出典: キユーピー
今回のテーマは商品開発です。
✓ この記事でわかること
- キユーピー 「レシピひろがるパスタソース」 のヒット理由
- 商品開発のきっかけ
- 知らない消費者ニーズとの向き合い方
- 学べること
- ① 未知の顧客ニーズを活用する方法
- ② OODA ループからの商品開発
ヒット商品のパスタソースを取り上げ、理由を解説しています。
そこから商品開発に学べることを、マーケティングの観点も入れながら一緒に見ていきましょう。
よかったら最後までぜひ読んでみてください。
レシピひろがるパスタソース
今回ご紹介したいのは、キユーピーの 「レシピひろがるパスタソース」 です。
出典: キユーピー
以下は日経新聞の記事からの引用です。
キユーピーが9月に発売したパスタソース 「レシピひろがるパスタソース」 の滑り出しが好調だ。
コロナ下で在宅での調理機会が増す中、炒め物などパスタ以外のメニューにも活用できるように工夫。9月の出荷数量は当初予想の2倍に及んだ。
開発ストーリー
興味深かったのは、開発背景でした。
きっかけは消費者調査
再び日経からの引用です。
「消費者の約4割が、パスタソースをパスタ以外の用途に使っている」
キユーピーが新しいパスタソースの開発に乗り出したきっかけは、同社が2年に1度実施するパスタソースに関する定点調査だった。調査ではパスタソースをドリアやグラタン、ソテーなどに活用する消費者の姿が浮かび上がった。
調理食品部の川合康介チームリーダーがこの結果に着目。18年からパスタ以外の用途にも使いやすいソースの開発を進めてきた。
「風味の維持」 が課題
パスタソースをパスタ以外の調理に使ってもらうために、開発には課題がありました。
課題とは、風味の維持です。
調味料として少しの量を何度も繰り返し使うことを想定したので、パッケージ容器はパスタソースで一般的な使い切りの缶やレトルトパウチではなく、チューブボトルを採用しました。しかし今までのパスタソースは一回での使い切りが前提だったので、一度使ってから時間が経つと風味が落ちてしまうのです。
既存の社内技術の有効活用
そこでキユーピーが目をつけたのは、ドレッシングなどの調味料に使う低酸・低塩の技術を活用することでした。社内にあった独自資産の有効活用です。
コクの深い味わいと、日持ちとの最適なバランスを実現するために試行錯誤を続け、約3年をかけて開発されて生まれたのが 「レシピひろがるパスタソース」 です。
知らない消費者ニーズからの着想
キユーピーの 「レシピひろがるパスタソース」 の開発で興味深いのは、売り手 (キユーピー) が把握していなかった 「パスタソースの使われ方」 にビジネスチャンスを見出したことです。
使われ方とは、パスタソースをパスタ以外のグラタンやドリアなどへの調味料としてです。作り手が想定していなかった利用用途をイレギュラーなものとして切り捨てずに、むしろ積極的に取り入れたわけです。
パスタソースをグラタンなどの調味料にするために、単にコミュニケーションだけでレシピ紹介をするだけではなく、商品開発から立ち戻って着手しました。
1回での使い切りの缶やレトルトパウチではなくチューブボトルを採用し、チューブボトルで少量ずつの使用でも風味が落ちない工夫を入れました。ここにヒット理由があります。
学べること
それでは最後に、「レシピひろがるパスタソース」 から商品開発に学べることを整理してみましょう。
商品開発やマーケティングの観点から、学びを一言で言えば 「お客さんの意外な使い方を異端として排除せずに、ビジネスチャンスに変えよう」 です。
今回見てきたように、本来はパスタに使うと想定していたパスタソースは、売り手の想定外の多様な使われ方がされていました。消費者の4割もいたわけです。
一般化すると、次のようなプロセスでヒット商品が生まれました。
✓ 想定外の顧客ニーズからの開発ステップ
- 知らない利用用途の発見
- 顧客ニーズの本質理解 (その使われ方の奥にある望みや不満)
- 用途に適した商品開発
では、どうすれば先入観にとらわれずビジネス機会を見つけられるでしょうか?
ヒントは OODA ループにあります。
OODA ループからの商品開発
OODA ループとは一言で言えば、意思決定と実行のプロセスです。
OODA は英語の4つの単語の頭文字からです。
✓ OODA ループ
- Observe (観察) : 情報を収集する
- Orient (状況判断) : 収集した情報を解釈し、何を意味するのかを考える
- Decide (意思決定) : 状況判断から決断をする
- Act (行動) : 行動に移す
OODA ループを、今回の 「レシピひろがるパスタソース」 の商品開発に照らし合わせてみましょう。
次のようにきれいに当てはまります。
✓ 商品開発と OODA ループ
- 観察: 消費者調査でパスタソースのパスタ以外の利用用途を発見
- 状況判断: パスタではない調理への使われ方の意味合いの掘り下げ
- 意思決定: 単なる使い方やレシピの提案ではなく、新しく商品を開発をする決断
- 行動: パッケージはチューブボトルにし、風味が維持される社内技術を活用
OODA ループに沿って観察から入り、意味合いを解釈することで商品開発につなげた成功事例です。
まとめ
今回は、キユーピーの 「レシピひろがるパスタソース」 を取り上げ、ヒット理由から商品開発に学べること見てきました。
最後にまとめです。
知らない消費者ニーズからの着想
- キユーピーの 「レシピひろがるパスタソース」 の開発のきっかけは消費者調査から
- パスタソースがグラタンやドリアなどのパスタ以外に使われていた (消費者の4割)
- 作り手が想定していなかった利用用途をイレギュラーなものとして切り捨てずに、むしろ積極的に取り入れた
想定外の顧客ニーズからの開発ステップ
- 知らない利用用途の発見
- 顧客ニーズの本質理解。その使われ方の奥にある望みや不満まで
- 用途に適した商品開発
商品開発と OODA ループ
- 本来の用途以外の使われ方の発見 [観察]
- その使われる方の意味合いの掘り下げ [状況判断]
- どこまで新しく商品を開発をするかの決断 [意思決定]
- 新しい利用用途に適した商品開発 (例: 社内の独自資産の有効活用) [行動]
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