商品やサービスと差異化をし、既存の商品から置き換えられるか (リプレイス) がポイント
- リプレイスを成功させるには、
1. 顧客定義
2. 競合商品 (置き換える対象) の見極め
3. 既存商品で解決されていない問題やお客さんの未充足ニーズの理解
4. 新しい価値の提供
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