投稿日 2022/01/07

三井住友のナンバーレスカードの人気の秘密とは? 「引き算と足し算」 からの価値のつくり方


今回のテーマは、商品開発やマーケティングです。

✓ この記事でわかること
  • 三井住友のナンバーレスカード
  • ナンバーレスの狙いと提供価値 (ヒット理由)
  • 本質は 「引き算と足し算からの価値提供」
  • 商品開発に学べること

登場後にまたたく間に人気を呼んだクレジットカードを取り上げ、ヒット理由を読み解きます。そして商品開発やマーケティングに学べることを解説しています。

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

三井住友のナンバーレスカード


今回ご紹介したいのは、三井住友のナンバーレスカードです。

ナンバーレスというのは、通常のクレジットカードに記載されているカード番号や有効期限、裏面のセキュリティコードがないクレジットカードです。

一般的のクレジットカードと比べると、ナンバーレスカードはシンプルなデザインです。


三井住友カードのナンバーレスカードは2021年2月にリリースされ、2021年12月時点で累計70万枚を突破し史上最高ペースで発行されているとのことです (参考) 。


専用アプリで不便さを解消


クレジットカードにカード番号や有効期限の情報が載っていないのは、不便な時もあります。例えばネット注文でクレジットカードから決済をする時の、クレジット番号やセキュリティコードの入力です。

この不便さを解消するために、専用アプリの Vpass と連動させています。Vpass をスマートフォンにダウンロードし、あらかじめ会員情報を登録しておくと、カード番号やセキュリティコードが必要な時にアプリから確認できます。


ナンバーレスの狙いと提供価値


Marketing Native の記事に、ナンバーレスの狙いが書かれていました。

プロダクトの責任者を務めた 「三井住友カード 商品企画開発部グループ長」 の方のコメントを、記事から引用します。

なぜこのようなカードが誕生したのでしょうか。そこには 「安心・安全なキャッシュレスの環境を提供する」 という三井住友カードが掲げる理念が関係していました。

 「当社ではこれまでもお客様の利用状況を24時間365日体制で監視したり、利用のたびにスマートフォンアプリで通知するなど、安心・安全に配慮した取り組みを行ってきました。そうした中、さらにお客様に安心・安全を感じていただけるセキュリティとはどうあるべきかをチームメンバーで検討し、たどり着いたのがナンバーレスカードです。

そもそも、券面に記載された情報はとても重要なので、厳重に管理してくださいと日頃からお伝えしているのですが、店頭などでご利用いただく際は店員さんにカードを一旦お渡しする場合があります。これではパスワードや暗証番号を紙に書いて渡すのと同じことです。

券面から重要情報をなくすことで安心・安全に対するお客様の信頼度が向上し、クレジットカードをよりご利用いただけるきっかけになると考えました」

クレジットカードでは当たり前のように付いていたカード番号などをなくしたことで、利用者には安全・安心で、かつ利便性も失っていないところにヒット理由があるのです。


ナンバーレスカードの本質


では三井住友のナンバーレスカードについて、本質は何かを掘り下げてみましょう。

一言で結論を言うと、ナンバーレスカードの本質は 「引き算と足し算からの価値提供」 です。

 「引き算」 とは、クレジットカードには一般的には必ず表示されているカード番号などを取り除いたことです。一方の専用アプリと連動させるという 「足し算」 によってセキュリティを担保しつつ、ナンバーレスの不便さを解消しています。

このような引き算と足し算の両方で、他のクレジットカードにはない独自なポジショニングを築いています。重要なのは独りよがりの独自化ではなく、差異化が利用者の価値につながっていることです。


学べること


では最後に、三井住友のナンバーレスカードから学べることについて整理してみましょう。

一言で表現すれば、学びは 「自分たちにとっては当たり前すぎることに、健全な疑いの目を向ける重要性」 です。

ナンバーレスカードに当てはめれば、クレカにカード番号が書かれていることはどのカードにも共通している常識でした。

三井住友はここに目をつけ、業界の常識を打ち破りました。単にカード番号をなくしただけではなく、なくすことでの不便さの解消も同時にやっています。

このように、自分たちには当たり前のことで気にも留めていなかったところにあらためて着目し、引き算と足し算によって他にはないユニークな独自化につなげました。

ナンバーレスカードの事例から商品開発やマーケティングのヒントになるのは、 「当たり前を疑い、引き算と足し算の独自化からのお客への価値提供」 の実現方法です。


まとめ


今回は三井住友のナンバーレスカードを取り上げ、商品開発やマーケティングに学べることを見てきました。

最後にまとめです。

三井住友カードのナンバーレスカード (クレジットカード)
  • ナンバーレスカードの本質は 「引き算と足し算からの価値提供」
  • クレジットカードには一般的には表示されているカード番号・有効期限・セキュリティコードをなくした [引き算]
  • 専用アプリと連動させセキュリティを担保しつつ、ナンバーレスの不便さを解消した [足し算]

学べること
  • 自分たちにとっては当たり前すぎることに、健全な疑いの目を向ける重要性
  • ナンバーレスの事例からは 「当たり前を疑い、引き算と足し算の独自化によるお客への価値提供」 にヒントが得られる


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 合同会社の代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。