投稿日 2022/01/14

センサリーマーケティングとパルス型消費との共通点に見る、消費者インサイトの発見と活用の方法


今回のテーマは、マーケティングでの顧客理解です。

✓ この記事でわかること
  • 人の五感に訴える 「センサリーマーケティング」 とは?
  • Google が提唱する 「パルス型消費」
  • 2つの共通点とは?
  • マーケティングに学べること
  • 顧客インサイトの発見と活用の方法

おもしろいと思った2つのマーケティング理論を取り上げます。2つに共通する本質を掘り下げ、マーケティングに学べることを一緒に見ていきましょう。

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

五感に訴える 「センサリーマーケティング」


1つ目のマーケティング理論でご紹介したいのが、センサリーマーケティングです。MarkeZine の記事を読んで知りました。

開封率が強みの紙の DM でメッセージを伝える - 有識者 & 調査結果からコツを学ぶ|MarkeZine

デジタルではなく、あえて 「紙の DM 」 にフォーカスを当てた記事です。実際の DM 事例や調査結果から、紙の DM で成功させるポイントが学べます。

この記事の中に紹介されていたのが、センサリーマーケティングでした。

センサリーマーケティングとは


センサリーマーケティングとは、生活者の感覚 (センサー) に働きかけ、生活者の評価や知覚 (パーセプション) 、行動に影響を与えるアプローチです。

以下は記事からの引用です。

通常のコミュニケーションでは、外部から刺激 (情報) を受けると、感覚レジスター (視覚・嗅覚・聴覚など、人の五感) に入り、頭の中に短期記憶としてとどまり、さらに長期記憶を含めながら情報処理し、その結果、ロイヤルティが高まる、購入に至るといった流れが想定されている。

一方、センサリーマーケティングの場合は、短期記憶を経由せず、明確な意識なしに評価や行動に結びつく。
センサリーマーケティング (出典: MarkeZine)

センサリーマーケティングの具体例


記事ではセンサリーマーケティングの具体例について、記事テーマである紙の DM を使って次のように説明しています。

紙を用いる DM では、様々な工夫によって、センサリーマーケティングの考え方を体現することができる。

たとえば、素材を変えることで触覚に刺激を与えたり、香りや音を付けたりといった方法が挙げられる。あるリゾートホテルでは、宿泊から2週間後に送るサンキューレターにそのホテルの香りを付け、楽しかった思い出を思い起こさせる取り組みをしているという。

使用する色も大きなポイントで、色によって人々の購買行動に影響を与えられることが実験で確認されている。

センサリーマーケティングの考え方は、Google が提唱している 「パルス型消費」 にも通じます。


Google が提唱した 「パルス型消費」


2つ目のマーケティング理論でご紹介したいのは、パルス型消費です。Google が2019年に打ち出しました。

パルス型消費とは


パルス型消費とは、スマホを操作している時に気になる商品を発見し、瞬間的に買いたい気持ちになり購入を完了させる消費者行動です。

従来の消費行動で一般的に言われていたのは、購買プロセス AIDMA の 「認知 - 興味 - 欲求 - 記憶 - 行動」 を徐々に進み、階段を上がっていくようなプロセスでした (ジャーニー型購買プロセスで下図の左) 。

パルス消費の特徴は瞬間的に買いたい気持ちが生まれ、一気に欲しいまで駆け登ります (右側がパルス) 。
左は従来の 「ジャーニー型」 、右が 「パルス型消費」 (出典: Think with Google)

パルス型消費の具体例


パルス型消費の具体的なイメージとして、Google は次のように説明しています。

 「パルス型消費行動」 の特徴として、特定の商品を購入する意図を持たない情報収集から開始する場合が多いことが挙げられます。

具体的には、ひどい花粉症に悩んでいる人が、「花粉症の時期には沖縄に旅行にいく」 というブログをスマホで目にした結果、衝動的に沖縄旅行を予約してしまうといった行動です。この例でいえば、花粉症に悩んでいる人は多くの場合すでに薬を飲んでいます。それでも好転しないという 「悩み」 に対して、旅行という想定外の 「ソリューション」 を偶然知るのです。

この場合、「花粉でつらい自分」 という意識が高まった状態で情報に接触しています。このためブログの記事にセレンデピティを感じ、商品の存在を知った瞬間、それまで想定していなかった購買行動に一気に踏み切ったと考えられます。

2つの共通点


ここまで見てきた 「センサリーマーケティング」 と 「パルス型消費」 の共通点を掘り下げていきましょう。

結論ですが、2つの共通点は 「消費者インサイトの発動」 です。これを本質と見ました。

消費者インサイトとは、一言で言えば 「人を動かす隠れた気持ち」 です。普段は消費者本人も意識していなく自覚していませんが、そうだと気づかされれば、何かしらの行動を起こす奥にある感情です。行動とは具体的には、買ってみる、使う、来店する、指名するなどです。

このような奥にあったインサイト (気持ち) が、何かのきっかけで表に出てくるわけです。例えば、工夫が施された紙の DM や、スマホで何気なくニュースやブログを読んでいる時です。

インサイトは買うなどの行動につながる影響力が大きいものです。消費者インサイトが本人も予期せぬ形で発動し、その場で買うという行動まで起こることを理論立てて説明するのが 「センサリーマーケティング」 や 「パルス型消費」 です。


学べること


では最後に、センサリーマーケティングとパルス型消費から学べることを整理しておきましょう。

一言で表現すれば、学びは 「ターゲット顧客のインサイトまで理解し、戦略や打ち手につなげよう」 です。

マーケティングでは顧客理解が重要です。お客さんの理解を表面的なレベルではなく、顧客インサイトという 「本人も普段は自覚していないが、そうだと気づかされれば行動を起こす奥にある気持ち」 までの理解です。

そして、理解したインサイトをマーケティング戦略や施策に活かすことが大事です。

マーケターとして常に自分 (たち) に問いかけたいのは、次の3つです。

✓ インサイトの発見と活用
  • 既存顧客や見込み客のインサイトは何か?
  • その打ち手はどんなインサイトにもとづいているのか?
  • 商品・サービスからの価値提案は、お客のインサイトを揺さぶるか (心の琴線に触れるか) ?

以上が、今回の学びとして残しておきたいメッセージです。


まとめ


今回は、センサリーマーケティングとパルス型消費を取り上げ、共通点からマーケティングに学べることを見てきました。

最後にまとめです。

センサリーマーケティングとパルス型消費
  • センサリーマーケティングとは、生活者の五感 (センサー) に働きかけ、生活者の評価や知覚 (パーセプション) 、行動に影響を与えるアプローチ
  • パルス型消費は、瞬間的に買いたい気持ちになり、買いたい商品を発見し、その瞬間に購入を完了させる消費者行動

2つの共通点
  • 2つに見る本質は 「消費者インサイトの発動」
  • 消費者インサイトとは 「人を動かす隠れた気持ち」 。普段は本人も意識していないが、そうだと気づかされれば行動を起こす奥にある感情

インサイトの発見と活用
  • ターゲット顧客のインサイトまで理解し、戦略や打ち手につなげることが大事
  • 既存顧客や見込み客のインサイトは何か?
  • その打ち手はどんなインサイトにもとづいているのか?
  • 商品・サービスからの価値提案は、お客のインサイトを揺さぶるか (心の琴線に触れるか) ?


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。