投稿日 2022/01/16

軽井沢の風を再現する 「ウィンドユニット」 。「商品化の3つのハードル」 を乗り越える方法

出典: 電波新聞

今回のテーマは、商品開発です。

✓ この記事でわかること
  • ゆらぎのある 「軽井沢の自然の風」 を再現した送風機
  • 「ウィンドユニット」 の開発ストーリー
  • マーケティング視点で学べること
  • 商品化への3つのハードルとは?
  • 乗り越える方法

おもしろいと思った送風機を取り上げ、開発ストーリーを見ていきます。そこから商品開発に学べることをマーケティングの視点も入れながら解説しています。

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

軽井沢の自然の風を再現した送風機


ご紹介したいのはオフィス向けの送風機です。

ダイキン工業とオカムラが共同で、自然の風を再現する 「ウィンドユニット」 を開発しました (ニュースリリースはこちら) 。


ウィンドユニットの特徴は、「軽井沢の自然の風」 です。

開発では実際の軽井沢の自然の風を測定し、測定データをもとにオフィス全体に吹き抜ける不規則な風 (ゆらぎのある風) を再現する送風機を作りました。

狭い範囲に一定の強さやリズムの風が吹き付ける一般的な扇風機よりも、ウィンドユニットは自然で快適な風を体感しやすいとのことです。

オフィス内のレイアウトによっては空気のムラが生まれますが、ウィンドユニットはこれを解消する効果もあり、換気効率の向上にもつながるようです。

中央の灰色の設備がウィンドユニット (出典: 電波新聞)

ウィンドユニットの提供価値をまとめると、次の2つです。

✓ ウィンドユニットの価値
  • ゆらぎのある自然の風で身体に心地よく感じる
  • 室内の空気のムラをなくし、換気効率を向上させる


 「ウィンドユニット」 の開発ストーリー


おもしろいと思ったは、開発のきっかけでした。

ダイキン工業とオカムラの共同開発は、コワーキングシステムからでした。東京・丸の内にある、企業が最新技術を持ち寄って新たな商品やサービスを実証実験するコワーキングスペースを通じて開発がスタートしたとのことです。

両社の強み (技術やノウハウ) を持ち寄り、掛け合わせているのも興味深いです。

ダイキン工業は、送風の技術やノウハウを持ち、研究体制もあります。

ダイキン工業は、空調メーカーとして自然の風が持つ快適性に着目し、軽井沢や尾瀬、上高地などを含む全国の著名な避暑地8カ所で自然の風のデータを収集し、解析を進めてきたそうです。

予測できない不規則なリズムで、広範囲に当たる風のほうが、扇風機等の狭い範囲に吹く風と比べてより自然に近く、快適に感じるというノウハウを持っていました。

オカムラは、オフィス家具の設計、製造ノウハウを保有しています。

この2社が強みが組み合わさり、他にはない独自の送風機 「ウィンドユニット」 が生まれたのです。


学べること


ではウィンドユニットについて、マーケティングの観点から学べることを掘り下げていきましょう。

ポイントは、市場の変化をビジネスチャンスとして捉え、商品化したことです。

市場の変化


順番に説明をすると、市場の変化とは、環境やライフスタイルの変化から、生活者の認識や価値観が変わったことです。

具体的には、オフィスなどの半閉鎖空間において、空気の滞留やよどみに対する関心の高まりです。これまでは、冬場の締め切ったフロアや部屋での空気の乾燥を気にする程度でしたが、しかし今は室内の換気への意識が強いです。

こうした人々の認識や価値観の変化があり、ダイキン工業とオカムラは市場の変化に目をつけ、ビジネス機会を発見したわけです。

ソリューションの商品化


新しく顕在化してきたニーズに対して、自分たちならではの解決策 (ソリューション) を見出しました。

ただし、ソリューションとは、目に見えるモノではありません。解決策というあくまで方針です。

ソリューションは、商品やサービスという具体的な何かにまで落とし込むことが大事です。今回の例では、ウインドユニットという揺らぎのある自然な風を作り、室内の空気のムラを無くす商品です。


商品化への3つのハードル


では最後に、今回の学びを整理してみましょう。

一言で言えば、学びは 「商品化への3つのハードルを乗り越えよう」 です。

3つのハードルとは次の通りです。

✓ 商品化への3つハードル
  • ビジネス機会の発見
  • 発見した機会を生かすソリューションの選択
  • ソリューションを実現する商品化

市場の変化や消費者トレンドの兆しをつかめても、全体の中ではまだ道半ばです。

発見したビジネス機会を、自分たちの事業の成果や成長につなげることが必要です。

機会を生かすソリューション (解決策) を選び注力し、ソリューションという目に見えない方針を実現する商品を作り、お客に価値を提供します。

今回の事例では、以上の商品化への3つのハードルをコラボによって1つずつ乗り越え、「ウィンドユニット」 という商品を生み出したのがダイキン工業とオカムラです。


まとめ


今回はオフィス向けの送風機 「ウインドユニット」 を取り上げ、商品開発に学べることを見てきました。

最後にまとめです。

ウィンドユニット
  • ダイキン工業とオカムラが共同開発したオフィス向け送風機
  • 特徴はゆらぎのある 「軽井沢の自然の風」 を再現し、空気のむらを解消し室内の換気効率を上げる
  • 市場の変化をビジネスチャンスとして捉え、「商品化への3つのハードル」 を乗り越えた事例

商品化への3つハードル
  • ビジネス機会の発見 (例: 環境や生活者ライフスタイルの変化による認識・価値観の変容)
  • 発見した機会を生かすソリューションの選択
  • ソリューションを実現する商品化。ソリューションは目に見えない方針なので、方針を形にした商品を作る


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。