投稿日 2022/01/02

スタバの 「カップ循環型サービス」 に学ぶ、お客との絆を深めるサービスのつくり方


今回は、マーケティングのエンゲージメント (絆) の深め方についてです。

✓ この記事でわかること
  • スタバのカップ循環型サービスとは?
  • カップ循環型サービスの2つの狙い
  • ① SDGs への取り組み
  • ② 来店・購入頻度とエンゲージメントの向上
  • マーケティングに学べること

スタバが始めたサービス実証実験を取り上げ、狙いをマーケティングの視点で解説をしています。

そこからマーケティングに学べることを一緒に見ていきましょう。よかったら最後までぜひ読んでみてください。

スタバの循環型サービス



今回ご紹介したいのは、スタバが始めた取り組みです。

スターバックス コーヒー ジャパンが、「借りて・返して・再利用」 ができるカップを利用した、循環型サービスの実証実験を始めると発表しました (ニュースリリース (2021年11月17日) はこちら) 。

東京都内・丸の内エリアの10店舗で11月22日からスタートしました。


今までもマイタンブラーやマイカップの持ち込み利用はできましたが、カップ循環型サービスではお客さんは手ぶらで来店し、カップを借りられる仕組みです。返却は3日以内とのことです。

使用されるカップは、写真のような蓋付きのステンレス製タンブラーです。


専用の LINE アカウントとつながれば、環境貢献度や自分の利用履歴の確認が可能です。

環境貢献度では、自身がいくつの使い捨て容器を削減できたかや、全利用者の使い捨て容器削減数が表示されます。



カップ循環型サービスの狙い


スタバの循環型サービスについて、狙いを掘り下げてみます。

狙いは2つあります。

✓ カップ循環型サービスの狙い
  • SDGs への取り組み
  • エンゲージメントの向上

では順番に見ていきましょう。

SDGs への取り組み


ゴミを減らすという環境に良い取り組み、今っぽい言い方をすると、SDGs に貢献することを身近なスタバでできます。スタバのお客さんにとっては、紙コップではなく専用カップを選ぶだけで良いわけです。

あとは3日以内に返却する必要があるのを面倒だと捉えるかどうかです。多少の面倒さがあっても、環境に良いと思えれば、お客はカップを借りて返却することで SDGs に貢献できます。

エンゲージメントの向上


専用カップの返却は別の見方もできます。

お店にカップを返すということは、スタバに来店することになります。返却だけでは終わらず、コーヒーなどをその場で買うはずです。

スタバからすれば返却期限の3日以内のリピート購入が期待できます。

カップ循環型サービスは、スタバとお客さんが協力をして紙コップゴミを出さない取り組みです。お客は 「スタバとの共同体験」 によってスタバへの愛着が深まります。

来店頻度と購入頻度を上げられるだけではなく、エンゲージメントの向上にもつながるのです。

カップ循環型サービスのマーケティング視点での本質は、「顧客参加型のエンゲージメント向上」 です。


学べること


では最後にスタバのカップ循環型サービスから、マーケティングに学べることを整理してみましょう。

一言で言えば、学びは 「お客さんやユーザーが参加し体験できる余白を設計しよう」 です。

参加できる余白とは、スタバの循環型サービスに当てはめると、スタバのサービス提供全体のプロセスにおいて、ゴミを出さないためにお客さんにやってもらうカップ返却のところです。

強制的にお客さんにやらせるのではなく、お客さん自らが選択してやってもらう設計がされています。つまりお客が参加できる余白を意図的につくっているわけです。

参加によってお客との共同体験が生まれます。その体験が楽しかったり有意義なものであるほど、良い記憶として残ります。こうした1つ1つの体験が積み重なることで、お客との絆が深まるのです。


まとめ


今回はスタバが始めたカップ循環型サービスを取り上げ、マーケティングに学べることを見てきました。

最後にまとめです。

スタバのカップ循環型サービスの狙い
  • SDGs への取り組み。再利用可能な専用カップにより紙コップゴミを減らす狙い
  • エンゲージメントの向上の狙いもある
  • 紙コップゴミを出さないためにスタバとお客さんが協力して取り組むことで、お客は 「スタバとの共同体験」 からスタバへの愛着が深まる

マーケティングに学べること
  • スタバの循環型サービスでは、スタバのサービス提供全体のプロセスにおいて、ゴミを出さないためにお客さんにカップ返却をやってもらっている
  • 参加によってお客との共同体験が生まれ、楽しかったり有意義であれば良い記憶が残り、お客とスタバの絆が深まる
  • お客さんやユーザーが参加・体験できる余白を設計しよう


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書いている人 (多田 翼)

Aqxis 代表 (会社 HP はこちら) 。Google でシニアマーケティングリサーチマネージャーを経て独立し現職。ベンチャーから一部上場企業の事業戦略やマーケティングのコンサルティングに従事。

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名古屋出身、学生時代は京都。気分転換は朝のランニング。