投稿日 2022/01/22

世相の奥にある消費者インサイトに刺さる 「アサヒ生ビール (マルエフ) 」 CM に学ぶ、マーケティングコミュニケーション


今回のテーマは、テレビ CM に学ぶマーケティングコミュニケーションです。

✓ この記事でわかること
  • 「アサヒ生ビール (マルエフ) 」 のテレビ CM が癒される
  • CM ストーリーの分析
  • マーケティングコミュニケーションに学べること
  • 成功法則 「 (インサイトに基づく) 問題提起 - 独自性 - 提供価値」 フレーム

おもしろいと思ったテレビ CM を取り上げ、ストーリーや構成を分析します。そこから学べることとして、マーケティングコミュニケーションで汎用的に使えるフレームを解説しています。

よかったら最後までぜひ読んでみてください。

アサヒ生ビールのテレビ CM


今回取り上げたいのは、アサヒ生ビールです。「マルエフ」 の愛称で親しまれています。


マルエフの30秒のテレビ CM が興味深かったです。


CM の内容と狙い、掘り下げた本質からマーケティングに学べることを見ていきましょう。


テレビ CM の狙い


日経クロストレンドに、この CM を取り上げた記事がありました。

CM の背景を記事から引用します (引用内の 「マルエフ」 はアサヒ生ビールのことです) 。

 「以前に比べて現代では、不要不急の事柄をそぎ落とすような空気感が生まれ、世の中全体の流れが速くなった。新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、閉塞感が生まれ、すさむ感情を発散できる場も少なくなった。そこで多くのユーザーに、癒やしやぬくもりを届けられるよう、マルエフを飲むとどこかホッとする優しいイメージを持たせた」 (大場氏)

大場氏が語るように、アサヒビールはマルエフの商品コンセプトを 「癒やし・ぬくもり・まろやかさ」 に設定して売り出した。しかし、同社にはマルエフのように 「温かみがある」 コンセプトのビールは珍しい。そもそもビールに 「ぬくもり」 というコンセプト自体が斬新だ。同社の主力商品 「スーパードライ」 を考えればよく分かるだろう。ビールといえば、やはりキレや爽快感が消費者の心に刺さるのだ。

CM のストーリー構成


では、マルエフの30秒 CM の中身を見ていきましょう。

CM は三部構成です。

第一部は、仕事帰りの女性 (新垣結衣さん) が、歩く人々と足早にすれ違いながら街並みの中を歩くシーンです。この場面ではせわしない様子が描かれ、新垣さんの 「何かと忙しい時代、心のゆとりを忘れてしまいそうで」 というセリフが出ます。

次の第二部は、にぎわう客の飲食店に変わります。カウンターに座った新垣さんが、満面の笑顔でグラスに注がれた生ビールを店員さんから受け取ります。

ここで 「ずっと前からお店で愛され続けてきた、このまろやかなアサヒ生ビール」 というセリフが入ります。アサヒ生ビール (マルエフ) が歴史のあるロングセラー商品であることを訴求しています。

最後の第三部は、居酒屋から自宅へ移ります。仕事終わりの自宅でもリラックスして、新垣さんは缶のマルエフをグラスで飲んでいるシーンです。スイッチがオフになったリラックスできる時間を満喫している様子が描かれています。


ここで、新垣さんがカメラ目線になり、「日本のみなさん、おつかれ生です」 というねぎらいの言葉をかけます。最後にマルエフを飲み、ほっとするシーンが描写され CM は終わります。



学べること (コミュニケーションのフレーム)


マルエフの CM のポイントは3つです。これが今回掘り下げたい学べることです。

✓ アサヒ生ビール (マルエフ) の CM 構成
  • 消費者インサイトに基づいた問題提起
  • 商品の独自性の訴求
  • 具体的に描写した価値提案

この3つは、実は CM の三部構成の順番そのものです。

では詳しく見ていきましょう。

消費者インサイトに基づいた問題提起


マルエフのテレビ CM では、最初のパートで視聴者が普段の生活でははっきりと意識できていないモヤモヤ感が描かれています。

具体的には、せわしない街中で人々があわただしく行き交う光景です。新垣結衣さんのセリフ 「何かと忙しい時代、心のゆとりを忘れてしまいそう」 も印象的です。

マーケティングの専門用語で、「消費者インサイト」 というものがあります。

消費者インサイトとは、普段は消費者本人も自覚できていない気持ちですが、そうと気づかされれば望みは不満としてはっきりと表れ、行動につながる奥にある本音です。心のツボと言ったりもします。

マルエフの CM で捉えている消費者インサイトは、「気軽に人と直接会ったり、一緒にご飯を食べることがはばかられ、いつまで続くかわからない閉塞感がある。でも、社会全体のことで自分ひとりではなんともできない、どこかあきらめのある気持ち」 です。何もできない無力感も相まって、普段は意識しなくなっている不満やモヤモヤしている感情です。

こうした奥にある消費者の本音を、リアルな描写から呼び起こし問題提起をしているのが第一のパートです。

商品の独自性の訴求


二部のパートでは場面が変わり、飲食店のカウンターでマルエフを飲んでいるシーンです。

ここではマルエフが、長年にわたり多くの人々に愛されてきた商品であることが描かれています。歴史あるロングセラー商品という、他のビール銘柄にはない独自性を訴求しているわけです。

具体的に描写した価値提案


第三部では場面が移り変わり、自宅でのアサヒ生ビールを飲むシーンです。

マルエフのコンセプトである 「癒し・ぬくもり・まろやかさ」 を伝えています。

特徴的なのは、グラスにビールを注ぎ飲んでいるシーンが、ゆっくりと味わうように描かれていることです。これはお茶の CM に近いイメージです。一般的なビールの CM ではごくごく飲むことが描かれますが、見せているアサヒ生ビールの飲み方は明らかに違います。

見ている人には、マルエフの提供価値として 「飲んで癒されるビール」 や 「ぬくもりを感じられる」 というイメージが残ります。最後に新垣結衣さんの 「日本のみなさん、おつかれ生です」 も効果的です。

これは CM の第一部で見た消費者インサイト 「閉塞感やストレスで先が見えない状況にはあきらめの気持ちがあるが、実は解放されたいという奥にある気持ち」 に対しての、マルエフからの価値提案なのです。

以上が、マーケティングコミュニケーションの成功法則となる、「 (インサイトに基づく) 問題提起 - 独自性 - 提供価値」 フレームです。


まとめ


今回はアサヒ生ビール (マルエフ) のテレビ CM に学ぶ、マーケティングコミュニケーションの方法を見てきました。

最後にまとめです。

マーケティングコミュニケーションの流れ
  • 消費者インサイトに基づいた問題提起。対象顧客の 「心のツボ」 に触れる悩みや困りごとから共感を得る
  • 商品・サービスの独自性の訴求。他にはない独自要素を伝える
  • 具体的に描写した価値提案。最初の問題提起に対する解決策として商品・サービスを見せ、お客が得られる価値イメージを持ってもらう


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 合同会社の代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。